- 目的
- ルベツネ山北面直登沢遡行
- 日程
- 2012年08月12日(日) - 17日(金)
- 山域
- 中日高
今年もオヤブンを相棒に日高の沢に行く事になった。当初は一八三九峰とルベツネ山に行く予定だったが、雨にたたられてメインのルベツネ山だけとなってしまった。
行程
メンバー
装備
- EPI P+ シングル1本+ハンパ1本(ハンパ1本のみ使用)
- Finetrack ツエルト I
- エイリアン
- ラープ(不使用)
- ナッツ(不使用)
- ツインロープφ8mm30m2本
- 乾燥野菜
- V.O 500mm (小屋4泊もすると足りない)
- アプローチシューズ
参照
2012年08月12日(日)
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
15:10 | ベッピリガイ乗越車止め | 出発 | |
16:00 | 峠 | ||
16:15 | ペテガリ林道終点 | 靴換え | |
17:30 | ペテガリ山荘 | C1 |
オヤブンを千歳空港でピックアップして静内方面へ向かう。オヤブンがガスカートリッジは2本はあった方が良いというので、静内のホーマックで買い出しを行うが、 EPI のシングル缶が売り切れていたので、とりあえずあり合わせの1本とハンパの1本ですませる事にする。
隣のマックスバリュで明日の朝食とビールなどを買い出しし、すき家で腹ごしらえをしてから神威林道へ向かった。今日は神威山荘へ泊まる予定だったが、予定よりも早く到着したのでペテガリ山荘まで足をのばす事にした。
ベッピリガイ乗越へ向かう作業道終点にはたくさんの車が残置されていた。どこぞのガイドとおぼしきワゴン車もある。装備を広げて持っていくギアを厳選する。オヤブンが重たそうなエイリアンをたくさん持ってきており、必要ないのではないかと思ったが、昨年のカムエク沢でアンカーを取ったのはエイリアンだというので、持っていく事にした。これが実際に核心部で大活躍する事になる。
峠の沢はすっかり綺麗に踏み跡が出来上がっており、地形図を出す必要も全くなく峠へと導かれる。
峠を越えたベッピリガイ川沿いには道案内の看板がいくつも掛けられていた。2時間強でペテガリ山荘へ到着すると、ペテガリ山荘は予想以上の大混雑。仕方がないので階段横の倉庫に潜り込んだ。
2012年08月13日(月)
4時起床の予定だったが、小屋の中は3時からガチャガチャと騒がしくなってきたので、我々も早めに起床する。
今朝は気温が高い。今日は昼過ぎから雨が降る予報だが、とりあえず行けるところまで行きたい。まだ薄暗い中を出発。シビチャリ林道を歩くのは久しぶりだが、状態は以前とあまり変わっていない。明瞭な踏み跡は第一の函の手前の枝沢まで(地形図で「サッシビチャリ沢川」の「ビ」の付近)だが、今回は時間を短縮したいので枝沢を渡渉して先の踏み跡へ進む。
すぐに上の方へ向かう林道跡と、左の崖沿いの鹿道に分かれるが、林道跡の方が藪が濃いので鹿道沿いに進む。鹿道は所々崖のトラバースとなる。途中、進めない崖上(「サッシビチャリ沢川」の「サ」の上)に出るので、少し上へ藪を漕いで林道へ復帰。そこから一気に下って台地状から適当にしか道をつないで沢に降りた。
沢に降りるとすぐに第二の函。泳ぐ気はないので右岸から高巻く。この高巻きは少し下の窪地状からほとんどヤブ漕ぎ無しで簡単に高巻けるのだが、そんな事はすっかり忘れているので、岩稜に登ってしまい、ちょっと面倒くさかった。
高巻きを終えたところで休憩をしようとザックを置いたところ、予定より早く雨が強く降り出した。サッシビチャリ川は、途中に難しいゴルジュもないのでこの程度の雨であれば上流に行く事は困難ではないが、相棒のオヤブンはあまり乗り気ではないようだ。とりあえず、増水で閉じこめられる事は避けたいので函の下まで巻き戻り、雨の様子を見る事にする。
雨は時折強く降ったり、弱くなったりで、水量はわずかに増えている。暇つぶしに竿をたらすと、小物1匹と37cmのイワナが釣れてしまった。上流からの風が冷たく、気温も下がり気味な事もあり、今日のところはひとまず撤退する事とする。帰り道は林道跡を行こうとするが、道はほぼ完全に藪に覆われており、途中少し迷走してしまった。
ペテガリ山荘は雨の影響で停滞している人も多く、あまり人数は減っていない。とりあえず就寝スペースを確保して、昼間は外の東屋の下で過ごす。小屋の外に置かれていた古いストーブの残骸を利用して焚き火をし、その日でイワナを焼いたり刺身にして喰った。オヤブンはアニサキスをちょっとだけ心配していたが、釣ってからすぐに内蔵は除去したのでその心配はほとんど無い。と言うか、そもそも完全陸封されたイワナにはアニサキスは付かないらしい。
夕方小屋に戻ると、室内は少しひんやりしていたので、煮炊きに使う事も兼ねてストーブに火を入れようとしたら、ストーブの中はバカどもが放り投げていったゴミの残骸でいっぱい。本州から来たおじさん達が、自分たちもつけようとしたが、煙が出てダメだったと言っていたが、こんなにゴミばかりで、灰の掃除もせずに空気が取り込めないような状態では煙が出るのも当たり前だろう。燃えきらないゴミと灰を掻き出し、焚き火で出来た炭を投入して点火。雨は断続的に強く降り続いた。
2012年08月14日(火)
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
04:00 | 曇 | 起床 | |
05:30 | 出発 | ||
07:05 | 第二の函の下 | 入渓 | |
09:50 | 一八三九峰南面沢出合 | ||
10:10 | |||
10:30 | 魚止めの滝 | 釣り | |
12:05 | |||
13:00 | 晴 | ルベツネ山北面直登沢出合 | C3 |
雨はやんだ。増水の心配はあるが、とりあえず沢に行ってみなければ状態は分からない。林道のルートは昨日の往路と同じ。沢は案の定かなり増水している。かといって、濁流して手をつけられないような状態でもないので、先へ進む事にする。
とは言え、最初の渡渉から結構水圧は強い。先が思いやられる。第二の函を今回は正しく右岸の窪地から高巻く。上の滝が昨日とは違う姿となっていた。少し河原を進むとすぐに左岸への渡渉点となったが、2~3歩前へ進むと、水圧が強くて流される危険性を感じて引き返す。ここで渡渉するのは危険なので、仕方なくしばらく右岸をへつっていく事にした。
その後は水圧は強いものの、何とか渡渉を繰り返して割と順調に進む。所々大きな高巻きをさせられる心配もしていたが、幸いほぼ中を進む事ができた。とは言え、この日は早めに一八三九峰南面直登沢出合に到着すればそのまま一八三九峰へ登ってしまおうかと思っていたが、さすがにそれほどの時間の余裕はなくなり、水量も多くて苦労させられそうなので、残念ながら今回は一八三九峰はカットする事にした。これでまたオヤブンが一八三九峰に登る日は遠のいた。
と言うわけで、今日はのんびり日程となったのでとりあえずカワゲラを調達。4匹ほどゲット。ルベツネ山西面ルンゼを見て、魚止めの滝で食料の調達する。相変わらず入れ食いで、針をたらして数十秒で一尾目を上げる。釣り上げたイワナをさばいていたら、オヤブンが早々に竿を畳み始めた。なにやら流木に引っかかって仕掛けがこんがらがってしまったらしい。そう言えば去年も仕掛けを絡ませて悪戦苦闘していたような・・・。仕方がないので、私の仕掛けを一つ貸して続行。カワゲラが切れたので私は毛針で挑戦。アタリは来るが、やはり釣り上げるのは餌づりよりも難しい。なんだかんだで、2人で締めて8尾を確保して担いで上流へ向かった。
一つ目のゴルジュは魚止めの滝ごと右岸から高巻く。二つ目のゴルジュは右岸を微妙なへつりで突破する。ヤオロ出合を過ぎ、洗濯槽の滝を高巻いてルベツネ山北面直登沢出合となった。
洗濯槽の釜はいつも以上に白く泡立って渦巻いていた。足を滑らしたらひとたまりもなさそう。上の滑滝右岸の岩場から冷たい水がしみ出していたが、夜には水量が減っていた。
2012年08月15日(水)
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
04:00 | 起床 | ||
05:40 | 快晴 | 出発 | |
06:05 | F1 下 | ||
06:20 | 1ピッチ目 | ||
06:55 | 2ピッチ目 | ||
07:25 | 3ピッチ目 | ||
08:40 | 4ピッチ目 | ||
09:15 | 灌木帯 | ||
10:10 | F3 の上 | ||
11:25 | 四股 | ||
12:55 | ルベツネ山 | ||
13:35 | |||
16:20 | ペテガリ岳 | ||
21:10 | ペテガリ山荘 | C4 |
本日は晴天ナリ。さあ、いよいよルベツネ山北面直登沢を攀じる。出合からツルツルの滑滝で、この先何があるのか心高鳴る。
ルベツネ山北面直登沢
一つ目の滑滝は右岸を直登。それほど難しくない。岩盤状の谷を左に進み、小滝を二つ過ぎて右に曲がると長大な函地形であるが、中には大きなガレが転がるだけだった。先へ進むと、急傾斜のルンゼの中に嫌らしいスノーブリッジが懸かっているのが見えて、一瞬ドキッとするが、これは枝沢だった。
本流は左から滑滝となって合流してくる。右岸を適当に通過するといよいよすり鉢状のスラブ谷となって、垂直に落ちる 50m の F1 が目の前に迫ってくる。この辺りは大雪渓に埋められている予定だったが、幸か不幸か雪渓は手前の二股にわずかな残骸が残っているだけだった。
左岸は垂直の壁で、超えるラインは見えない。右岸はスラブ状岩壁で、その上部に庇状の岩がせり出して、洞穴状ルンゼとなっている。しばしすり鉢の底で周囲を見渡すが、滝の上部へと抜けるには件の洞穴状ルンゼを登るか、ずっと下から尾根筋岩壁を登攀していくしかないと思われる。とりあえず、北大の記録に習って洞穴ルンゼを登る事にした。
スラブ壁を慎重に攀じってルンゼの下へ向かう。振り返ると、 F1 の上部にはやはり難しそうな F2,F3 更にスラブ状の F4 が見えてくる。 F2 は何とか登れなくもなさそうだが、 F3 は長くて途中かぶり気味なので難しいだろう。出来ればあれの上に出たい。
チョックストンのつまったルンゼの下で、エイリアン一つでアンカーを取る。まだ動き始めたばかりで心の準備も出来ていないし、体もほぐれていないので、正直2人ともトップは行きたくないので、「どっちが行く?」なんて、それとなくトップを譲り合うが、案の定私が先に行く事になる。
ロープをつけて、チムニーを一つよじ登り、ピンが取れるところを探すが、ハーケンもチョックも利きそうにない。しばらくどうしようかと迷っていたら、オヤブンが「取れなくても行けるなら行っちゃえ」の一言で冷静になって、結局ノーピンで洞穴の下まで行ってしまった。ハーケンを一枚打ち込んでオヤブンを引き上げる。
2ピッチ目は洞穴から草付きスラブを進む。庇の上から水がしたたり落ちてくる。途中ハーケン2枚でランニングを取っていくと、軟鉄ハーケンが残置されていたので3本目を取る。少し右側にトラバースすると、小さなテラスがあり、それ以上行くと声も届かなくなりそうなのでハーケンを2本打ってピッチを切る。
3ピッチ目はオヤブンにチェンジするが、1つ目のランナーを取ってから先に進めなくなり、右往左往している。なかなか活路を見いだせないようなので、ランナーでロワーダウンしてトップをチェンジする。
下から見ている限りは、そんなに難しくなさそうに見えたが、取り付いてみると、確かに外傾ツルツルのスタンスにヌルヌルの藻が付着して、体重を乗せたくない。微妙なバランスながらベストのポケットから軍手を取り出し、磨いて藻を洗い落とす。
それでも少し嫌らしいが、慎重に体を上げると、左手上にガバホールドを発見。これ幸いとそれに全体重を掛けて上部の少し傾斜の緩いバンドまで上がる。
上がったは良いが、剥がれやすいスラブと草付きで、ピンを取るところがなかなか見つからない。何とか岩の割れ目にハーケンを一枚たたき込んだが、あまり利いている感じはしない。右にトラバースして庇の角を回り込むと、草付きのルンゼ状がずっと上まで延びている。
スラブに付いた草付きがいつ剥がれるか分からないような状態だが、ピンを取れるような場所はなく、そのまま10m以上ノーピンで駆け上がる。何とかハーケンを一つたたき込み、ふと上を見上げると、草付きルンゼはずっと上まで続いているが、上には抜けられそうにない。左を見ると、草付き帯に抜けられそうなバンドがある。
崩れるルンゼをまたぎ、バンドのテラスに上がる。しかし、壁はボロボロ、浮き石だらけでピンが決まらない。仕方なくエイリアン一本だけでアンカーを取ってオヤブンを引っ張り上げる。エイリアンを持ってきて本当に良かった。ちなみに、オヤブンが登っている時にスラブの途中の草付きが一枚剥がれたらしい。くわばらくわばら・・・。
最後の4ピッチ目はオヤブンに行かせる。ハングした岩の下を這い蹲って先に見える灌木に手を伸ばす。その間、足下の浮き石がガラガラと崩れていく。灌木帯はそれほど傾斜はきつくない。少し上の平らなところまで行って、ヤブ漕ぎに備えてギアを整理する。
標高は既に F3 の中腹ほどまで上がっている。登ってきたスラブ壁の上辺に沿って草付きをトラバースしていく。岩場を避けながら、明瞭なルンゼを一本横断する。 F2 の上部に出たところで、沢に降りられそうな岩場があるが、降りたところで先には登れそうにない F3 が待ちかまえているのでそのままトラバースを続行する。
すぐに2本目のルンゼに出る。下はかなりの傾斜の滝で、上は二股になっている。ここを過ぎると、 F3 の上部に降りられそうな灌木カンテが見えてくる。更に小さなルンゼを越えてこのカンテ沿いを降りて右岸岩壁を少しクライムダウンして F3 の上に出た。
少しクライムダウンして F3 から下をのぞき込む。ツルツルの岩壁がずっと下まで続いている。足を滑らしたら何処まで行くだろうか。正面には我々の登ってきたスラブ壁と洞穴ルンゼが見える。上から見るともの凄く悪そうに見える。
さあ、大スラブ帯の登攀だ。ちょうど太陽の光が正面から突き刺さりツルツルスラブの表面に反射してまぶしい。スラブ状の F4 を進むと、右岸岩壁からのルンゼがハングして落ち、右からスラブ状ルンゼが合流し左奥には次の滝が落ちてくる。
F5 は階段状で簡単そうに見えるが、逆層外傾スタンスで取り付きが微妙だ。左岸壁から取り付き、トラバースしながら落ち口に進む。落ち口は左岸の壁がややかぶり気味に迫っていて真っ直ぐ登れないので水流の中の小さなスタンスを使って右岸に渡って上へ抜けた。
二つほど緩い傾斜のスラブ滝を通過し、 Co1270 二股はスラブの円形劇場で、登るところを間違うと嵌りそうになる。ここから長いスラブが Co1360 四股の直下まで延々と続く。最後に少しかぶり気味の滝を慎重に越えると、4本のルンゼが集まる Co1360 となった。
要塞のような四股を右から2番目のルンゼへ進み、滝をひとつ越えると浅いルンゼ状の谷となって、最早難しい物は何も出てこない。
Co1490 二股を水量の多い右股へ進み、細かく分かれる沢筋を大きな方へ進んでいくが、割と早い段階でヤブの中に消えてしまった。少し左へトラバースすると再びヤブの回廊となって、ピークよりやや北側の稜線に出た。もしかしたら、 Co1440 で左岸から水量の少ない滝となって合流していた枝沢へ進んだ方がピークへは近いのかも知れない。少しハイマツを漕いでピークへ到着した。
もっと緊張を強いられる沢を想像していたが、思いのほかあっさり終了してしまった。確かに洞穴ルンゼの登攀は悪かったが、脆い岩質と、ヌルヌルの藻と、草付き、そして高度感に悩まされるだけで技術的・登攀力的にはさほど難しい物はなかった。いっそのこと F1 の上部で沢に戻ってしまった方が楽しめただろうか?そんなわけで、この日の核心はこの後に待っているのだった。
ルベツネ山~ペテガリ岳~ペテガリ山荘
今日の予定は、行けるところまで行ってCカールか西尾根南西コルかペテガリ沢B沢出合で泊まる予定だ。ラジオをつけると、明日の悪天を告げている。
ペテガリ岳まではさほど苦労せずに1時間半くらいで着くだろうと思っていたが、思っていたよりもずっと踏み跡は不明瞭で、ハイマツに苦しめられる。Cカールへの下降点から先はずいぶんと楽になったが、それでも結局ペテガリ岳まで3時間近くも懸かってしまった。
とりあえず最低コルまで下って大休止。私はもうへとへとで、出来れば泊まってしまいたかったが、オヤブンの方は雨の中下るのが嫌で、半ば強制的に小屋まで下ってしまうつもりだったらしい。
そんなこんなで、結局長い長い西尾根を下る事に。西尾根を下るたびに二度と下るまいと誓うのだが、またしても下る事になってしまった。ペテガリ山荘さえなければ、多少の悪天予報ではこんな尾根は下らないのだが、ペテガリ山荘の魔力の何と強い事か。
真っ暗闇のラテルネ行動でペテガリ山荘に到着したのは21時を過ぎていた。相変わらず小屋には多くの人が居た。1階は既に寝る場所がなかったので、2階に荷物を持っていったら階段横に寝ていたオッサンに舌打ちをされた。聞かなかった事にする。
2012年08月16日(木)
予報通りの雨。昨日の疲労で体を起こすのもつらいが、昨夜から何も食べていないのでとにかく腹が減ったのでお湯を沸かしてカップヌードルリフィルを掻き込む。強い雨の中ほとんどの人は神威林道へと帰っていたが、一つだけ荷物が残置されていた。どうやら、昨夜舌打ちをしてきたオッサンの物らしい。この土砂降りの中、一体どこまで行くというのだろう。
我々は雨の中帰る気力も必要性もないので、今日は1日小屋で停滞。例のオッサンはずぶ濡れになって戻ってきて、荷物を回収して雨の中神威林道へと向かった。内心いい気味だと思った。ちょうど20年前、台風情報で西尾根を下ってきて、翌日は土砂降りになる事が分かっていたので、夜遅くまで北大ワンゲルと酒を飲み交わしていたら、「俺は朝早くから登るんだ!」と文句を言ってきて、翌日雨の中1人で林道をとぼとぼ歩いていたおじさんの事を思いだした。(まあ、あの時は確かにこちらに非はあったのだけれど)
貸し切りとなって、暇をもてあましたので小屋中の床を拭き掃除をしてすごす。そうこうしていると、とてつもなくデカい荷物を背負った若者が神威林道方面からやってきた。話を聞くと、ペテガリ岳から下降尾根を下り、支六ノ沢を下って神威岳北東面直登沢を登るという。更に話を聞くと、日高もゴルジュも初体験だという。はっきり言って、単独であの場所へ行くにはあまりにも心許ない。下降尾根の悪さや、増水時の危険性などを説明していろいろ脅かす。
その彼は、本当は今日中にペテガリ山頂へ向かう予定だったようなのだが、我々の脅かしが利いたのか、この日はそのまま山荘に泊まった。
2012年08月17日(金)
今日はのんびり帰るだけ。例の学生は大きな荷物を背負って西尾根を登って行った。我々も荷物を片づけ、帰路に付く。途中の渡渉地点も峠の沢も明らかに増水している。例の学生が無事に行けるかどうかますます心配になってくる。もっと強めに止めておけば良かったかな。
最後のニシュオマナイ川を渡渉すると、老夫婦が減水待ちだという。しかし、どうやら渓流靴を持っていないらしい。渓流靴はあった方が良いですよ、と言っておいたが、多分そのまま決行したのだろうな。世の中勇気のある(無謀な?)人たちばかりだ。
いつものように三石温泉で汗を流し、帰宅。夜は済賀を呼びだして例によって近所の金剛園で打ち上げをする。
雑感
今回は天候に祟られ、結局ペテガリ山荘に4泊もしてしまった。身構えていた北面直登沢も思ったほど手応えが無く拍子抜けし、全体としてやや消化不良な1週間となった。ルベツネ山北面直登沢に関しては、「山谷」のグレードを!!!に下げても良いかなと思っている。ただし、核心部に関してはそれなりの経験が必要だ。クライマー集団なら、早めに沢に戻って F2 や F3 の登攀にチャレンジするのも面白いだろう。というか、それぐらいやらないと物足りなく感じると思われる。