- 目的
- キムクシュベツ川遡行
- 日程
- 2014年09月06日(土) - 09日(火)
- 山域
- 中日高
昨年の撤退劇から約一年。今年はこのキムクシュに照準を合わせてやって来たが、天候不順が続き、2週間も減水を待つこととなった。入渓してからも不安定な天気とやらにハラハラさせられたが、十分に減水を待ったおかげで私の泳力でも何とか全ての函を突破することが出来た。
行程
装備
- クリマプレン・パドリングロングスリーブ
- クリマプレン・パドリングタイツ
- フラッドラッシュ・アクティブスキン・パンツ/タイツ/シャツ
- ジオライン3Dサーマル・ロングスリーブジップシャツ
- パドルグローブ
2014年09月06日(土) 歴舟林道~出合
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
12:25 | 晴 | 林道崩壊地 | 出発 |
13:50 | 曇 | 橋脚跡 | 靴交換 |
15:10 | キムクシュベツ川出合 | C1 |
今日はキムクシュベツ川の出合までの予定。苫小牧を少しゆっくり目に出発し、大樹町のスーパーで弁当を買って少し早めの昼飯を取って林道へ向かう。
日方橋から眺める水量は明らかに去年よりも少ない。途中、すれ違った京都ナンバーのおじさんに「坂下仙境とは何処か」と聞かれる。そういえば何度もここに来てその看板を目にしていたが、歴舟川のこの界隈をそう呼んでいるのだろうとぐらいにしか思っておらず、特段気にしていなかった。「この辺りのことだと思うんですが、よく分かりません」と適当に受け流して別れた。ネットで調べても、具体的な位置などは示されていませんね。
林道は事前の偵察通り Co274 の標高点の少し先までは問題なく入れる。出来るだけ先まで車で行こうと、スコップで道のギャップを整えながら進むが、 Co324 標高点付近でどうにもならない雨裂が出てきた。諦めて車を乗り捨て、自転車に乗り換える。
30分ほど自転車を走らせ、道が藪で覆われ始めたので自転車も乗り捨てる。その先の林道跡は随所で崩壊し、荒廃の一途を辿っている。かなり鬱陶しい道のりだが、かといって水量の多い歴舟川を歩くのも骨が折れるだろう。
橋脚跡でさらに靴を渓流靴に履き替え、トレッキングブーツを残置して、右岸の踏み跡へと移る。 Co390 で本流に合流するルンゼから沢に降りる。水量は少ないが、水は若干黄色く濁っている。
予定通りキムクシュ川出合右岸にツエルトを張る。焚き火をつけ、景気づけにビールを1本開けてくつろいでいたら、雨粒がパラパラと落ちてきた。ラジオでは明日の午後から山沿いでは突然の大雨に注意して下さいなどと言っている。
2014年09月07日(日) 出合~三股
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
04:00 | 起床 | ||
05:10 | 快晴 | 出発 | |
09:00 | 晴 | Co545 | |
11:05 | 曇 | Co625 | カメラ不調 |
11:20 | |||
13:00 | 三股 | C2 |
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title="アクティブスキンロングスリーブ"
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朝はまずまずの天気。水量も昨日より減っている。夜明けとともに出発する。今回はアクティブスキンとクリマプレンの組み合わせに雨具を着込む。
しばらくは昨年のトレースとなる。昨年よりもずいぶんと河原が多いような気がする。
一ノ函~三ノ函
左岸にハングした岩がある淵(一ノ函か)は去年と同様ハング下をへつって通過する。
「日高山脈」によれば、一ノ函の屈曲部を過ぎてすぐに二ノ函と言うことになろう。少し広めの瀞となって、流木を渡ったり胸まで使ったりして適当に通過する。
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title="ライトネオプレンジップアップ"
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しばらくして F1 に到着。やはり水量は少ないようで、釜が小さい。それでもセオリー通り一瞬釜に飛び込んでから右岸に這い上がり、右岸バンドを直登する。去年は少しシャワーだったような気がするが、今回はほとんど水しぶきも無し。
続く三ノ函の廊下は確か、左岸巻きだよねと思いつつ一応突き当たりの小滝まで見に行く。
がんばれば右岸をへつれるかなと思ったが、荷物が重い。空身だったらなどと考えるが、ザック引き上げなどなんだの考えると巻いた方が早い。諦めて戻って左岸を攀じって高巻く。
四ノ函
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title="フラッドラッシュ"
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Co480 屈曲点付近から四ノ函が始まる。記録によると、ここはちょっとした泳ぎとへつりで通過できるらしいので、中を行こうかどうか迷うが、やっぱりこの暗い淵をひとりで泳ぐ勇気が出てこない。カナヅチのさがです、ごめんなさい、巻かせて下さい。と言うわけで左岸から高巻く。
筒穴の函~大釜の小滝
なんか、誰も居るわけないのに、岩の上に先行者の足跡みたいのが有るなあと思っていたら、クマさんだった。
Co520 の屈曲点の右岸には、山谷では四ノ函とされる筒穴が有るが、この辺りは特段泳ぐこともなく通過できる。
Co540 の広い釜を持った小滝は、去年は泳いで這い上がったが、今回は左岸をへつってそのままパワーで壁を攀じって越えた。
この筒穴の函や大釜の小滝は「日高山脈」では函としてカウントされていないのが、後の遡行者達の記録で「8つの函」の位置に混乱を招いている要因と思われる。あるいは「日高山脈」の元となった詳細な記録を読めば何か分かるかも知れないが、それは北大の古い部報にあるのだろうか。
五ノ函
ここから三段の滝までの間には天場となり得る河原が点在している。 Co545 二股は今年は少し流出していてあまり快適そうではなかったが、近くに幾つかの天場を見いだせる。
三段の滝は年によっては釜が埋まって通過できるらしいが、さすがにそれは無理で予定通り左岸から高巻く。
Co570 ポンヤオロマップ岳北西面直登沢出合が五ノ函という認識はだいたいの記録で共通しているようだ。ただ、「山谷」の言うほどには細くはなく、まっすぐだがむしろ幅広で水深は浅い。去年は少し泳いだようだが、今回は胸までは浸かるが泳ぐことなく通過する。
左に屈曲してからも去年は結構な水圧だったような気がするが、今年は砂利の廊下で足首程度の水量で通過する。
五ノ函を過ぎてしばらくは癒し系の滑床が続く。この辺りからカメラが結露して瀕死の状態になってきてしまった。やはり、新しいカメラが必要だったろうか。
六ノ函(核心部)
Co610 屈曲部の淵は左岸の岩場から越える。この辺りの岩場上にはテントが張れそうだが、それとて水が流れた跡があるので、安全とは言いがたい。おそらくこの辺りから六ノ函と言うことになるのだろう。
Co620 までは函状ながら川底はゴーロ状で、右岸には快適そうな河原と流木があるが、六ノ函の内部と言える場所なので、増水時にはどうなるか分からない。
川が左に曲がると、いよいよ去年撤退した六ノ函の核心部となる。胸まで水に浸かって中を行き、いよいよ細まった廊下となる。
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title="ラピッドラッシュパドルグローブ"
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出来るだけ川底に足を着けて進むが、いよいよ体が浮いて意を決して泳ぎ始める。一掻き、二掻き、三掻きと進むが、いよいよ水流が早くなって進まなくなったところで右岸に手を伸ばすと、ギリギリ指の引っかかるホールドをつかむ。
何とかしがみつき、ヤツメでがんばって足を伸ばすと、足先が川底に着いたので先の流木に飛びつく。
何とか核心を越えたが、やはり去年と同じ水量だったら難しかったろう。去年越えられなかった壁を振り返り、感無量である。いずれにしても、水量が多くて泳いで通過できない場合はかなり面倒な高巻きとなるだろう。
七ノ函~八ノ函
Co650 に良い天場がある。
Co670 二股の手前が七ノ函らしい。他の函と比べると少し印象が薄い。出口の函滝は右岸をへつって通過。
いわゆる八ノ函は Co680 付近から始まる。函というか、廊下というか、水路というか、噂通り細くて長い。というか、しつこい。最後の方はギリギリのブリッジで抜けたが、左岸の壁がヌルヌル滑って厳しい体制で無理矢理こえた。
ここから三股までの間には幾つか広い河原と流木のある快適そうな場所があるが、おそらく早い時期には雪渓で埋められているのだろう。
三股
三股は本当に見事な三股。ここほど見事な三股はそうは無いだろう。
天場は左股の少し上に小さな河原と流木がある。あまり快適とは言えないので、先ほどの広い河原まで戻ろうかと思ったが、ひとりなのでここに泊まることにした。だが、背後は崖で、逃げ場は全くない。
焚き火は快調に燃えるが、夕方から断続的に小雨が降り出し、気分が落ちる。ラジオでは盛んに不安定な天気だと言っている。
2014年09月08日(月) 三股~ペテガリ岳~五ノ函
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
04:00 | 曇 | 起床 | |
05:20 | 曇 | 出発 | |
06:15 | 直登沢大連瀑の上 | ||
07:15 | Co1220 三股 | 着替え | |
08:55 | 霧 | ペテガリ岳 | |
10:15 | 曇 | Bカール沢源頭 | |
11:40 | 三股 | 着替え | |
14:30 | Co550 | C3 |
雨はさほどは降らず、水量は少し減った。昨日の後半から調子は悪かったが、カメラがついに使い物にならなくなっていた。祈るように懐に入れて暖める。軽量化のため、シュラフやライフジャケットなど一部装備を残置する。
ペテガリAカール沢
今日は清く正しく直登沢からペテガリ岳を目指す。あまり記録を見ない左股へ進む。
すぐにゴルジュ状となって小滝が連続するが、特段難しくない。しばらくすると祈りが通じたのか、カメラが復活してきた。
Co760 で三面が壁に囲まれた函滝となる。冷たい風が吹き降りてきて、上部に雪渓があることを悟る。この滝は下部がつるつるしていて、普通ならとても登れそうにないが、かかっている流木を使って無理矢理攀じる。
小さなチョックストンの上には案の定崩れた雪渓が埋まっていた。ばらばらに崩れた雪塊が積み重なっていて、よじ登ろうとするとばらばらと崩れていやらしい。幸いダムには成っていなかったが、状態によっては鉄砲水が起きかねないので、昨夜の天場はかなりガクブル物だ。
続いて15mほどの滝が出てくる。左岸をさほど難しくなく直登していくが、例によって最後が良くない。微妙なバランスで水流をまたいで右岸に移り、やや左にトラバースして越えた。
更にハングした滝が続く。これは難しそうなので右岸のルンゼを詰め、リッジを乗っ越して高巻く。
高巻き中に直登沢の大連瀑が目に入ってくる。地形図を見て想像していたよりはずっと簡単そうで、ちょっと安心、ちょっとがっかりする。
ペテガリ岳北東面直登沢
Co810 二股を右の直登沢に入る。
直登沢は大連瀑となって一気に80mほど突き上げている。壮観だが、いずれも順層の上りやすい滝だ。
ちょっとしたゴルジュを通過すると、40~50mの長い滑滝が続く。
その後は滑滝群となって、ひたすら似たような滑滝が続き、デジャブのような錯覚を起こす。ぐんぐんと高度を上げて快適だが、さすがに食傷気味で飽き飽きしてくる。
直瀑を1つ左岸から直登すると、 Co1220 二股が見えてくる。もうたいしたシャワークライムもなさそうなので、上半身をクリマプレンからジオラインに着替える。
直登沢は左股で斜瀑となって合流してくる。これを上るとすぐに二股に分かれ、実質三股となっている。
左端の沢へ進み、ピークを目指す。
滝はぐんと小ぶりになって、周囲は開けてカールの雰囲気となってくる。
Co1390 の二股は左に、その先の Co1440 二股は右に入る。
小さなルンゼ状となるが、水流はしつこく続き、 Co1650 付近までちょろちょろと流れていた。
沢形はずっと続き、灌木のトンネルとなって10分ほど薄い灌木を漕ぐとピークの少し東側に出た。
ピーク写真を撮ろうとカメラを出すが、ふたたび死亡状態になってしまった。
ペテガリBカール沢下降
下りはBカールを経由する。北西のポコまでは東側に踏み跡が着いている。
カールへの下降は Co1647 コルまで下がってから始めるが、これは失敗だった。稜線直下は悪い崩壊地となっていて、沢筋に出るまでガラガラだった。おそらくポコ直下からすぐに谷筋に降りた方が良い。
カール底までは灌木に覆われた涸れ沢で、遡行時はかなり不快だろう。
せめてカールの写真ぐらいは撮りたかったなと思ってカメラを取り出すと、やはり思いが通じたのか復活していた。だが、カメラが稼働したのはこれが最後だった。
Bカールは先ほどの崩壊地の影響か、デブリが多くちょっと荒れ気味の雰囲気。
カールから流れ出す沢筋はなく、しばらくは藪の中を下る。足下から伏流水のポコポコという音が聞こえてくる。
5分ほど下って湧水の滝となった。写真を撮ろうとカメラを取り出したが、ふたたび死亡してしまった。
ここから三股まで、全く途切れることなく滝が続く。いずれも順層で快適に下れる。慣れた人なら小走りですいすい下れるだろう。
Co1000 から 960 付近まではゴルジュとなっているが、ここも問題ない。高巻いた滝は2つほど。ラッペルは一度もしなかった。
五ノ函まで下降
三股で装備を回収する。時間もそこそこなので、このまま泊まってしまうことも考えたが、行けるところまで下ることにする。
準備をしていると、にわか雨が降り出す。本降りになり出したら増水する前に出合まで下ってしまうことも考えて出発する。
キムクシュの下りは泳いでなんぼ、というところもあるだろうが体力温存のため、極力泳がないように進む。
それでも八ノ沢は一度飛び込むが、さほど流されることもなくすぐ足が着いてしまった。
七ノ函は泳ぐことなく通過。登りの半分のペースで快調に進む。これなら出合まで一気に下れるか、などと思ったが、さすがにだんだんペースが落ちてくる。
六ノ函は有無を言わさず泳ぐ。ふたたびこの函を突破する日はやってくるだろうか。
五ノ函を通過し、三段の滝はやはり左岸から高巻く。巻き終えたところで休憩し、更に下流を目指して歩き出したが、 Co550 に流木の多い河原があって気力を失って天張ることにした。
薪は豊富だが、雨のせいかどれも湿っており、しかも風がほとんど無いためか、本格的に火が付いたと思っても1~2時間で鎮火してしまい苦労することとなった。薪を切りそろえて並べるなどすれば長続きするんだろうが、そんな気力は無い。
2014年09月09日(火) 五ノ函~下山
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
05:00 | にわか雨 | 起床 | |
06:50 | 曇 | 出発 | |
09:40 | キムクシュベツ川出合 | ||
10:00 | |||
11:00 | 橋脚跡 | 靴交換・着替え | |
12:50 | 林道崩壊地 | 下山 |
やはり時々にわか雨に降られたが、増水するほどではなく、昨日より更に水量は減った。
今日は下るだけだが、正直言って昨日の段階で燃え尽きてしまったので気が重い。5時に起きてのんびり準備をしていると、また小雨が降ってきて余計気が滅入る。そして、ハーネスにぶら下げていたはずの、ラープ2枚とナッツ1個とクリフハンガーがナス環ごと無くなっていることに気づく。そういえばずいぶん前から無かったような気がする。どこかに置き忘れたのか、落っことしたのか、見当が付かない。余計に気が落ち込む。
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title="アクアファン"
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淡々と沢を下る。四ノ函はやはり飛び込むかどうか悩むが、結局高巻いた。三ノ函は思い切って飛び込んで泳ぐ。もっと流されるかと思ったが、水量が少ないので意外とすぐに足が着いた。F1 は左岸から滑って釜に飛び込む。
出合で水量を確認すると、やはり入渓時よりもずいぶんと減っていた。
踏み跡はかったるいので、沢を行こうかちょっと迷うが、やっぱり踏み跡に上がる。しかしやっぱりかったるい。
左岸に渡って靴を回収、履き替えて衣類も沢仕様から林道仕様に替える。ここから先が更に長くかったるい。やっとの思いで自転車を回収し、車にたどり着いた。
着替えて車を走らせると小雨が降り出し、大樹の町中に近づくとものすごい豪雨となっていた。この日は山中よりも、海岸沿いから町中が雨の中心だったようだが、それでもこの日の夜にはかなり増水したようなので、一日繰り上げて下山できて良かった。
雑感
学生時代からたびたび、ペテガリ西沢からの継続下降などで計画されたキムクシュベツ川。結局、天候や日程の都合でなかなか実現しなかった。あれから二十有余年、あらゆる日高の沢を遡行してきたが、まさかこんな歳になるまで遡行できないとは思わなかった。学生の頃にみんなでやれば楽しかったであろう、キムクシュの泳ぎも、こんな歳で1人でやっては辛いだけ。今後は林道アプローチがますますかったるくなって、その辛さは増すばかりとなるだろう。若き沢ヤ達に言いたい。キムクシュへは、多少の無理をしても若い頃に行っておけと。