日高随一の滝沢へ

ふ~ちゃん
目的
一八二三峰南面直登沢遡行
日程
1994年08月22日(月) - 25日(木)
山域
中日高

当時、この山行を計画したのは6月頃であったと記憶している。当初は、昨年一緒に行けなかったおやぶんをサッシビリチャリ川 一八三九峰南面直登沢へ連れてってやろうかな、ぐらいに考えていた。しかし、頻繁に義経岩へ行くようになり、オレンジ(5.11b)などに登れるようになってから、!!!*グレードでも登れるのでないかと考えるようになった。中ノ岳ノ沢の泳ぎの連続や、ソエマツ沢高巻きの嵐などは自信がないが、には少々自信があった-と言うか、当時はオレに登れないはないぐらいに思っていた-ので、全て直登可能と言われるこの沢ならば、行けるであろうと考えた。

当時、部内では相当な反対や不安の声があがったが、半ば強引にL会を通過させたのである。

行程

1994-08-22
部室~無名沢林道~無名沢 C0
1994-08-23
C0~無名沢一八二三峰南面直登沢出合 C1
1994-08-24
C1~一八二三峰南面直登沢一八二三峰 C2
1994-08-25
C2~コイカクシュサツナイ岳夏尾根~コイカクシュサツナイ川

メンバー

C.L
ふ~ちゃん
S.L
おやぶん

装備

地形

1994年08月22日(月) 室蘭~無名沢

タイムレコード
時刻場所行動
09:00部室出発
15:35無名沢林道到着
18:00Co460C0

今回は、明徳寮のおやぶんと同ブロックの人に頼み、無名沢林道まで送ってもらう。ワンゲルの人ではないので、非常に気が引ける。無名沢林道は酷い荒れようで、とても車で入れるような状態ではない。底を擦らない程度のところまで送ってもらい、礼を言い見送る。この、日高でも屈指の悪路を1人で帰らしたのは大変申し訳なかった。

林道終点まで歩くと、先の方でガサゴソという、獣が動いたような音がしてビビる。-おそらく鹿ではあろうが-ちょっとだけ恐くなったので、終点で幕営予定であったが、に降りて幕営することにする。この時、少し左によって降りなくてはならないのだけれど、終点からまっすぐに斜面を降りていってしまい、ハマる。アプザイレンをしようと、ザイルを出したときに、なんと、ポリタンが転がり落ちていく。ガーン( ̄□ ̄"")。ずるずるの斜面を降りていくと、斜面に引っかかっていたポリタンを回収する。沢まで落ちて、流されてなくて良かった・・・。

降りきったところは、ちょうど小さなになっていて、中には大きな魚が一匹だけ泳いでいた。その函のすぐ上流の河原天張る。左岸からは枝沢が一本のになって落ちてきている。

1994年08月23日(火) 無名沢下流域遡行

タイムレコード
時刻天候場所行動
05:00起床
06:00出発
07:00Co540
08:10Co592
09:20一八二三峰南面直登沢 出合C1

今日は出合までのアプローチのみである。Co530三股までは単調な河原が続く。三股はになっており、中股がとなって函の中に直接落ちている。Co545の大きな函は、右岸を巻くことも可能だが、中をへつって行く。Co590の函に函滝が3つ架かっており、二段目から右岸を巻く。

三ノ出合を過ぎたあとも、状の地形が続く。Co610の函滝で泳いで取り付く。それ以外は特に問題ない。予想ではもっと時間がかかると踏んでいたのだが、今年の渇水のせいもあるのか、あっという間に予定天場についてしまう。この日は時間が余ったうえに、ものすごい暑さで、どうしてビールを持ってこなかったんだろうと後悔する。

1994年08月24日(水) 一八二三峰南面直登沢遡行

タイムレコード
時刻天候場所行動
04:00起床
05:00出発
05:55Co822
07:20Co920二股
08:15Co1040
09:30Co1250
11:20Co1400
12:40Co1640
13:45一八二三峰C2

出合から核心へ

Co670 函滝[image/jpeg:98kB]
Co670 函滝
Co760 樋滝[image/jpeg:107kB]
Co760 樋滝

さあ、いよいよ、待ちに待った日がやってきた。胸が高鳴る。気を引き締めて出発だ。出合は小さな。Co670の右岸へつる。その後はしばらく河原を歩く。 Co750 右曲点で2段の小さな滑滝と Co760 滑を過ぎて、またしばらく河原となる。 Co822 で、核心を前にしての休憩をとる。このあたりは幕営可能だ。


Co850 函滝[image/jpeg:189kB]
Co850 函滝
Co875 樋滝[image/jpeg:98kB]
Co875 樋滝

そこからを直角に右に曲がると、狭いの中に垂直のが2つ、目の前に現われて足を止める。一瞬ためらったが、よく見れば直登出来そうだ。1段目は右岸を直登。2段目はもろに水をかぶって左岸よりをシャワークライム。びしょ濡れになるが、じつに登りごたえのある楽しいだ(Co850-860/2段直瀑)。すぐに、函の中に岩のつまった滝が続く。右岸を1段登り、水流の中のチョックストンに抱きつきながら登る。これまたびしょ濡れになる(Co865-870挟岩)。次の滝は右岸のテラスから巻く(Co875-879樋滝)。すると、目の前にいかにも困難そうなジャンボな滝が現われる。

ちょっと気後れするが、直登にトライする。ザイルを出して、まずは右岸テラスに支点を取り、トラバースして、水流のすぐ右岸側のクラックにナッツで1つ目。水流からものすごい水圧を受け、吹き飛ばされそうになりながらを横切り、左岸に移る。リスハーケンで2つ目。そこから直上する。なまら登りごたえあり(Co880-895直瀑)。小滝を2つ越え休む。大滝から高巻くなら、この先のルンゼで降りられるだろう。

バリエーション豊かなの連続

Co940 屈曲点[image/jpeg:109kB]
Co940 屈曲点
Co990[image/jpeg:96kB]
Co990
Co1010 樋滝[image/jpeg:94kB]
Co1010 樋滝

を右に曲がり、支流を見て左に曲がると、正面の枝沢が長いとなって落ちてきて、沢は更に右に曲がり大きなになっている。右岸直登して落ち口に付くと、直接廊下地形が続いていて、増水時は恐そうである(Co940-950直瀑~廊下)。その後、小滝3つ、斜瀑(Co990-1000)、滑滝3~4m3つほど出てくる。規模は小さいが、微妙な物もある。高巻きたくなる物もあるが、巻けばおそらくしばらくは沢に戻れないだろう。全て直登しよう。


Co1035 右曲点[image/jpeg:123kB]
Co1035 右曲点
Co1050 ビンの底[image/jpeg:143kB]
Co1050 ビンの底

ここを過ぎると、ようやく太陽の日があたり、は小さく右に曲がる(Co1040)。少し行くと、スノーブリッヂがあり、その奥に「ビンの底」がある。意外と傾斜は緩く、予想ほど強烈ではなかった。正面と右手が岩壁、水流は左へくるりと曲がり、左手から流れてくる。水流右岸カンテを直上する。傾斜は緩いが、落ち口でスタンスがなく、一瞬戸惑う。気合いでわたしが登り切り、おやぶんを引っ張り上げる。下から見たらしょぼそうだったので、なめてかかったらそれなりに難しかった。ザイルを出した方がいいだろう。っていうか、ここまで1度しかザイルを出していないなんて、今考えたら無謀というか、アホというか、でも実際、まるで落ちる気がしなかったんだよねぇ(Co1050-1080瓶底)。


Co1100[image/jpeg:123kB]
Co1100
Co1160 滑滝[image/jpeg:142kB]
Co1160 滑滝

可愛い小滝滑滝をいくつか過ぎると今度は広いジャンボな滑が現われた。この1823峰コイカク間の稜線上からも眺めることが出来る。上部がツルツルの滑になっていて、スリップしたら相当痛い目に遭うだろう(Co1160-1190滑滝~滑)。

最後の核心からピークへ

Co1350[image/jpeg:225kB]
Co1350

この先はV字状の-と言うよりも溝-となり、中にはチョックストンが3~4個架かっているが、適当に越えていく(Co1200-1310函滝)。Co1310二股で、は右に曲がり、更に狭くなる。すでに核心は終わっていると思いこんでいた我々は何の気なしに進んでいく。しかし、真の核心部はこの先に待ちかまえているのだった。小滝を2つ登ったあと、チムニー状のが現われた。傾斜はそうきつくなく、直登可能そうに見えた。わたしはザックを背負ったままクラックに手足をつっこみ登り始めた。途中までは、ホールドスタンス共に豊富で快調に登っていった。しかし、半分ほど登ったところで、正面からの水しぶきがきつく、クラックの中のホールド・スタンスも見つからず、あたりが見渡せなくなり、行き詰まってしまった。仕方なく、ハーケンが残置してあった右岸ガレのつまったルンゼに移るが、安心出来るホールドがなく、ザックも重たくなって体が上がらない。仕方なく、一度ザックを落として、ザイルをおやぶんに投げてもらい、ビレイをとって登る。しかし、空身でも結構きつかった。やっとの思いで登り切りザック(むちゃくちゃ重かった)とおやぶんを引っ張り上げる(Co1350-1357溝状・チョック)。


Co1360 大滝[image/jpeg:154kB]
Co1360 大滝
Co1500 三股[image/jpeg:138kB]
Co1500 三股

を左に曲がると、巨大なが続いていた(Co1360-1410滑滝)。ここを過ぎると、沢は明るく開けてくる。Co1480三股は、ツルツルしたが本流となっている(Co1480-1490滑滝)。その上のCo1530二股は両股が滝となっているが、左岸から枝沢のように落ちてくる水量の少ない右股の方を選ぶ。小滝群を越えてヤブを10分ほど漕ぐと、国境稜線(Co1800)に出た。

その夜はものすごい充実感でいっぱいだった。月明かりで日高の山脈が浮かび上がり、風は冷たく、山はもう秋の気配だった。

1994年08月25日(木) コイカクシュサツナイ川下降

タイムレコード
時刻天候場所行動
03:30雲海起床
05:00出発
07:45コイカクシュサツナイ岳夏尾根頂
09:55コイカクシュサツナイ川上二股
12:20札内ヒュッテ下山

朝、起きると素晴らしい雲海。気持ちが良すぎて帰りたくないという思いを振り切り出発する。踏み跡は意外とはっきりしていて快調に進む。P1643まではまるで登山道のようだ。そこから先は多少悪くなるが、一八三九峰へのヤブに比べれば楽な方だ。コイカクの急騰では、2人とも前日の疲れが癒えていないせいか、バテバテになる。コイカクの肩から、夏尾根頂までのヤブが意外と濃かった。コイカクのピークには疲れて行く気がしなかったので、夏尾根頂で写真を撮って下山開始する。夏尾根は相変わらず急で、膝が笑いまくりになる。もう、やってられんわ。と、思っているうちになんとかに着く。そこでわらじをつけたのは良いが、今年はかなりの部分で伏流していて、ほとんど渇いた石の上を歩いていく。ぱっと周りを見回しても、水流が見あたらない。

途中、右岸巻きので、間違えて左岸を巻いてしまい、一度戻ったりしてぐったりである。堰堤の連続しているところは一滴の水も流れていなかった。やっとの思いで林道に上がり、さあ、これから林道歩きだと思っていたら、札内ヒュッテのところで、工事の車をヒッチ出来、なんと、帯広まで送ってくれた。おかげで、ぱんちょうで豚丼の特を喰って、帯広湯に入ったあと、その日の内に室蘭まで帰り着くことが出来た。

それにして、大学4年目にして初めて喰った豚丼の旨かったこと・・・

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