- 目的
- 札内川十一ノ沢・ナメワッカ岳北東面直登沢・シュンベツ川本流遡行
- 日程
- 2004年09月02日(木) - 04日(土)
- 山域
- 中日高
行程
2004年09月02日(木) 札内川下流域遡行
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
05:30 | 苫小牧 | 出発 | |
09:30 | 雨 | 札内ヒュッテ | 天気待ち |
10:05 | 曇り | ゲート | 出発 |
11:30 | 札内川七ノ沢出合 | 靴替え | |
12:30 | Co660 | ||
13:30 | Co760 | ||
14:35 | Co890 | ||
15:20 | Co960 | C1 |
札内林道
天馬街道まわりで札内ヒュッテを目指す。大樹町から中札内に入ってからなにやら雨模様である。今日は晴れる予報なのだが、大気の状態は不安定なようだ。札内ヒュッテに到着しても雨はやまず、しばし天気待ちをする。20分もすると小降りになったので 1.2km 先のゲートの駐車場へ移動して出発の準備をする。
ゲートから約1時間半の林道歩きとなる。林道歩きがあることは分かっていたので、自転車を持ってくるべきだったが、そんなことはすっかり忘れていた。それにしても、この林道は冬期の雪の影響で危険箇所が多くて通行止めにしてあるそうだが、他の通行可能な日高の林道に比べたらよっぽどきれいだ。確かに奥の方で2ヶ所ほど崩壊していたが、こんなに手前から通行止めにする必要があるのだろうか。日高横断道に反対している登山者への嫌がらせのような気がしてならない。そんなことはないのだろうけど。
札内川
七ノ沢出合で靴を替えて入渓する。今年おろしたばかりのフェルト靴が酷使したために既にペラペラになってしまったが、モンベルクラブに行ったところ、サイズがなくて新品を買えなかったため、今回はペラペラのままで少々心許ない。沢は先日の台風の影響で増水気味だ。バイパスを利用して距離を稼ぐ。しかし、クマノ沢での疲労がとれていないのか、足の裏が異常に痛い。このまま予定通りに行けるか少々不安が残る。
八ノ沢の手前でおじさんを一人追い越す。八ノ沢出合は相変わらず荒れている。それにしても、ここの天場はだんだん内側に移動しているような木がするが、気のせいだろうか。八ノ沢から先はバイパスがなくなるので、徐々に歩きにくくなる。記念別沢出合を過ぎて、九ノ沢手前で丸太橋を渡る。水流は白く沸き立っており、この丸太橋がなければどこを渡って良いか分からない。
十一ノ沢出合天場
徐々に沢は小さくなって十ノ沢出合に到着する。天場を探すが、周辺はブッシュが覆って適地が見つからない。平らなところはあるが、水道だったりして天張る気になれない。天場を探してもう少し上がっていくと、十一ノ沢出合との中間右岸に広めの砂場がある。増水時には安心できないが、快適そうなのでここに天張ることにする。
流木が豊富なので大きな焚き火にし、釣りを始める。すぐ上にオショロコマが群れている瀞ある。いつものようにヤゴを捕って垂らすと数秒でかかる。サイズは小さく、 15cm を切る程度だ。ヤゴがなかなか見つからないので、適当に小さな甲虫をつけてみると、ヤゴに比べて多少食いつきは悪いが、これでもかかる。本当にオショロコマってヤツは何でも食う。針を垂らせばいくらでもつれるが、4匹で止めておく。
2004年09月03日(金) 札内川~ポンベツ沢~シュンベツ川
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
04:15 | 起床 | ||
05:55 | 快晴 | 出発 | |
06:55 | 札内川十一ノ沢 Co1360 | ||
08:05 | Co1700 | 靴替え | |
08:35 | 札内分岐 | ||
08:50 | ポンベツ沢札内分岐西面直登沢 Co1700 | 靴替え | |
10:00 | 曇り | Co1100 | |
11:10 | Co856 | ||
12:00 | ナメワッカ岳北東面直登沢 Co1120 | ||
13:00 | 雨 | ナメワッカカール | 靴替え |
14:25 | 曇り | ナメワッカ岳 | |
15:15 | シュンベツ川ナメワッカ岳南面直登沢 Co1400 | 靴替え | |
16:20 | Co1000 | ||
17:00 | シュンベツ川本流 Co820 | C2 |
札内川十一ノ沢
![Co1070-1080滑滝 Co1070-1080滑滝[image/jpeg:119kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174568.jpg)
快晴の中、ゴーロの本流を進むと、明るく開けた十一ノ沢が合流する。しばらくガレの多い開けた渓相を進むと、右岸から地滑り沢が合流し、滑が出てくる。正面に見える滑滝を直登する(Co1070-1080滑滝)。次の赤い滝は左岸の側壁をトラバースして落ち口へぬける(Co1100-1110)。三段の滝も直登し(Co1120-1140)、左に曲がると開けたガレだまりとなる。
![Co1200 連瀑 Co1200 連瀑[image/jpeg:151kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0139920394.jpg)
![Co1370 二股 Co1370 二股[image/jpeg:176kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174569.jpg)
滝はこの程度かなと思っていると、右に曲がったところで、大きな滑滝が出てきて、連瀑帯となる。快適な滝が途切れることなく続き、 Co1370 二股の滝まで一気に直登する(Co1200-1370八段+小滝群)。 Co1370 二股は両股が滝になっており、本流の滝は下部がやや被っている。左股の滝の右岸を直登し、トラバースして本流の滝の中間に移る。滝の上は岩盤状の狭い沢となって滑と小滝が連続する。
![Co1550-1570溝状 Co1550-1570溝状[image/jpeg:145kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174570.jpg)
小滝群を過ぎると、四角い溝状の滝が出てきて直登を試みるが、中に入ってからホールドが見あたらず、諦めて左岸のテラスを小さく巻く(Co1550-1570溝状)。続く滝を登っていると、右岸にハーケンとシュリンゲがあった(Co1580-1600溝状)。これを越えて二股を左に入るとやがて水は涸れ、広い急斜面のお花畑となる。
札内分岐
靴を替え、沢形に沿った藪に突入すると突然、右腕にチクリと激痛が走る。何事かと思って見てみると、右腕に丸くて黒い虫が止まっている。マルハナバチだ。マルハナバチは針は持っていても、まず刺すことはないと思っていたので、目を疑ったが、この高所でこの愛らしい姿の虫はマルハナバチの仲間に他ならない。
あいにくクスリを持っていなかったので、どうしようかと迷ったが、スズメバチとかではないし、刺されたところが腫れてくるような気配もないので、そのまま山行を継続する。しかし、思えばこれはここで引き返せと言う山の神様からの警告だったのかもしれない。
正面はピークに突き上げているが、急斜面で疲れそうなので左にトラバースして主稜線に出て踏み跡をたどり、札内分岐へ至る。天気はよいが、風が強く寒いので休憩はせずに早々に下山を開始する。
札内分岐西面直登沢~ポンベツ沢本流
![Co1230スラブ Co1230スラブ[image/jpeg:182kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174571.jpg)
浅い花畑を下り、ハイマツをやや漕ぐと、周囲が木に覆われたツルツルスラブの岩盤に出る。枝をつかんで降りて、そこからは滑の連続となる。 Co1480 二股の滝までひたすら滑の連続。 Co1430 で左岸に滑滝の支流を合わせてさらに滑の連続となり、 Co1290 屈曲点の大滝まで続く。屈曲する函状の岩盤を進み、 Co1230 のスラブ状の大きな滝を降りると、滑の中にガレが多くなってくる。出合付近は流木が堆積している。
当然の事ながら、南西面直登沢の雪渓は綺麗さっぱり無くなっている。 Co950 の函までゴーロを下降。この函を過ぎるとナメワッカ岳北東面直登沢出合まで滑が連続してくる。前回来たときよりもすっきりしている印象だ。水量のせいもあるかもしれないが、台風で多少ゴーロが流されたのだろうか。
ナメワッカ岳北東面直登沢
![Co890 Co890[image/jpeg:177kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174573.jpg)
![Co930 Co930[image/jpeg:162kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174574.jpg)
本来はここらで1泊の予定であったが、うまくいけば明日の早い時間に下山したい事情があったので、そのままナメワッカ岳北東面直登沢に突入する。直登沢は蒼いガレで埋められている。よくある赤茶けたガレとは違い、あまり汚く感じないが、所詮ガレはガレだ。直線的な渓相の中で、左に曲がる毎に滝を快適に直登していく。 Co950 から大きな函のデブリ溜まりの地形となって、突き当たりの右岸から大きな滝が落ちてくる。
![Co1020-1050側壁型 Co1020-1050側壁型[image/jpeg:179kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174575.jpg)
![Co1050 大滝 Co1050 大滝[image/jpeg:156kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0139923162.jpg)
大きな滝だが、それほどの迫力は感じない。右岸壁に取り付き、直登していく。順層の素直なホールドで、それほど困難ではない(Co1020-1050側壁型)。登り切ると、さらに大きな滝が続いている。この大滝は中間で二段になっていて、ルートをうまく選べば直登できそうだ。下段は右岸を登り、中間テラスをトラバースして2段目からは左岸を行けば簡単そうだ。右岸に取り付き、中間まで行きトラバースしようとするが、水流がもろに頭の上に落ちてきて躊躇する。正面の壁を眺めると、何となく直登できそうな気がしてきてしまう。そのまま垂直な壁に取り付くと、はじめは順層のホールドだが、徐々にホールド間の距離が開き、微妙になってくる。やがてつかめるホールが無くなり、行き詰まる。微妙なムーブで一端左にトラバースし、一段上がり、更に微妙なムーブで右に戻る。ここからは階段状となる(Co1050-1080)。
![Co1150二股 Co1150二股[image/jpeg:176kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174576.jpg)
![Co1240 Co1240[image/jpeg:123kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174577.jpg)
その後もいくつかの滝が出てくるが、沢は全体にガレの多い函状地形となり、美しくも面白くもなくこれといった見所がない。狭い函状の地形を経由して突然開けたカールへと至る。
ナメワッカカール~ナメワッカ岳
カールに到着すると同時に雨がポツリポツリと降り始める。仕方なくポールを探して幕営の準備をするが、本降りにはならず、すぐにやみそうだったので迷ったあげくやっぱり行くことにする。
最高点に至る直登沢を登る予定だったが、どうやら途中の左岸から入る滝のいずれかがそれだったようだ。ガレの埋める涸れ沢を詰めて、そのうち崩壊地となってお花畑になる。お花畑の薄い藪を漕いでいくと、ジグに切られた踏み跡が出て来たのでそれを利用して主稜にでてピークへと至る。最高点へも踏み跡は続いているようだが、時間も遅いし、天気も優れず面倒くさいのでアタックはしない。
ナメワッカ岳南面直登沢
ピークから稜線の踏み跡を少し西に移動し、急傾斜の草付きを下り沢に出るとガレが埋めており、延々と続く。 Co1400 二股でようやく滝らしい滝が出てきたので靴を替えるが、その滝の下もまたガレ相となる。 Co1250 あたりから岩盤状となって、慎重にクライムダウンを繰り返し、 Co1100 三股までつづくが、そこからまたガレ沢となってしまう。下部で徐々に岩盤となって滑が断続してくるが、やはりガレが多くて美しくない。だんだんうんざりしてくる。出合間近でで滑の連瀑となるが、もう今さらという感じである。
出合は函状で険悪な雰囲気。本流に進み、淵をひとつ過ぎると、右岸から滝が落ちてくる。側壁を登ると、広いテラス状で、どうやらここが既定の天場のようだ。しばらく利用された様子はなく、ブッシュに覆われている。苅り分けるのが面倒なので、滝の上のすぐ脇の小さな浜に張る。魚はいない。薪も少なく、あまり快適な天場ではない。これならばナメワッカ直登沢の適当なところで天張った方が快適だったかもしれない。
2004年09月04日(土) シュンベツ川本流~札内川十ノ沢
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
04:30 | 起床 | ||
05:50 | 晴れ | 出発 | |
06:50 | Co980 | ||
07:55 | Co1250 | ||
09:00 | Co1600 | ||
10:00 | ナメワッカ分岐 | ||
11:00 | 快晴 | 十ノ沢カール | 昼寝 |
12:00 | |||
18:40 | ゲート | 下山 |
シュンベツ川本流
![天場のすぐ上 天場のすぐ上[image/jpeg:126kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174579.jpg)
![Co820 屈曲点 Co820 屈曲点[image/jpeg:133kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174580.jpg)
ナメワッカ岳南面直登沢と同様、出合からしばらくは小滝滑滝が連続するが、問題になる物は何もない。 Co820 屈曲点の滝は堰壁をトラバースして落ち口に出る。滝は暗い函となっているシュンベツ岳西面直登沢出合まで続く。その後は河原状になってガレや流木が多くなり、時々滝も現れるが、まるで面白味がない。
今朝はよく晴れているが、日高山脈の主稜が太陽をさえぎり、沢床には全く日があたらず晴天による放射冷却も重なって猛烈に寒い。沢は全体にぬめりが多く非常に歩きにくい。そのうえ、この辺は雪崩によるデブリ帯なのだろうか、沢床には累々と倒木が積み重なっている。ため息が出るような渓相を歩き続け、Co980ナメワッカ分岐直登沢出合へと至る。
ナメワッカ分岐南西面直登沢
直登沢は函状になって滝も出てきてようやくそれらしい雰囲気となるが、ガレが多く相変わらず面白味がない。はじめのゴルジュを抜けると、両岸が高い壁に囲われ、沢床には流木やらガレの溜まったデブリ地帯となっている。この突き当たりからようやくすっきりした滝が現れはじめる。
![Co1060-1080滑滝 Co1060-1080滑滝[image/jpeg:183kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174581.jpg)
![Co1090-1110二段 Co1090-1110二段[image/jpeg:118kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174583.jpg)
![Co1120-1150 Co1120-1150[image/jpeg:137kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174584.jpg)
![Co1150-1170滑滝 Co1150-1170滑滝[image/jpeg:165kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174585.jpg)
はじめの滝を快適に直登(Co1060-1080滑滝)。次の二段の滝は頭から水を被って豪快にシャワークライムする(Co1090-1110二段)。左岸がスラブ状岩壁で、中央の下部がかぶり気味の滝は右岸を直登する(Co1120-1150)。次の斜瀑は簡単そうにみえ、中央を直登するが、上部がツルツルのスラブでちょっとだけ微妙だ(Co1150-1170滑滝)。
![Co1250 Co1250[image/jpeg:172kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0139920957.jpg)
![Co1280-1290 Co1280-1290[image/jpeg:156kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174586.jpg)
樋状の滝をひとつ越えると、両方が滝になった函状の二股になる。左に行くとガレた河原の二股になって右に入るとすぐに開けた崩壊地に突きあたる。左岸から岩塊が突き出て、その左右に滝が刻まれている。右側の水流を直登しようとしたが、案外ホールドが貧相で中央の岩壁へと逃げる(Co1250-1270側壁型)。滝の上の正面は更に絶壁の滝となって支流が注ぎ、本流は岩塊に刻まれたルンゼとなって直角に曲がり、暗い函の中に向かっている。チョックストンを越えて、函の突き当たりで右から水しぶきが激しく飛ぶ滝が出てくる(Co1280-1290)。
滑落
![Co1300 滑落した滝 Co1300 滑落した滝[image/jpeg:129kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0139921029.jpg)
滝は三方が壁に囲まれ、全く日があたらず、滝のしぶきが激しく舞い上がり全体に漂い猛烈に寒い。流心より左岸に取り付くがかなりの水が降り注いでくる。急いで駆け上がるが、上に行くほど傾斜がきつくなり、ホールドが少なくなってくる。その上ぬめりがかなり多くイヤらしい。そして、右足を上げて少し微妙なムーブで体を引き上げようとした次の瞬間、滝を滑り落ちていた。頭部にガンガンガンと何度も強い衝撃を受けながら約10mの距離を頭を下にした滑っていった。
足が滑ったのか、ホールドが抜けたのか、単純にバランスを崩したのかよく分からない。とにかく、呆然としつつも立ち上がるが、ひとまず骨などには異常は感じられない。寒いので直登はあきらめて巻いてしまおうと、右岸のルンゼに向かおうとすると、ぽたりと血の滴がこぼれる。口を触ってみると、両唇がぱっくりと割れている。いずれにしてもこんな所では治療も出来ないので、急いで巻いてしまって歩き続けて落ち着けるところを探す。
![Co1460-1470 Co1460-1470[image/jpeg:113kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174588.jpg)
![Co1490-1530 Co1490-1530[image/jpeg:135kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0152174587.jpg)
続く滝と滑を過ぎると、再びデブリ帯となり、奥にしぶとく雪渓が残り、突き当たりは障壁で左に曲がる。滝をひとつ右岸のカンテから超える(Co1460-1470)と、またガレの奥に滝がかかる。この滝は岩質が脆く、崩れやすい(Co1490-1530)。右岸を直登、続く滑を一気に駆け上がると、ようやく日が当たる。
落ち着いて体の様子を見てみると、唇の他には両手に多少の擦り傷と、右膝に痛みを感じるが、幸い大きな怪我は負わなかったようだ。沢は急傾斜のガレとなってナメワッカ分岐に突き上げる。
ナメワッカ分岐~十ノ沢カール
シュンベツ岳は省略して最低コルのルンゼから十ノ沢カールに降りる。急傾斜でとっかかりの少ないルンゼで、エサオマン北東カールのような残置ハーケンも見あたらない。あまり良くないルートだが、他はほとんどが断崖で、利用できそうなのは、シュンベツ岳北西の肩に突き上げる沢しかなさそうだ。十ノ沢カールは基本的に巨岩の石積だが、なんとか一張り分の天場はある。カールに着くと風もなく暖かで気持ちがいい。寒さと滑落で力つきた私はそれ以上行動する気力を完全に失い、そのまま横になって眠りにつく。
札内川十ノ沢
気が付くと1時間ほどが経過。起きあがって右膝を曲げると激痛が走る。滝から落ちたときに、膝に何かしらのダメージを負ったようだ。重たい体を引き起こして出発。石積をつないでシュンベツ岳の西の肩に上がる沢に出る。この沢は地形図ではカールの下段付近で不明瞭になっているが、その通りに藪の中に消える。再び石積に出て下る沢形を捜すが、足下から伏流する水の音は聞こえてくるが、明瞭な沢形は見あたらない。仕方なくそのまま藪に突入してしばらく漕ぐ。
かすかな沢形を見つけ、繋いでいくといくつも沢が合流し徐々に大きくなっていく。シュンベツ川とはうってかわり日がよく入り暖かい。地形図で見るよりも沢の傾斜がきつく感じるのは膝のダメージのせいだろうか。沢に出てからこのまま出合までゴーロ帯が続くのかと思いきや、途中からダイナミックな滑滝帯となる。快適にクライムダウンしていくと再びゴーロとなってやがて出合へと到着する。
札内川~林道
本流を遡行してから既に2日経過しているが、水量はあまり変化しているようには見えない。これでも少しは減っているのだろうか。下りは多少早く降りられるかと思っていたが、登りとほぼ同じペースで進む。週末だけあって八ノ沢出合には既に3張りのテントが設営されていた。それにしてもこんなに天気が良くて気持ちいいのに皆テントの中にこもって焚き火もしていない。それともまだカムエクアタックに行って帰っていないのだろうか?もう16時なのに?カムエクアタックってそげなもの?
出合を過ぎるとまたすぐに人とすれ違う。そこからはバイパスを使って快調に進む。途中で落とし物のタオルを拾う。なんとか暗くなる前に七ノ沢出合に到着。タオルはそこで夕食を食べていた単独行の青年のものであった。更に1時間半をかけて林道を歩く。車につく頃にはすっかり暗くなってしまった。
結局、用事には間に合わなかった。やっぱりもう1泊してのんびり歩けば良かった。そうすれば滝から落ちることもなかったかもしれないのに・・・