- 目的
- 一五九九峰南東面直登沢・一八三九峰南面左股直登沢遡行
- 日程
- 2016年08月08日(月) - 12日(金)
- 山域
- 中日高
- トラックログ
一八三九峰とおやぶんの因縁は深い。思えば25年前の大学一年生、先輩にいいぞいいぞとおだてられ、一八三九峰南面右股直登沢の1年生枠をかけて2人で飲み比べしたあげく、結局じゃんけんで私が勝って行くことになったが、イグチさんの滑落事故でその計画は破綻となった。翌年は大佐のリーダーで共に行くことになったが、入渓直前に台風の直撃を受け、一時撤退。体制を整え直し、メンバーに前年リーダーだったいわした師匠、イグチさんを加えてついに登頂を果たしたが、そこにおやぶんの姿は無かった。文登研に参加するために不参加であった。その後しばらくおやぶんは一八三九峰へ行く機会に恵まれなかったが、4年前にルベツネ山と共に行く計画を立てた。しかし、やはり悪天に祟られ、メインのルベツネ山に絞って一八三九峰はカットした経緯がある。
今回も台風5号の接近で、9日から10日にかけては悪天が予想されたため、一時は長期入山を余儀なくされる一八三九峰の山行を諦めて、日帰りないしは1泊程度の山行へ振り替えるつもりだったが、25年もの間待たされたおやぶんがついにしびれを切らせて、とりあえずいってみようと主張した。無理をしないのが信条であるが、この思いは無視できない。入山しても何もできずにエスケープすることも覚悟の上の条件で入山することにした。
行程
- 2016-08-08
- 札内川二ノ沢乗越~歴舟川本流 Co540 二股 C1
- 2016-08-09
- C1~一五九九峰南東面直登沢(スラブ)~一五九九峰~サッシビチャリ川 Co900 C2
- 2016-08-10
- C2~一八三九峰南面直登沢出合 C3(移動停滞)
- 2016-08-11
- C3~一八三九峰南面左股直登沢~一八三九峰 C4
- 2016-08-12
- C4~ヤオロマップ岳~コイカクシュサツナイ岳
メンバー
- ふ~ちゃん
- おやぶん
装備
個人装備(ふ~ちゃん)
- シャワークライムパック 50
- サワートレッカー RS(尾根用)
- サワーシューズ(登攀用)
- フラッドラッシュ(上下)
- アクティブスキン(上下)
- ウィックロンクールジップシャツ(尾根用)
- ピック付きハンマー
- ダック
- ATC ガイド
- エイト環
- 釣り具
共同装備
- ファイントラック ツエルト2ロング
- ガスS1
- テルモス750ml
ギア類
食料
朝
- フルーツグラノーラ 80g
- スティックココア
夕
- マカロニ 100g(1人)
- パスタソース
- 春雨スープ
行動食
- 羊羹(中)
- カロリーメイト(的なトップバリュー)
- ブラックサンダー
- 柿ピー(小)
- じゃがビー
- ドライソーセージ
- カントリーマアム、ぱりんこ、塩餅、チョコサンドウェハース等々
- アミノバイタルプロ
ジップロック(中)に入るだけ詰め込み
停滞食
- カップヌードルリフィル
- アルファ米
- コーンスープ
その他
- ナッツ詰め合わせ
- ドライバナナ
- アメマス(現地調達)
- スティックコーヒー、スティックココア、レモネード
2016年08月08日(月) 札内川二ノ沢乗越
今日はアプローチのアプローチ。本来であれば、元浦川林道からベッピリガイ乗越を使ってサッシビチャリ川を遡行するはずであったが、元浦川林道が閉鎖されているので、十勝側からアプローチすることにした。それでも一八三九峰だけに登るなら元浦川からアプローチした方が日程的には余裕があるのだが、往復丸二日を林道と河原歩きだけに裂くのは面白みが無いので、日高の沢旅らしく主稜線の一五九九峰を越えていくルートを選んだ。今日はそのために歴舟川へ降りるために札内川二ノ沢乗越を利用する。もちろん、歴舟川を下流から遡行しても良いのだが、下降でも長いゴルジュ泳ぎを強いられ、1泊増えてしまうのでここは簡易なルートをとる。
札内ヒュッテの駐車場に車を止める。ここから八ノ沢への道は崩落に伴う道路工事のため、人者通行止めとなっているが、駐車場にはたくさんの車が駐まっている。我々は普通の人と逆方向へ下り、二ノ沢に懸かる橋から沢に降りる。
この乗越ルートを使うのは3度目。最後に使ったのはもう8年も前だ。元々はあまいものこさん発案のルートだが、その後このルートを使って歴舟川に出たという話はあまり聞かない。
二ノ沢は途中に連瀑帯が出てくる。難しくはないがヌメリが多い。今日はラバーのサワートレッカー RS を使ったが、流行りヌメリのある所ではフェルトよりも不安がある。
豊富だった水量は Co720 付近で湧水に突如消え、その先は涸れた沢形となる。3泊2停分の重たい食料と高い気温のためか、突如シャリバテを起こし、おやぶんにストップをかけて行動食を口へ詰め込んで復活する。
若干の藪漕ぎで稜線に出て、真っ直ぐ歴舟川へ下る。崩壊の谷筋には出ず、しばらくは藪尾根上を下る。適当な所で左へトラバースし、崩壊地の下の滝で沢に降りた。
この沢は Co700 から Co650 付近には意外と面倒なゴルジュが続く。靴をサワーシューズ(フェルト)に履き替える。本当はロープを出した方が良い所もあるが、面倒なのでクライムダウンで行く。一つ目の滑滝は途中から少し滑って降りる。おやぶんは滑ったときに肘をぶつけて流血したらしい。だから腕を畳めと言ったのに。
次のチョックストンはおやぶんは先にザックを下ろしてクライムダウンするが、下の方で滑っていた。最後の滝も左岸の草付きを無理矢理トラバースして降りた。
本流に出たら Co540 二股まで下る。特に難しい物は無く、穏やかな瀞と河原のみが続く。時間は早いが、支流に入ってからテン場がある保証はないので出合に天張る。薪は乾いてよく燃えるが、暑いのでもう少し控えめに燃えて欲しい。焚き火とはままならぬものよ。
良い天場なのだが、魚が釣れないのが残念だ。やることもなくただうだうだと過ごす。明日は台風が通過する。山を越えてサッシビチャリ川へ乗っ越すことが出来るだろうか。
2016年08月09日(火) 一五九九峰南東面直登沢
夜半朝方近くに一雨来て、やはりダメか、と思ったが、朝には雨は止んでいた。空はどんよりと厚い雲が覆っているが、気温も高く行かない理由はない。
支流に入るとすぐに函状だがしばらくはガレが続く。 Co550 で胸まで水に浸かり、いよいよゴルジュの始まりを告げる。ツルツルの釜を持った小滝の日高らしいゴルジュが続くが、さほど難しくはなく楽しみながら快適にへつっていく。
Co620 の屈曲部はルンゼの集中するデブリだまりで、自然ダムが決壊したような跡があった。春先に下流で極端に水量が少ないときは注意した方が良さそう。そしてここから函もいよいよ狭くなってくる。
Co640 で沢が左に曲がって壁に囲まれた滝が出てくる。右岸のカンテ状を登って草付きバンドをトラバースして、クライムダウンで滝の上に戻る。二段目の小さな滑滝をへつって越えると、先にもまた大きな滝が見える。
外傾スタンスの一見イヤらしい滝だが、ホールドは豊富で右岸を快適に登る。
続く右岸側壁下部がハングした滝は、左岸のヤチブキをちぎってスタンスを掘り起こすと階段状で、難しくない。いつの間にか空からは霧雨が落ちてきている。
さほど難しくはないが、思いの外多くの滝が出てきて、早くもお腹いっぱいになってきた。
雨で体も冷え始めた頃、左岸からスラブ状の沢が二本合流してきた。とりあえず雨具を着込んで読図をする。ここが目指す直登沢と思ったが、どうやらもうちょっと先のようだ。本流に戻って先へ進むと、悪い雪渓が詰まっていた。
そこから奥のスラブが見えたが、これが直登沢なら手前の沢からの距離感が近すぎるような気がした。やはり、始めの沢が直登沢と判断してまた戻ることにした。
出合のハングした滝を登って、下流方向を見て読図すると、やはりなんか違う気がする。確信が持てないでいると、おやぶんがおもむろにスマホを取り出し、 GPS で現在地を割り出す。やはり目的の沢はもう少し先のようだ。
寒さと疲労で少し混乱と焦りがあったと思う。草付きを左にトラバースして隣の沢からクライムダウンして、再び本流を遡行する。結局この一連の行ったり来たりで50分も時間を無駄にしてしまった。
本流は崩れた雪渓で行く手を阻まれるので、右岸のツルツルスラブ壁のバンドを慎重に登り、草付きをトラバースして行くと目指す沢が見えた。先ほどの枝沢よりスケールは遙かに大きく、本来なら間違いようがない。
ルンゼ状とバンドに沿って高度を落として沢に戻り、出合の安定した雪渓の上に乗る。直登スラブは右と左2本の沢からなり、左は更にすぐ上で二手に分かれている。本流の更に奥はすり鉢状となって幾筋ものルンゼが落ちている。雨により水流も出て迫力があるが、雲で全体が見通せないのが残念だ。
沢の出合はいずれも取り付けるような角度ではないので、左右中間の尾根上から巻きに入る。それでも部分的に被った壁になっていたりするので、ルートの見極めは慎重に行かなければならない。
尾根筋を忠実に進むと濃密なネマガリダケとツルアジサイに行く手を阻まれ、藪から逃れようとすると、手がかりのない急な崖がまだ続いている。
100m ほど登ってからようやく沢身に戻ったが、急なスラブは途切れることなく続いている。
少しフリーで登ってみたが、足を滑らしたら下までノンストップで行きそうな角度が続くので、2ピッチほどロープを出した。スラブと言っても割と植生があったりするので、ピンを取る苦労はさほど無い。
再びフリーで登り続けるが、平坦な所は何処まで行っても出てこず、全く心安まらない。しかもガスで視界が効かないので、自分たちが今登っているラインが正解かどうかも分からない。
すると Co1200 付近でハングした壁に突き当たった。水流は左右に分かれているが、どちらに行っても嵌まりそうな雰囲気である。もはやラインを読んでもしょうがない、行ける所を突き進むのみだ。ハングしたのバンドを水しぶきを浴びながらトラバースし、右岸へ横断する。
しかし、もはや沢身に行き場はなく、そのまま植生へ逃げて尾根上を乗り越して左の沢に出る。
傾斜の緩そうな所を斜めに進んでいくと、更に左の沢筋に出る。
行きすぎると稜線のかなり南の方に出そうなので、右へ修正しつつ行くと Co1400 付近でルンゼ状に出てようやくスラブ状から解放される。岩盤状はなおも続くが規模は小さくなり、軽く灌木を這い上がると頂上のやや南側に出た。
頂上は台風の影響で風が強いのでタッチして少し下がって P-can を食う。日高側に降り始めると雨は止み、視界が開けてきた。
一五九九峰まで思った以上に時間がかかってしまったので、この時点で既に翌日は停滞することを決めていた。今日は河原が出てきたらすかさず泊まって、明日は予定天場までのんびり釣り下るだけだ。それでも、天場が出てくるまでまだ長い。
出来るだけクライムダウンで高度を下げて行くが、それでも2度のラッペルを強いられる。最後は沢を離れ、左岸の尾根上を藪を漕いで下った。
ガレ場に出ても結構長い。今度は水場と薪を求めて不安定なガレをひたすら下り、 Co900 でようやく快適そうな場所を見つけたのは日没も近い18時過ぎだった。
2016年08月10日(水) アメマス釣り(移動停滞)
のんびり起きてのんびり出発する。ゴルジュ帯も特に問題なし。ルベツネ山直登沢出合には焚き火の跡があった。
ここでしばし釣りに興じる。ここより下流でも入れ食いだが、大物は釜に潜んでいる。
天場について落ち着いてから、おやぶんは再び釣りを始めたが、立て続けに3尾釣れた所ですぐに止めてしまった。入れ食い過ぎてつまらなくなるのが贅沢な悩みだ。
2016年08月11日(木) 一八三九峰南面左股直登沢
今日はようやく本命の沢を遡行する。雲一つ無いスカ天で、出合から一八三九峰の頂上も見えている。
出合からしばらくは何も無いゴーロ。 Co640 二股で右股ルンゼの左岸の藪の中に動くものが見え、ものすごい崖を駆け上がって行った。ヒグマだ。我々ならロープを出しての登攀となりそうな所をあっと言う間に登って行ってしまった。ヒグマの登攀力恐るべし。山で追いかけられたら逃げても無駄だ。
ここを左に曲がるとゴルジュが始まる。すぐに一八三九峰南面直登沢名物の逆噴射の滝で記念撮影などしつつ進む。
時々腰まで浸かったり、無理な体勢で這い上がったりしたが、特に難しい所は無く、日高らしいスッキリした遡行が続く。
Co680 二股からはいよいよ左股に入る。出合の滝は二段二条の斜瀑。中央のカンテをフリクションで登る。少しぬめる。
切り立った函状にチョックストンの滝とガレ場が断続する。おそらく早い時期にはガレ場に雪渓が残って遡行が困難になるのだろう。今日は雪渓も無く、おやぶんのザックを軽く引っ張ったり、左岸のバンドを巻くのに念のためロープを出してみたがさほど困難では無かった。
一見、深い釜となっていそうな小滝も泡立った中に岩棚が続いていたりして通過できる。
Co750 二股の滝は右股を登って中間尾根のバンドをトラバースする。もっと陰鬱とした沢を想像していたが、日の光が射し込み、案外明るい雰囲気だ。もちろん天気によるのだろうが。
続く二段の滝の二段目は左岸を登って小さく巻く。特に難しさは無い。
続く滝の2段目は右岸を草をちぎりながらの微妙なトラバースで抜けた。
渦巻き状にえぐれた滝なども出てくる。これは水量が多いと渦巻き状に噴射したりするのだろうか。そんな水量の時は遡行は不可能だと思うが。
Co840 二股手前の滝は左岸のガレからバンドをトラバースして越える。そして、このまま行けば!!クラスの沢だななんてのんきなことを考え始めた我々の前にそれは現れた。
被った壁に囲まれた狭い函に滝が懸かり、その先はS字に屈曲して見えない。左岸のカンテ状を登攀してラッペルで降りれば1段目の上には出られそうな気もしないでもないが、その先にも登れない滝が続いている公算は大きい。
右股から尾根越えの高巻きに入る。右股に進み、まず滝を一つ登る。その先はますます急峻な壁となっていて、取付くには滝の上のワンポイントしかなさそう。被った壁にロープを伸ばし、木登り登攀に取りかかる。壁は下から見る以上に被っており、なかなか行きたい方向へ進めない。ハングした壁に生えた灌木をつかみながら攀じっていき、何とか安定した木でピッチを切る(20m)。
更に植生に沿って少し上がり、左へトラバースし始める。ルンゼを横切る前に短めにピッチを切る(10m)。
ルンゼを横切って下がり目にトラバースする(15m)。その先はフリーで藪を漕いで中間尾根に出た。
本流の沢底が見えるので30m懸垂で沢に降りる。途中の壁はハングしている。
上から滝を見下ろすと、やはりS字に屈曲して下は見えない。思ったほど強烈ではないが、やっぱりツルツルの滝が続いていた。久々に悪い高巻きだったが、高巻いて正解だったろう。
沢に降りても先には滝が垂直に落ちているのが見える。周りはハングして直接は取り付けない。左岸のルンゼからトラバースすることも考えたが、右岸壁を登って草付きバンドをトラバースすることにする。下からはそんなに難しく無さそうに見えたが、バンドは狭くて、ホールドも希薄でロープを出して正解だった。ピンは全て灌木でとる(25m)。
滝は2段になっていて、左岸から取付いていたら越えられなかったかも知れない。
先にも更に滝が架かっているのが見える。とりあえず捨て縄をして5mの懸垂でとりあえず沢に降りるが、おやぶんには降りるのを待ってもらう。滝を見ると、登るのは難しそうだが、そのまま右岸を行っても沢に戻るのは難しそうなのでおやぶんにも沢に降りてもらう。
左岸のルンゼから高巻くことにするが、まあ、この巻きが悪い悪い。一つ目はヘキセントリックをクラックに滑り込ませる。二つ目はなかなか良いリスが無く、ハーケンを半分だけ打ってクラブヒッチで留める。
更にルンゼを外れて左の壁に取付き、アングルを半分打ってクラブヒッチでかけるが、正直効いている気がしない。かぶり気味の壁を左にトラバースして行くが、これが日高らしくなく脆い。
人頭大の岩に足をかけると、これがグラリと動く。まじか。しかし、これを越えなければもはや先にも後にも進めない。これが落ちればおやぶんに直撃する。「これ浮いている!」と一声かけると、「はいはい」と合図が帰ってくる。分かっているのだろうか。(分かっていなかった)
とにかく落とさないように慎重に越えるが、その後は半ば足ブラの木登り登攀が続く。脆い壁だけに、植生ごと剥がれ落ちない保証はない。久々に半べそ状態になりながらようやく滝の上の安定した木に出る。
おやぶんを引き始めると、何やら叫んでいるが何を言っているか分からない。とにかく登ってきてもらうしかないのでロープを引き続ける。どうやら、ヘキセントリックが抜けなくて、難儀したらしい。
ようやく登り切ると「浮いてるって、あれ乗るしかないじゃんか」って怒られた。うんだからそうなんだよ。クライムダウンで沢に戻る。
近年、と言うか記憶に有る限り最悪の高巻きで、すっかり体力も気力も消耗してしまった。まだこんな巻きが続くのかと疑心暗鬼になるが、幸いに悪い高巻きはこれが最後だった。
Co910 の滝は一見また悪い高巻きかと思ったが、左岸ルンゼを登るとはっきりした踏み跡が有った。おそらくヒグマだろう。とっても分かりやすい巻き道を教えてくれてありがとうクマさん。
Co1020 の滝は右岸カンテ状からクマの踏み跡の有るテラスをトラバースして越える。核心部も越え、気温も上がってきたので雨具をぬぐ。
Co1040 で右岸に二段のテラスのある滝が出てくる。一見少し難しいかと思ったが、階段状をフリーで登れた。テラスから上は水際を直登する。
Co1070 シビチャリカールの沢出合は両方滝となっている。本流の滝は難しいので、カール側の滝を登る。こちらの滝は苔むしている。テラスをトラバースして本流の滝の上に出る。
Co1100 二股はガレに覆われた平坦な所で、快適にビバークできる。しかし、時間もまだ早いので先へ進む。
ガレを過ぎるとチムニー状の連瀑になるがバンバンフリーで登れる。
右岸が垂直に立ったガレとなる。周辺が立ちすぎてこの辺りのビバークは難しい。
Co1400 で正面はガレとなり、本流は右へ向かって連瀑となっている。この次の二股は左が本流で水量が多いが、しばしの読図の末に右に進むことにする。
Co1450 付近で1人3リットルの水を汲み一気に重さが増す。さらに Co1700 付近で支柱用に枯れたダケカンバを拾う。 Co1780 付近でついに沢形も消え、濃密なハイマツに突入する。
約40分の藪漕ぎで頂上に出た。本当に濃密なのは10分程度だ。
おやぶんは25年越しでようやく一八三九峰の頂上である。まずはわざわざ担いできたビールのミニ缶で祝杯を挙げる。
今夜は頂上で明日のご来光を待つ。
2016年08月12日(金) 稜線歩き
穏やかな朝。東の空はやや雲が厚かったが、雲海の上にご来光を拝むことが出来た。
そして西には一八三九峰の大三角形の頂点が延び、徐々に短く、はっきりしてくる。これこそピーク泊の特権。他にも同じような影が見える所もあるが、主稜線から外れた一八三九峰ほど綺麗に見える所はない。
久々に、おやぶんは初めて大三角形も見られて大満足して頂上を後にする。
稜線上では案の定たくさんの人に会った。北大のサークルの3人以外は皆単独行だった。
ヤオロマップ岳、コイカクシュサツナイ岳と、おやぶんの初ピークを踏み、急でかったるい夏尾根を下り、コイカク沢をダラダラと歩いてようやくこの長い山行を終えた。
雑感
一五九九峰南東面直登沢は、スラブ壁と言えばスラブ壁だが、意外と凸凹していて植生も有り、雨で水が流れていたこともあってか、むしろ超巨大な日高らしい滝、と言う印象を受けた。登攀技術的には極端に困難な部分も無く、比類なき高度感との心理戦である。
一八三九峰南面左股直登沢は、核心部の3回の高巻き意外は特段難しい所はない明るく快適な沢だが、この巻きが何しろ悪い。今回は雪渓が皆無で助かったが、これに雪渓が着いたら古い山谷の「快適な遡行は望めない」との記述になるのも頷ける。
今回足回りは、河原と尾根歩きにはサワートレッカー RS を、沢の核心部ではサワーシューズを利用したが、この組み合わせはすこぶる良いと思う。軽いので担いでも苦にならないし、尾根歩きや河原歩きでも疲れにくい。今後は長いルートではこれが定番になりそうだ。
今回は天候に不安があって、実際に一五九九峰では降られたが、沢も釣りも尾根も堪能した濃密な5日間だった。おやぶんは25年越しの一八三九峰を含めて4つの初ピークも踏み、無理して入山した甲斐のある山行となった。