- 目的
- トヨニ岳南峰東面沢遡行
- 日程
- 2016年09月18日(日) - 19日(月)
- 山域
- 南日高
- トラックログ
9月に入ってからというもの、一連の台風の直撃による水害で、日高山脈を始めとした各地の林道が軒並み通行止めとなり、予定していた山行がことごとく入山困難となり、どうしたものかとくすぶっていた。そんななか、くったらさんとツジがトヨニ岳南峰東面沢に行くという話が飛び込んできた。それならば、私もエントリーしたいと言った所、私がリーダーと言う流れとなった。この沢は、一昨年、昨年と立て続けに遡行を試みたが、核心部の始まりの滝に全く太刀打ちできず、2年連続で何もできずに撤退している。
行程
- 2016-09-18
- 野塚トンネル北側駐車場~豊似川左股上二股付近 C1
- 2016-09-19
- C1~トヨニ岳南峰東面沢~トヨニ岳南峰~トヨニ岳南峰南東面直登沢~上二股~駐車場 下山
メンバー
装備
2016年09月18日(日)
当初の計画では、18日の内に遡行をし、ペンギンカールで宿泊する予定だったらしい。しかし、出発時間が遅いことと、カールでの宿泊は焚き火も困難で気温も低そうであること、また、宿泊装備を担いでの核心の滝の登攀も困難であると思われたので、前日は適当な所で釣りでもしながらのんびりと過ごして、軽い装備で一気に遡下降することにした。
私は1人、早めに出発して近くで適当にキノコ狩りなどしようと考えていたが、朝から雨が続いており、結局二人を時間まで待つことになった。
二人が到着した頃には何とか雨も止み、予定通りに出発する。一連の大雨でこの辺りも相当の雨が降ったらしく、河床が流されてだいぶ沢の様相が変わっていた。それでも、魚は減っていないようで、大きなサクラマスが遡上していた。
天場を探しつつ、いったん Co530 二股まで行き、少し戻って Co510 付近にテン場を設けた。薪は濡れていて少し手こずったが、何とか焚き火に着火する。魚はいくらでも釣れるが、稚魚サイズのアメマスばかりがすぐにつれてしまい、本命のヤマメがなかなか釣れない。何とか釣り上げたヤマメもうっかり逃がしてしまう失態もあり、全て小降りのアメマスばかりだった。
塩焼きにするにはやや小さすぎるので、ラードを使って唐揚げにする。小雨は断続的に降り続け、明日の天気が懸念された。
2016年09月19日(月)
雨は止んだが、まだ雲は厚く低い。不要な宿泊装備を天場に残置して、軽装で出発する。
昨年、下流部を埋めていた流木は洗い流されて随分と歩きやすくなっていた。 Co800 ガレ地帯を通過し、高い壁に囲まれた函の核心部へと入っていく。
前衛のチョックストンと Co870 二股の小滝を越えて、いよいよ目の前に核心の滝が現れる。
3人で滝を見上げ、しばし観察する。水量は多い。昨年は水がチョロチョロとしか流れておらず、あわよくば水流をまたいで右岸から登れるのではないかと思っていたが、この時期のこの水量を浴びるのはかなり勇気が要る。ふつうならば、高巻いてしまうレベルの滝であるが、既に一昨年、昨年と高巻きを試みて沢に戻るのは困難であることは分かっているので、その選択肢も無い。
各々顔色をうかがうが、まるで行く気は無いようで、やはり自分で行かなければならない雰囲気である。やおら、ため息交じりにロープを結び、とりあえずハーケンを一つ打ち込み、空身で壁に張り付いて行けそうなラインを読む。
水流をまたぐラインはやはり水量が多くて、とても行く気がしない。意を決して左岸のフェースを直上することにした。薄刃のハーケンを惜しみなく打ち込み、左にトラバースしながら僅かずつ体を上げる。
スタンスはあるが、微妙な傾斜で、僅かなスリップも許されない状況でふくらはぎに負担が掛る。中間部を越え、いよいよ核心と言う所で気合いを入れて一気に上がろうとするが、次の一手が届かず、危うくフォールしそうになる。何とか持ちこたえて最終ピン下まで戻り、テンションをかけてレストするが、一気に全身がパンプアップしてしまった。
ふと、持ってきたギア類を見ると、上まで抜けるのにシュリンゲが足りないことに気づき、捨て縄を垂らしてシュリンゲを受け取る。この時間で何とか体力を回復させるが、既に腕もふくらはぎも限界に近い。次に越えなければもう無理かも知れない。
ハーケンをもう一枚打ち込み、微妙なホールドと A0 で何とか足の懸かる所まで這い上がり、ガバをつかむ。思わずオッシャと声が漏れる。
そこからはさほど難しくも無く、最後の水流に突っ込みシャワーで突破する。ロープの繰り出し20m強で、中間ピンは8本を要した。長い沢登り歴でもなかなか経験することのない渾身の一登だった。
セカンドでくったらさんを引き上げると、握手を求められた。ザックを引き上げ、最後にツジが上がってきたが、ピンを回収してから核心部を上がるのはかなり厳しかったようだ。核心部のハーケンは一枚残置するように指示すべきだったかも知れない。
この滝を越えても、狭い函の中に滝が続く。一つ目のチョックストンは小さいが意外と微妙。次の滝は左岸のクラック沿いをのぼる。樋状の滝は中央をステミングでのぼる。最後の屈曲する滝は正面の樋状をもろにシャワーで越え、上部の滑を快適に登る。
Co960 二股を左に進み、次の Co1010 二股で落ちてくる滝は、ツジは右岸から取付くが、少し苦労しているようなので、くったらさんと私は右岸のルンゼから高巻く。
その後もいくつかの滝を越え、しぶとく沢筋を詰めていくが、最後は急傾斜の笹藪をよじ登って稜線に出た。ポコから南峰までの吊り尾根上はシカ道を辿る。南東面直登沢への下降点からピークへはくったらさんとツジだけに行ってもらい、休憩がてら靴をフェルトからラバーへと履き替える。
おなじみ南東面のガレ沢へと下る。 F4,F3,F2,F1 とラッペルを繰り返し、天場で荷物を回収し、駐車場への沢を登り返して山行を終えた。
雑感
今回、三度目の正直で何とか問題のあの滝を越えることが出来た。日帰りが可能で、日高でも屈指の困難な登攀を体験できると言う利点はあるが、まさにそのワンポイントを如何に越えるかというだけの沢なので、万人にお勧めとは言いがたい。日高の核心部への試金石としての利用価値は有るが、それもネイリングしてこそである。核心の滝までは誰でも行ける場所だけに、この記録を読んで行く人も現れるだろうが、核心部に残置が出来てしまえばただのニッチな支流のルンゼになってしまうだろう。