- 目的
- 夏合宿 一八三九峰南面右股直登沢遡行
- 日程
- 1992年08月21日(金) - 24日(月)
- 山域
- 中日高
行程
- 1992-08-21
- 室蘭~静内~ペテガリ山荘 C0
- 1992-08-22
- C0~サッシビチャリ川~一八三九峰南面直登沢出合 C1
- 1992-08-23
- C1~一八三九峰南面右股直登沢(一八三九峰南東面直登沢)~一八三九峰 C2
- 1992-08-24
- C2~コイカクシュサツナイ岳~コイカクシュサツナイ川~ピョウタンの滝 下山
メンバー
台風による一時撤退により、おやぶんの都合がつかなくなり、いわしたさん、いぐちさんが編入された。
1992年08月21日(金) 室蘭~ペテガリ山荘
時刻 | 場所 | 行動 |
---|---|---|
室蘭 | 出発 | |
ペテガリ山荘 | C0 |
台風の通過により、林道が荒れ、入山が遅れてしまった。今回はかじP号で山荘まで送ってもらう。林道は台風の影響でかなり荒れている。それでもなんとか山荘まで無事にたどり着く。梶原さんはいつもいつも、良くこんな荒れた道をちゃんと最後まで送り届けてくれると感心する。
本日は梶原さんも一緒に山荘でC0。山荘ノートには「さて、これから林道を歩こう」と、北大WVのつぶやきが記されていた。
1992年08月22日(土) ペテガリ山荘~直登沢出合
時刻 | 場所 | 行動 |
---|---|---|
07:20 | サッシビチャリ川出合 | |
08:05 | Co400 | 入渓 |
10:20 | 一八三九峰南面直登沢出合 | C1 |
梶原さんにサッシビチャリ川出合まで送ってもらい、別れを告げる。左岸にブル道が延々と続く。Co400の沢が東に屈曲するあたりで入渓。かつてはこのあたりまでも、険悪な函が続いていたらしいが、今では東の沢ダムに呑み込まれてしまった。第3の函を右岸のルンゼから登り、大巻きする。程なく直登沢出合に到着する。
予想以上に早い到着。いわしたさんが入るだけで、パーティのペースが自然に上がる。ツェルトを建て、私が火を焚く間に、いわしたさんがルアーでイワナを7匹釣り上げる。
午後から私とごとーさんで直登沢の偵察に出発する。名物逆噴射の滝に感嘆し、左岸を通過。釜を持った滝をひとつ左岸から巻いて下二股まで行く。帰りはこの滝をアプザイレンするために、ハーケンとシュリンゲを残置した。
1992年08月23日(日) 一八三九峰南面直登沢遡行
時刻 | 場所 | 行動 |
---|---|---|
05:45 | 出発 | |
06:25 | 下二股 | |
07:30 | 上二股 | |
08:35 | Co1100 | |
11:05 | Co1290 二股 | |
12:15 | Co1470 二股 | |
13:35 | コル | |
14:00 | 一八三九峰 | C2 |
観光気分の遡行から核心へ
朝、出発しようとすると雨が降り始める。ツェルトをかぶって天気待ちをするが、晴れる気配はない。下二股までは昨日の偵察通り通過する。ハーケンとシュリンゲを回収。左股は10mほどの滝だ。右股に入り、すぐに10mほどの滑滝が出てくる。右岸を直登する。5mほどの函を泳ぎ、10m滑滝の左岸を直登、釜を持った滑滝は釜を泳いで左岸に取り付き直登。この滝で、泳ぐのを嫌って右岸を高巻いたいわしたさんが降り口を見つけられず、岩盤を滑り降りる。井口さんは釜に落ちて眼鏡を紛失してしまう。
Co820 の奔流となって吹き出る10mの滝は右岸のガレを使って高巻く。雪渓の残る Co870 上二股からは長大な函地形で、中にはいくつも滝が架かる。時期が遅いため、幸いにも中に雪渓はなく、それほど困難な場所はない。右岸のバンドを使って比較的快適に超えていく。
Co1030 で、左岸側壁からすだれ状に落ちる滝にでる。日高では、断層の関係か、本流が側壁から流れ落ちるような地形は比較的良くあるが、ここほど顕著で大規模な物は珍しい。50mの大岩壁を一気に直登する。この滝の不思議な地形は、上に上がってみることで更によく分かる。普通は、側壁状になって落ちる滝は、地層の層に交差して、元の水流と垂直落ちていくものだが、この滝は、断層と層に沿って流れ、元の流れと平行に走り、流れが曲がるのではなく、そのまま横に突然現れた断崖に落ちるような感じだ。この滝の更に奥にでも元の流れに滝が落ちている。音楽記号のナチュラル♮のような地形と言ったら分かり良いだろうか。とにかく変っている。
核心部
![「北海道の山と谷」にある写真の滝 「北海道の山と谷」にある写真の滝[image/jpeg:87kB]](https://www.whochan.com/files/thum_0133927951.jpg)
Co1140 で正面にどん詰まりの岩壁を見て、右岸から水量の多い滝が落ちる。30m2段となっており、下段はとっかかりの少ない滑滝で、上で緩やかになり、狭いチムニーに続く。滑を登ったところでメンバーを待たせ、わたしがザックのまま取り付く。チムニー内はもろに水流を受け、ヘルメットに水圧をもろに受け、呼吸すらままならない。手探りだけでホールドを探り、気合いで登り切る。チムニー自体はさほどの高さではないが、ここを落ちると、つるつるの滑滝を約20mほど落下することになる。さすがにちょっと危機感を抱いたので、ザックを降ろし、ザイルの用意をしていると、ごとーさんが登ってくる。「ザイル出します」と声をかけたものの、すでに水流に突入し、声が届かないようだ。必至に登り切ったごとーさんは、目を丸くしていた。よほど怖かったのだろう(苦笑)。もちろん、他の2名はザイルで確保して引き上げる。今考えれば、当然、ザイルでランニングをとるべき場所だが、当時私は全く落ちる気などせず、イケイケだったので、まるでそんな発想が出てこなかった。若いってすばらしい(瀑)。
つづく函状の中に架かるつるつるの滑滝(おそらく、「新版山谷」にある写真の滝)は、右岸の側壁を斜上し、バンドに沿ってトラバースして滝の上に出る。ここで、ザイルを出そうとしたら、ハンマーとハーケンがない。先ほどの滝の上に忘れてきたのだ。すぐにごとーさんが取りに戻ってくれ、ザイルで引き上げる。3人をザイルで確保して通過。 Co1250 二股の滝(現在は3股になってるらしい)は、右股の沢を登り、岩壁をへつって左股へうつる。ここを過ぎると、後は小さな小滝の連続である。B沢に負けず劣らずの量だが、不思議に飽きてこない。快適に直登していくと藪漕ぎもほとんどなく、東のコルに突き出た。
一八三九峰ピークはガスの中だったが、周りから枯れ木をかき集め、こぢんまりとながら焚火をしながら濡れた衣服を乾かす。
1992年08月24日(月) 一八三九峰~コイカクシュサツナイ岳
時刻 | 場所 | 行動 |
---|---|---|
05:30 | 出発 | |
08:05 | ヤオロマップ岳 | |
10:05 | コイカクシュサツナイ岳 | |
12:25 | 上二股 | 入渓 |
14:25 | 札内林道 | |
17:20 | ピョウタンの滝 | 下山 |
朝起きると、稜線にかかっていた雲が見る見るうちに下がっていき、日高山脈がその全貌を表す。太陽が一八三九峰に差し、我々の眼下に、巨大なピラミッド型の影ができあがる。
さわやかな秋の風を受けながらコイカクを目指す。ヤオロまでの稜線は意外と明瞭な踏み跡があり、思ったよりも楽に通過する。コイカクの夏尾根は既に満身創痍の我々にはキツい。膝をがくがくさせながら、黙々と歩き続ける。コイカクシュサツナイ川もノンストップで通過し、林道に出る。
あわよくばヒッチハイクともくろんだが、車通りが少なく、結局ピョウタンの滝までひたすら歩き続けた。アスファルト路面になってからは膝にもキツく、太陽の照り返しも厳しい物があるが、当然のように既に水は捨てられている。やっとの思いでピョウタンの滝に到着し、タクシーを呼ぶ。帯広で帯広湯に浸かり、下山ビールでようやくのどを潤す。