キムクシュの深淵に心折れ

ふ~ちゃん
目的
キムクシュベツ川遡行
日程
2013年09月18日(水) - 21日(土)
山域
中日高

キムクシュを知らずして日高のを語るべからず・・・

キムクシュベツ」登りを始めた頃に耳にしたその奇妙な名の川は、天候、日程、メンバー、行程、泳力、様々な要素をクリアしなければならず、結局20年もの間、足を踏み入れることさえ出来なかった。今年ことはキムクシュをーその決意を遂行すべく、台風一過の沢へ向かったが・・・

行程

2013-09-18
大樹道の駅 C0
2013-09-19
歴舟本流林道~キムクシュベツ川出合~キムクシュベツ川~ P1179西面出合 C1
2013-09-20
C1~六のキムクシュベツ川出合 C2
2013-09-21
C2~歴舟本流林道 下山

装備

  • アクアボディ・ジップシャツ/タイツ
  • クリマプレン・パドリングロングスリーブ/タイツ
  • 雨具
  • ライフジャケット

2013年09月18日(水)

台風一過で週間予報ではしばらく天候は安定する。しかし、大雨の影響による増水・林道決壊で、入渓できないことも考えられる。もう一日待った方が良いかとも思ったが、とりあえず現地に行ってから判断することにした。

いつもの様にコスモール大樹にて C0 。さすがにこの時期ともなるとキャンピングカーもなく、駐車場は閑散としていた。どうでも良いけど、ここにも「日本一周」中のチャリダーが居た。

2013年09月19日(木)

2013-09-19 キムクシュベツ川
タイムレコード
時刻天候場所行動
04:00コスモール大樹起床
05:50歴舟本流林道(1km)出発
07:00Co361自転車残置
08:10橋脚靴残置
09:25キムクシュベツ川出合
10:25Co440
11:25Co470
12:25Co500 二股
13:30Co525
14:00P1179西面出合C1

セブンイレブンで朝食のパンを購入し、歴舟林道へ向かう。牧場から下り始めると、雨裂が激しい。しょっぱなからイヤな感じだが、何とか下りきる。本流林道のゲートは開いていたので、予定通り奥まで入れるかと思ったら、 1km ほどの地点で崩壊し、ピンクテープによる封鎖線が張られていた。正直、ここから自転車でアプローチするのは面倒くさいので、どうしようかとしばし考え込むが、とりあえず行けるところまで行くことにする。

ここに駐めると、工事が入った場合に邪魔になりそうなので少し戻った広場に駐車して出発する。まあ、先日のペテガリ西沢のアプローチに比べればへでも無いわけで。途中の橋から見る川の水量は多い様な、そうでもない様な。とりあえず濁流はしていない。ワンピッチで従来の林道崩壊地点に到着。自転車を残置する。

さらにワンピッチ荒れた林道跡を歩いて、おなじみの橋脚に出る。ここで靴を渓流靴に履き替え、トレッキングブーツを残置する。やはり水圧は強い。何とか渡渉して対岸の林道跡へ遷る。 Co375 標高点付近は雪崩の跡で木々がなぎ倒されていた。

以前、一五九九峰に登った時には上滝沢出合付近でに降りたが、踏み跡はさらに上の方に続いている。急峻なルンゼを一本渡り、さらに踏み跡らしきものを進んだが、すぐに崖となって途切れたので戻ってルンゼから沢に下る。

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下二股キムクシュベツ川出合

下二股まで岩場場の連続。早速腰まで水につかりながらの渡渉へつりで下二股に到着する。下二股の水量はほぼ1対1だ。


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キムクシュ出合から

キムクシュベツ川に入るといきなり暗いゴルジュだが、この川ではこんな物はとは呼ばない。つまり|_|こういうのが函であって\_/こういうのは函ではないわけだ。

ではないけど河原でもない、岩場を延々と、微妙なへつりと腰までの渡渉がつづく。


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左岸ハング下をへつる このあたりから一ノ圏内

Co430 の左岸ハングした岩があって、これをへつるあたりからいよいよ本格的なゴルジュの雰囲気となってくる。


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F1 右岸飛び込んで一掻きして這い上がる

Co445 屈曲点にあるのがいわゆる二ノ(「山谷」では一ノ函)の突き当たりとなる10m F1 だ。大きなを持っていて、の上の右岸には枝沢が大きなとなって合わさっている。

右岸へつっていくが、あと一歩とどけば濡れずに登れそうだが、ツルツルでどうやら泳ぐことは不可避の様だ。意を決してに飛び込み、一掻きして岩に這い上がる。バンド沿いに直登し、の上に出るが、水圧が強くて対岸に渡れないので枝沢を少し登ってへつって通過した。


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微妙なへつりが続くが

すぐに長く屈曲したとなる。ここからが三ノにあたる。右岸を微妙なへつりで進んでいくと、突き当たりにツルツルの小滝が出てきた。これはへつるのは無理で、泳いでとりついても這い上がるのは無理そうなので、しばし考えたあげく、高巻くことにした。


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巻き終わり下は深い

左岸の側壁を少し戻りつつトラバースして台地に上がって高巻いた。岩場クライムダウンしてに戻ると、さらに深いを伴った小滝が続くので、さらに小さく巻く。


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このあたりは少し浅い

砂利で埋まった浅いを腰までつかりながら進み、小滝を一つ越えて三ノが終了。四ノ函までは2~3の河原もあって幕営は可能だが、増水時には逃げ場がないのでできれば避けたい。


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四ノ 出口見えず左岸高巻

Co480 屈曲部に深いを伴ったが出てくる。これが四ノ函。函の奥にはわずかなしぶきが見えて轟音を立てているので、おそらく函滝があるのだろう。この大きな淵を泳ぎ切る自信がないので、左岸から高巻く。


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四ノ の上 巻き終わり

足下はすっぱりと落ちていて下が見えない。が見えたところで無理矢理に降りたが、植生乏しくあまり良くない。まだ四ノを越えただけだが、正直もうけっこうお腹いっぱいだ。

そろそろ河原が多くなるのかなと思っていたが、相変わらず河原のない岩場場でへつり渡渉が続く。


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泳いで左岸に這い上がる

「山谷」では Co520 のS字屈曲部が四のとされているが、「日高山脈」では言及がない。少し離れて Co540 のを持った小滝は泳いで左岸に這い上がった。


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河原

ここから河原が多くなり、どこにでも泊まれそうだ。P1179西面出合はいかにも良い天場なので少し早いが泊ることにする。ここなら増水しても P1179 を経由して上滝沢に下るなり、ポンヤまでヤブを漕ぐなり、まあなんとでもなるだろう。

実は、あわよくば三股まで行けるかななんて思っていたが、そんなのは全然無理だった。まだ三股まで半分しか来ていないが、ずっと水につかりっぱなしで食傷気味。正直言って、予定通りにキムクシュを往復するには体力も精神力も自信が無い。早くもピークから東尾根に降りようかなどと弱気なことを考え始める。

豊富な薪に火をつけて一晩を過ごす。釣り道具は持ってきていない。途中に魚影も見なかったし、まあ、居ないのだろう。今回の食事は、カップヌードルごはんシリーズ。初めて使ってみたが、中身はほぼアルファ米。鍋で調理しなければならない手間はあるが、普通のアルファ米の約半分の価格で手に入ることを考えると、これを使わない手はない。今後はこれ一辺倒になりそうな予感がする。

2013年09月20日(金)

2013-09-20 キムクシュベツ川
タイムレコード
時刻天候場所行動
04:00起床
05:30出発
06:30Co600 二股
07:30六の撤退
08:00焚き火
09:20
10:45C1 地点
15:15キムクシュベツ川出合C2

今日も良い天気。焚き火に別れを告げて出発する。

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三段の

が右に屈曲すると、大きなを持った階段状三段のが出てくる。へつりは不可能。泳げば直登できそうだが、朝一からこんな大きな釜を泳ぐ気になれない。左岸から高巻く。


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ポンヤオロマップ岳北西面直登沢出合(五ノ入口)

さらに小滝を二つほど通過すると Co570 二股。ここは3方が岩で囲まれた広いとなって、左は岩陰からとなって、右は長い廊下となって合流している。


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五ノ 足が着く

ここは泳ぐしかなさそうだ。意を決して長い廊下に向かう。少し泳ぐと足が着いて胸までつかりながら進む。5~6mほど頭上には流木が引っかかっていたりする。


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滑続く

五ノを過ぎると、しばらくは滑とが続く。 Co600 手前の屈曲部二股右岸台地は開削すれば良い天場になるかもしれない。ヤマウルシが平気ならばだが・・・


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プール 六ノの前哨戦 左岸巻ける

岩場の傾斜は徐々にきつくなり、へつりが面倒になってくる。 Co610 屈曲部は六ノ前哨戦のプールとなっているが、濡れたくないので巻くことにした。左岸から簡単に巻ける。


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ブリッジで左岸から水が落ちているところまでは行けた

Co630 屈曲部手前で幅がものすごく狭い六のとなる。右岸へつっていき、対岸に手を伸ばして水面ギリギリを人間ブリッジで進むが、ついに手が届かなくなってドボン。がんばって泳ごうとするが、前に進まず流される。結局振り出しに戻ってしまった。

終点はまだまだ遠く、正直私の泳力ではどうがんばっても泳ぎ切る自信がない。これは困った。巻くにしても、右岸ハングして取り付けず、左岸の先はとても降りられそうに見えない。

それでも、水の中でじっとしていても埒があかないので、左岸側壁によじ登る。ブドウの蔓とトゲトゲ植物の最悪の藪だ。しかも、深いルンゼに阻まれ、先に進めず、ラッペルするにもあまり良いピンがなく、ロープが届くかも分からない。足下のの様子は見えず、どうなっているか分からない。


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六ノ 巻いたは良いが降りられない

しかも、屈曲部の先には延々とゴルジュが続くのが見える。どうしようかと考えあぐねていると、風に吹かれて体がどんどん冷えてきてしまった。ふと空を見上げると、雲がどんどん流れて行く。このまま予定通りに進んでも、ピークで風に吹かれることを考えるとぞっとする。しかも、明日はこの延々と続くゴルジュをまた泳いで下らないといけないのだ。もはや心はポッキリと折れてしまった。

撤退を決めてに戻り、下り始める。それでも腰まで水につからなければならずつらい。歩き始めても震えが止まらず、少し下った河原で薪を集めて焚き火をつける。

1時間ほど火にあたって下降を開始する。当然登りで水につかったところは下りでも水につかる。巻いたところは、飛び込めば早いが、泳ぐ気になれず、結局全て高巻く。F1 は左岸を下って、に飛び込んだ。

結局、登りと同じ時間がかかって下二股に到着した。薪を集めて火をつける。風が強くて時々ツエルトがあおられる。この晩はずっと風が強いままだった。やはりピークまで行っていたらかなりつらかったと思われる。

2013年09月21日(土)

2013-09-21 歴舟川
タイムレコード
時刻天候場所行動
06:00起床
08:05出発
08:30林道跡
09:15橋脚靴交換
11:00自転車回収
12:05下山

朝方にはやっと風が止んだ。皮肉にも今日も天気が良い。のんびりと起きて出発する。林道まで下るだけ、とは言ってもヤオロマップ川の場合、そう簡単でもなく、地味に胸まで浸かったりする。

30分ほどで左岸ルンゼに上がり、踏み跡に出る。ここから先はただだるいだけ。靴を回収し、自転車を回収して4時間ほどで駐車地点に到着した。おや?行きより時間がかかっている・・・

雑感

今回の山行は、そもそも台風が来た時点でかなりテンションが下がっており、それでも気合いを入れて出発したが、案の定道が崩れたりしてますますテンションが低下。キムクシュに入ってからは予想通りというか、予想以上のゴルジュで食傷気味となり、途中からはもうどんな言い訳をつけて帰ろうかと感じになってしまった。撤退した六のはおそらく必死でもがけば泳ぎ切れたかもしれないが、もはやあの精神状態では無理だった。

ちなみに、いわゆる一のから四の函は、記録によってまちまちで、かなり混乱が見られるが、「北海道の山と谷」を基準にすると、今回の記録が正しいのではないかと思われる。一泳ぎ(巻き)一函と考えると妥当な線である。一ノ函から四ノ函の位置については、初出展と思われる「日高山脈(北大山の会)」に準じて修正しました。

そして今、ペテガリ岳がかつて遙かなる山と呼ばれていた所以を実感している。

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