- 目的
- 一九六七峰~北戸蔦別岳~伏美岳縦走
- 日程
- 2017年03月08日(水) - 12日(日)
- 山域
- 北日高
前回、美生川から入山してピパイロ岳、伏美岳へと抜ける山行を計画したが、その時は林道の崩壊と体力不足で心折れて途中撤退した。今回は1泊増やしてあわよくば幌尻岳までを狙ったが、予定外のラッセルと暴風でそこまで届く事は無かった。
行程
装備
イグルー泊のためテントは不携帯。
2017年03月09日(木) 林道アプローチと尾根登高
昨夜は美生ダム入口で車中泊。前回来たときよりもだいぶ雪は減って春めいてきた感じがある。夜明け前に起きてパッキングを済ませ、明るくなってきたタイミングで出発した。
上美生林道はこの時期には林業で除雪されている事が多いが、今年は去年の水害のため林道が崩壊しているため除雪は入っていない。前回もそうだったが、おそらく林地の管理か調査のために定期的に人が入っているのだろう、うっすらとスキーのトレースが着いている。林地内や脇の林道に入り込んでいるので決して登山者ではない。
右岸から左岸に移る清流橋が被害を受けて周囲の道は崩壊し、橋には流木が溜まっている。一応橋は渡れる状態だが、向こう端で崩れていて綱渡り状態で通過する。左岸に移ると道は本来川岸沿いにあるはずだが、まるまる無くなっており、道だったはずだった所に川が流れている。
途中で酒を持ってくるのを忘れた事に気づく。2時間も歩いた後でさすがに取りに戻るわけにも行かずそのまま進む事にしたが、これは痛かった。
そんな感じで、林道は所々でまるまる崩れていたり、枝沢毎に崩壊してえぐれている。前回来たときはその途上で心折れて八ノ沢手前で引き返した。前回引き替えした所はスキーでは渡れず、一旦シートラしてえぐれた枝沢の壁をよじ登って先へ進む。
八ノ沢出合にも本来古い橋が架かっていたはずだが、その橋も無くなっていた。元々廃道の橋なので本来の機能はしていなかったのだが。
その先は廃林道だが、それなりに歩きやすい。右岸に移る Co688 標高点ではおあつらえ向きにスノーブリッジが架かり、キツネの足跡が付いている。その後しばらくは右岸を進む。一旦左岸に移りたくなるが、右岸を進むのが正解だ。 Co730 二股を越えて Co743 二股の手前で左岸に移ると取付く尾根の目の前だ。
さて尾根に取付こうかと言うとき、遠くからヘリコプターの音がゆっくりと近づいてきて、超低空で沢沿いに飛んできて頭の上をゆっくりと旋回して帰って行った。・・・一体何だったのか。
それはさておき、尾根は左はブッシュがうるさそう。右は割と登りやすそう。右の支流沿いを少し行ってから斜面に取付く。傾斜はさほどではないが、新雪は付いているのにその下がクラスト気味でシールが効きにくいという状況。尾根上に上がっても堅い雪面と深い雪に翻弄される。
太陽の光は見えているが、雪はしきりに降っている。雪庇は北側に出ている。ピパイロ岳に当たった北風が吹き下ろしの風になっているのか。尾根は段々登りやすくなってくるが、雪が徐々に深くなっていく。
詳しく読図していないが多分 Co1400 付近で今日の幕とする。今回はテントを持ってこなかったのでイグルーを建設する。一年ぶりのイグルー建設だが、なんだかんだで結局中に入るまで3時間ほどかかってしまった。しかも建設中割と湿った雪が降り続いたので全身ずぶ濡れになってしまった。ゴアのジャケット自体だいぶよたってきてるし…こりゃアカン。ああ、そして酒がない。
2017年03月10日(金) 猛ラッセルの末に主稜線へ
寒かった。衣類が濡れた状態でシュラフに入ったし、そもそもシュラフがだいぶよたってきているし、ブリーズドライテックのシュラフカバーは全く透湿してくれないし。そして酒が無いせいで長い夜だった。
外に出ると、なんか…めっちゃ積もっている。 C1 からは順調に行けば主稜線まで1ピッチくらいかななどと甘く考えていたが…そんなん無理。スキーでも膝から腿のラッセルである。久々の鬼ラッセルだ。めっちゃ登ったつもりで振り返っても全然進んでいない。1ピッチで100メートルも登れない…おお…これ…たどり着けるのか?いつもの調子で引き返してしまおうかという気持ちが一瞬芽生えるが、林道の崩壊錠多を考えるとそれもまた面倒。まあ、行ける所まで行こう。
そんな感じで3時間猛ラッセルの末、ようやく主稜線が見えた。 P1712 の直下で足元がちょっとクラスト気味になったのでアイゼンに切り替える。スキーがずっしりと重い。主稜上は雪が飛ばされ、岩が露出している。助かった…
岩と言っても小さな岩が転がる程度で岩稜と言うほどではない。基本的にはなだらかな尾根で氷化したハイマツの斜面にアイゼンをカツカツ効かせてズンズン進む。天気は今日も太陽の光は見えているがしんしんと降り続く状態。
ピパイロ岳手前のコルで再び雪が深くなったのでスキーを付ける。登り始めは左側は急斜面になっているので、右のダケカンバ帯を進むが、これが意外と面倒。ダケカンバの枝が邪魔だし、少し上がると新雪の下がクラストしていてスキーが効かない。とは言え、スキーを脱ぐと猛ラッセルとなる。
雪面の状態がめまぐるしく変わり、アイゼンとスキーを何度か交換しつつ前進する。カンバ帯を抜けると氷化したハイマツの急斜面となってアイゼンが効くようになる。この際後の急斜面は思ったほどの傾斜でも距離でもない。むしろ下部のカンバ帯の方が面倒だった。
ピパイロ岳西峰は無視して右寄りに進み主稜に出る。あ、いや、今までも主稜上だった。えーと、うーんと、まあ。この稜線に出ると風が強い。稜線上の様子は一変し、植生は見えず、雪と岩の世界が始まる。雪は部分的に深い。
コル手前の岩場を慎重に下り、コルで幕とする。イグルーを建設するのに雪は足りるのかと思ったが、全く希有だった。掘っても掘っても雪。1人サイズのイグルーを作るのには全く問題ない。しかし、今日も時間がかかりすぎ。途中でうまく詰めなくなって、一旦ブロックを下ろしてから積み直すなどして結局また3時間かかってしまった。ブロックはあまり内側に傾斜しないようにフラットに積み重ねていくのがコツ。でもまた作るときには忘れている。
2017年03月11日(土) 主稜線を西進アタック
昨夜も寒かった。そして長かった。そしてなんか外ではものすごい風の音がするんですけど。でも、天気予報では高気圧が張り出すって言ってるから扉を開く。おお、晴れ…んっがっ、なん、この暴風。周辺の山々は朝日に照らされ赤らんできているが、立っているのもやっとの状況で、シャッターを押すのは一苦労。これちゃんと撮れてるんか?
スキーと宿泊装備はデポで戸蔦別岳方面を目指す。が、雪は部分的に意外と深い。これスキーが正解だったか?が、吹きだまり以外はクラストしているので微妙な所。ワカンで暴風と新雪と格闘しながら何とか前進する。
一九六七峰の頂上に出るとようやく少し風が落ち着いた。ここまではポンチロロ川からの吹き上げがとにかくハンパなく、下山後に気がついたが右ほほにガッツリ凍傷をこしらえてしまった。天気が良いものだから油断して目出帽を付けるのを忘れてしまった。この暴風、冬型の最後っ屁と言ったところか。
今日は本当は幌尻岳までアタックする予定だったが、昨日思ったほど前進できなかったのでそこまでは行けないだろう。適当に行ける所まで行って引き返す事にする。
一九六七峰の先の岩場は左は雪の深い急斜面。右は氷化した急斜面で、一旦行ってみるが下の方がかなり急で引き返す。出来るだけ真ん中の岩の合間を縫って通過するのが正解。一部バックステップで下る。
その先は戸蔦別川十ノ沢カール源頭の広い斜面状の尾根。適当にショートカットしながら進む。北戸蔦別岳とのコルの手前にも岩場はあるが気になるほどではない。
北戸蔦別岳にかけては起伏のない氷化した広い尾根で快適そのもの。カンカンアイゼンを効かせてあっと言う間に到着する。
ここから戸蔦別岳まで進むかどうか迷ったが、そこまで行くと時間的にも体力的にも微妙な所なのでここで引き返す事にした。
ベースに戻ると、やっぱりちょっと早かった。しかも、ポンチロロ川からの吹き上げは相変わらず強く、外でうだうだする余裕もなく、早々にイグルー内に籠もる。しかし、雪洞に比べて通気性のあるイグルー内は寒い。そして、酒も無いのでイグルー内で時間をもてあますのみ。これなら戸蔦別岳まで行っておくべきだった。そのうえ、この日は風が強くてのんびりする余裕が無かったので、お腹が痛い。
2017年03月12日(日) ピパイロ岳岩稜を越えて
長い、長い夜だった。今日も外は晴れ。風は昨日ほどではないが強い。全装、スキーを担いでピパイロ岳へ向かう。西峰を通過して岩稜帯へ入る。
適当に岩場を通過していき、例の切れ落ちた岩場に出る。ゲートに一旦装備を置き、空身で右側のトラバース工作へ行くが、最後の岩場が急斜面に微妙に新雪が積もっていて、その下が岩なのか氷なのか分かりにくくて恐い。どうしようかと何度か右往左往してみたが思い切りが着かない。
引き返し、岩のすぐ横を登ってみる。何とか行けそうなのでここから行く事にする。しかし、装備を担ぐとスキーが引っかかるし、実際登ってみるとまた急な岩があったりして一筋縄ではいかなかった。
この核心部を過ぎると、難しい所は無くなる。細い雪稜にアイゼンを効かせてピパイロ岳に到着する。
ピパイロ岳へはスキーのトレースが着いていた。ここからはスキーに変えて進む。コルまで意外と良い斜面が続く。シールを外せばけっこう楽しめるだろう。コルからは適当にトラバースなどしつつ、トレースも有効に使わせてもらって進む。
伏美岳手前の Co1640 の尾根分岐に雪洞跡があってここからトレースが新鮮になった。先行者はここに泊まったらしい。
最後に急な尾根をがんばって伏美岳に到着。
伏美岳からシールを外していざ滑走。だが、ちょっと時間が遅すぎた。高く上がった太陽に雪が溶け始め、滑走面にへばりつく。2度ほど途中で雪を剥がす。
先行トレースは夏道沿いか、小屋方向へ消えていたがこちらは真っ直ぐ末端へ向かう。下部はさほど雪の粘りもなくそれなりに楽しめた。
林道に出ると、ばっちりトレースが着いていてありがたく使わせてもらう。崩壊林道の通行は雪頼みの所もあるので、そろそろこのルートに行けるのも終わりかな。いつも人で賑わうゴールデンウィークも今年は静かそう。