- 目的
- 士萬山南東面直登沢・トヨニ岳南峰南面沢遡行
- 日程
- 2014年07月29日(火) - 31日(木)
- 山域
- 南日高
士萬山とは、野塚岳西稜にあり、日高幌別川の支流シマン川の源頭に位置する山である。地形図などへの山名の記載はないが、三等三角点が設置されてる。この界隈のおおかたの沢は遡行し尽くしたための、いわば重箱の隅をつつく様な計画だったが、6月に訪れた歳には増水もあって登れない滝があったための再訪となった。
行程
2014年07月29日(火)
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
11:55 | 晴 | 林道入口 | 出発 |
13:45 | 林道終点 | 入渓 | |
14:35 | Co370 | C1 |
今日は林道歩きと下流部のアプローチのみの予定だ。日が高くなってから苫小牧を出た。
まずは野塚トンネルの北側に自転車を残置する。野塚トンネルは補修工事が行われており、その影響で翠明橋公園の水が使えなくなっていた。道を戻り、メナシュマン林道入口の国道対岸に車を残置する。
林道を歩き始めてすぐに、アオダイショウににらみつけられる。うわっ。アオダイショウでも道のど真ん中を塞いでたらドキッとするわ。夏真っ盛りの真っ昼間の林道歩きは堪える。しばらく行くと、道有林のネズミ調査の人達が通り過ぎていった。あ、乗せてくれないんだ・・・。ま、歩きますとも。ネズミ調査の人達は入渓地点近くまで行っていた。
Co310 の林道終点で入渓する。 Co340 付近から沢は小規模なゴルジュとなって、滑滝と淵が連続している。特別難しい物はなく、全てへつって通過する。
二つの大岩によって堰き止められ、三条の小滝となったところで、ゴルジュの半ばではあるが、小さな河原があって、イワナが釣れそうなので天張ることにする。
イワナの釣果はそこそこ。サイズはイマイチ。7~8尾は釣ったが、1尾を刺身に、3尾を塩焼きにして残りはリリースした。
2014年07月30日(水) 士萬山
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
03:40 | 晴 | 起床 | |
04:55 | 出発 | ||
06:05 | Co520 | ||
09:45 | 士萬山 | ||
12:30 | ソガベツ川 Co365 | C2 | |
士萬山南東面直登沢
天場すぐ上の樋状の滝は右岸を巻く。直登沢出合は快適そうな河原で、薪も豊富にある。やっぱりここまで来た方が快適だったかな。
直登沢に入るとすぐに切り立った壁に挟まれたゴルジュ状になる。ゴルジュはどんどん深くなり、天馬街道から入渓する沢としてはピカイチの暗さである。
狭い廊下を直角に曲がって出てくるハングした滝は左岸から小さく巻く。
2つほどツルツルの滝を右岸から小さく巻く。一瞬、直登を試みようかと思ったが、核心の滝のために体力を温存する。
Co460 で沢は一端少し開け、正面のルンゼが 100m ほどの滝となって合流するのを見て左に曲がるとふたたびゴルジュとなる。
釜を持って取り付けない滝を右岸から高巻くと、奥に核心の斜瀑が見えてくる。
この滝は、上部にチョックストンがあり、水量は前回ほどではないが、落ち口で奔流して落ちてくる。この滝を高巻くとすれば、かなり下流まで戻って、数時間の高巻きとなりそうである。前回来た時は水流が多くてとても落ち口を突破できそうになかったので、諦めてここで撤退している。
下部はツルツルの滑滝で、フリクションは効きそうにない。しばらく観察し、右岸からチョック下に上がりそこから水流に抜けることにする。
右岸の凹角にとりつくと、ホールドは小さく、効きが悪くスリップして3mほどの高さから振り出しに戻る。ツルツルの滑り台状なのでダメージはない。
気を取り直してもうちょい左のカンテ状からとりつく。凹角をトラバースし、水流沿いに中央へ向かいチョック下に上がる。
チョック下に詰まっていた、子チョックをホールドにしようとつかむと、スコッと抜けた。ぉぃぉぃ。更に他の子チョックをつかむと、こちらも抜けてしまった。頼りにしていたチョック下のホールドがなくなってしまった。
仕方がないので、もはや水流内にホールドを求めるしかない。水流の中には小さいが効きは確かなホールドがある。顔面にもろに水圧を浴びながら水流の中を進む。ザックが若干チョックストンに引っかかって手間取ったが、さほど難しくなく滝の上に出た。
さあ、これで核心は終了。と思ったらさにあらず。深い函の中にツルツルの滝が続く。
幸か不幸か2段目には左岸に流木がかかっていて、これを使って滝の上に出る。おそらくこの流木がなければ相当苦労するだろう。
この沢の真の核心は3段目の滑滝だった。上部は上に行くほど傾斜のきつい滑り台状で、ツルツルに磨かれて足場になりそうな物は何もない。クラックも逆層で、へつっていくのも厳しそうだ。ハーケンをベタ打ちで A0 トラバースと言うのも考えられるが、フリーソロでそれをやるか。
禁じ手として、右岸にかかっている丸太を動かしてそいつで登るか、なんて考えたが、当然のごとくビクともしなかった。
結局、右岸の岩壁を攀じって高巻くしかなさそうである。しかし、これも決して良くない。
垂直のルンゼ状を登るが、ホールドが乏しい。何とか手の届いた灌木にシュリンゲをかけ、セルフビレイを取りながら無理矢理体を上げる。なんとか灌木帯に上がり、滝の上に降りる。
滝の上から見下ろしてみても、やはりツルツルである。岸は一気に低くなり、ひとまず核心は抜けた。
Co530 の三股状は左股は樋状の滝となって合流し、右股は小さなルンゼ、本流は小滝となって左に屈曲している。
屈曲した先はふたたび岸が高い函となって突き当たりには直瀑が落ちてくるのが見える。
これはふたたび苦労させられるのか、と思ったが、左岸のバンド沿いが意外と簡単に登れて、落ち口へと抜けた。
小滝が続くが、デブリが多く荒れ気味である。
Co660 二股は、直登沢は右岸から滝となって落ちてきて、右股も先で数段の滝になっている。
直登沢の滝は右岸から直登できるかと思ってとりついてみるが、ヌルヌルが激しく、なんだか登っても楽しそうではないので、止めて巻くことにする。
左岸の草付きから巻き始める。途中からカンテ状を越えて水流に戻れるかと思ったが、やはり水流沿いは悪そうである。諦めて左岸岩壁を巻き続けるが、傾斜もきつくなって、植生も乏しく意外と悪かった。
この滝の先は小滝のみで、徐々にガレが増え、ブッシュに覆われ始める。沢型は上部まで続いているが、意外と早くに笹に覆われ、1時間以上の藪漕ぎを強いられピークに出た。
ピークは平坦で、最高点は何処かよく分からず、当然三角点も見つからなかった。 PM2.5 の影響か、天気は良いのに霞がかったようで、周囲の山々もよく見えなかった。
士萬山北面直登沢
ソガベツ川へ下る。北斜面はびっちりと笹に覆われている。標高 100m 以上下ってようやく沢筋が出てきた。
しばらくは涸れて苔むした沢が続く。
Co800 付近でようやく崩れた感じの涸滝となって、水がわずかにしみ出している。
苔むした渓相は水流が出ても続き、滑って歩きづらい。小滝は幾つか出てくるが、問題なく通過できる。
Co600 付近から滑滝が続いているが、全体にデブリが多く荒れ気味だ。
Co480 二股からは沢は平坦になり、大量のデブリで覆われている。
2014年07月31日(木) トヨニ岳南峰
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
04:00 | 曇 | 起床 | |
05:20 | 出発 | ||
08:15 | Co900 三股 | ||
10:45 | トヨニ岳南峰 | ||
14:35 | 国道 | ||
15:20 | 林道入口 | 下山 |
トヨニ岳南峰南面沢
トヨニ岳南峰南面沢は、2006年に一度下降しているが、その時はまだ雪渓が多く、大部分が雪渓の下だった。
直登沢出合へと本流を下る。直登沢出合は三方函状になっている。
今日はなんだかどんよりと曇り空で、暗いゴルジュが余計に暗い。
ゴルジュ状は続くが、滝と呼べる物は Co380 の滑滝だけ。これは右岸をさくっと直登する。
Co570 を過ぎると、ふたたび沢幅が狭まってくる。
Co610 にチョックストンのたきが出てくる。チョックストンの両側から水流が落ちてくるが、右は少なく登れそうだ。シャワーを浴びながら滝に突っ込む。さほど難しくないように見えたが、ヌルヌルで2度ほどスリップする。微妙なバランスで突っ張りを効かせて登り切る。このチョックストンは2006年の下降時には雪渓の下だったようである。
Co660 二股では、 P1251 から流れてくる右股の奥には 50m ほどの大滝が落ちているのが見える。
本流の左股は、地形図通り高い壁に囲まれた函状になるが、ほぼガレに埋められている。
Co850 にふたたびチョックストンの滝が現れる。実に今山行3度目の窒息シャワーで右岸の水流を直登する。これも前回は雪渓下だったようだ。
このあたりから周囲はガスに包まれ、 Co900 三股ではすっかり視界がなくなってしまった。
左はガレ沢、右は大きな滝、中は2段の滝になっている。2006年のかすかな記憶を頼りに中股へ進む。
1段目は左岸からとりつく。草の生い茂る中のクラックを利用して直登する。
2段目は右岸を直登する。落ち口付近が垂直で越えられないので、右岸の岩場に少し逃げた。
この滝を越えると、水が一気に涸れて高い岩壁に囲まれた突き当たりとなる。あれ?前に来た時こんなの有ったっけ?(実際にはあった)このあたりの記憶が全く無かったので、不安になって右岸の尾根を乗っ越して左股の方を覗いてみたが、どうやら間違えてはいなさそうだ。
そのまま尾根を巻いて岩壁の上に出ると、ガレの詰まった乾いた沢型が続いていた。
相変わらずガスが濃くて周囲の様子はよく分からないが、出来るだけ深い沢型を辿っていくと、V字に切れ込んだルンゼ状となっていく。
左岸に高い壁を見て、お花畑の斜面を詰めると稜線に出た。
稜線上はシカ道が断続していて、藪漕ぎの苦労はない。南峰はくつろげるスペースは無いので、さっさと東の肩に下る。
トヨニ岳南峰南東面直登沢
南東面直登沢を下るのはもう何回目になるかな。この沢の上部の荒涼とした景色は嫌いではないが、そのかったるさは如何ともしがたい。
すぐに続くこの沢最大の滝は、ラッペルしようかどうか迷ったが、やっぱり左岸のバンド沿いにクライムダウンする。
次のチョックストンは、捨て縄がかかっていたので、それにシュリンゲをかけて下る。シュリンゲは回収用シュリンゲを使って回収した。
気温がどんどん上がって、虫がまとわりつく。ブヨは虫除けである程度撃退できるが、シラミバエのウザさと言ったらどうしようもない。
ようやくトンネル入口に到着し、自転車を回収する。自転車で走る準備を整え、工事の警備の人に一声掛けてトンネルの中に入る。
工事中のトンネルの中でも車(特にトレーラーやダンプ)はものすごい勢いで通り過ぎていく。
トンネルを抜けて、一気に下る。あっという間に林道入口に到着する。ドアを開けて中から出てくる熱気を気持ちよく感じる。今日は激しいシャワーを浴びて、上部では天気がイマイチだったので、体の芯が冷えてしまっていたようだ。
雑感
メナシュマン川は、下流域から中流にかけてはこの規模の沢としては申し分の無い美しさと楽しさだが、入渓までの林道の長さと、上部の詰めのかったるさが如何ともしがたい。林道の鍵が借りられるのなら、核心のゴルジュまでの往復をする程度なら利用価値が高まるだろう。トヨニ岳南峰南面沢は、前回は雪渓が多くて全貌がよく分からなかったが、結論としては遙々出かけるほどの物は出てこなかった。