吹雪の原始ヶ原で得た物は

ふ~ちゃん
目的
春合宿 裏十勝原始ヶ原周遊
日程
2013年03月08日(金) - 14日(木)
山域
十勝連峰

ワンゲルの現役部員二人と、原始ヶ原に一週間こもってきた。下ホロ、境山、前富良野岳と登る予定だったが、入山から下山までずっと天気が悪く、仕方なくトウヤウスベ山でお茶を濁して帰ってきた。行動しているよりも寝ている時間の方が多い山行になってしまった。今年は本当に天気に恵まれない。

行程

2013-03-08
東室蘭~富良野~布礼別~ニングルの森管理棟 C1
2013-03-09
C1~原始ヶ原~シーソラプチ川 C2
2013-03-10
停滞 C3
2013-03-11
C3~境山南西尾根 ΩC4
2013-03-12
C4~境山(途中撤退)~Ω撤収~五反沼 C5
2013-03-13
C5~トウヤウスベ山~原始ヶ原~ニングルの森管理棟 C6
2013-03-14
C6~布礼別 下山

予定

2013-03-08
東室蘭~富良野~布礼別~ニングルの森管理棟 C0
2013-03-09
C0~原始ヶ原~シーソラプチ川 C1
2013-03-10
C1~下ホロカメットク山~シーソラプチ川 C2
2013-03-11
C2~境山~シーソラプチ川奥二股 C3
2013-03-12
C3~原始ヶ原 C4
2013-03-13
C4~前富良野岳~二ノ~布礼別 下山
2013-03-14
予備日
2013-03-15
予備日

メンバー

C.L
ササオ
S.L
ふ~ちゃん
E
アスカ

装備

2013年03月08日(金) ニングルの森は遠かった

今日は現役二人が鷲別から青春18きっぷでやってきて、苫小牧で合流する予定だったのだが、電車に乗ったはずの時間を過ぎても連絡が無いので、こちらから確認のメールを出すと、予定の電車に乗り遅れて特急で白老に向かっていると言う。なんだかよく状況がつかめないが、白老で予定の列車に乗り換えるというので、とりあえず予定通り苫小牧駅に向かう。久々の長期山行の荷物は猛烈に重い。今回は、布礼別登山口のニングルの森管理棟という山小屋を経由する予定なので、コンプレッションダッフルという巨大なバックにピッケルザック毎突っ込んで搬送する。このバック、丈夫で使い勝手が良いのだが、残念なことに廃番となっている。

苫小牧駅で現役と合流して、事情を聞くと、部室を出て歩いて駅を目指していたら、路面がツルツルで電車に間に合いそうになかったので、たまたま通りかかったバスに飛び乗ったら、思ったのとは違う方向へ向かい、電車に乗り遅れてしまったらしい。前日、部室を出る時間を聞いて、その時間で大丈夫かと念を押したのだが、案の定やらかしてくれたってわけだ。

何はともあれ、電車に乗り込み富良野を目指す。それにしても、現役二人の荷物が異常に多い。特にアスカは、下山後、実家に帰るからと秀岳荘バックにいっぱいの着替えを持ってきている。しかも、買い出し時に忠告したにもかかわらず、鍋をするとか言って、練り物やら白菜やらと食料が大量だ。たしかに、山中で使わない装備は小屋にデポ出来るし、ピークアタックはアタック装備で行く予定なので、重たいのは天場までの移動だけだが、ちょっと舐めすぎだと思われる。それから、電車での移動中はさすがに兼用靴を履いているわけにはいかないので、アプローチシューズを履いて、兼用靴を担がねばならない。これはなかなか馬鹿にならない。

ゲソ丼[image/jpeg:151kB]
岩見沢で小もろのゲソ丼を食らう。

途中、岩見ゲソ丼の儀式(通称ゲソアタック)を行い、15時頃に富良野到着。今日はやけに暖かくて、富良野も雪が溶けて、地面はびちゃびちゃだ。現役二人がフラノマルシェニングルの森管理棟の鍵を借りに行き、今夜と明朝の食料を買いに行くついでにビールを頼んだら発泡酒を買って来やがった。まったくぅ、使えないヤツらめ。

大慌てて自分でビールを買いに行き、サッポロクラシック2本を買って麓郷行きのバスに乗る。この日常生活の中に異様な出で立ちで潜り込む違和感というのは何度やっても慣れない物だ。布礼別でバスを降りる。料金は500円。

装備を調えて、原始ヶ原登山口を目指す。アスカは重たい荷物に苦しめられ、足取りが重い。はじめの丁字路から先が除雪されていなかったので、そこからスキーを履く。日没となったので、ヘッデン行動。原始ヶ原入り口につく頃には真っ暗で、現在地確認もままならない。「原始ヶ原入り口」という大きな看板もこのときは気づかなかった。しかも雪が降り始めた。

この、原始ヶ原入り口までは我々が歩いてきた方向とは逆方向から除雪が入っていた。さらに、何かの工事が行われているらしく、この先の林道も除雪が入っている。

除雪は Co519 まで入っていたが、この頃には猛吹雪になり、真っ暗闇の中で現在地も主線林道の方向も確認できない。少し周りを歩き回って、砂防ダムへ向かう支線の入り口を発見し、半信半疑ながら現在地を確認する。

正直この状況でこのまま進むのは危険なので、一応リーダーのササオにどうするか確認したら、このまま進むと抜かしやがる。こいつ、自分では現在地もわかってないくせに何言ってやがるんだ。と思いつつ、そのまま支線へ進む。


吹雪の中林道をさまよう[image/jpeg:153kB]
べた雪の吹雪の中、林道をさまよう。

ここで一発森の中をさまよってやれば、いろいろと学ぶ良いチャンスなのかもしれないが、いかんせん、読図の天才なもんで、さくっと砂防ダムの横を抜けて、主線林道に復帰してしまう。行くと言った時点で、じゃあ、ササオ任せたとか言っちゃえば良かったかな。まあ、オレだってこんな雪の中一晩中さまよい歩くのは嫌だし。

雪はますます強く降ってきて、克つベタベタだ。全身やスキーに雪がまとわりつき、ラッセルがままならない。何せ真っ暗闇で現在地の確認もままならない。小屋が見つかる確信もなく、「小屋が見つからなかったらどうする?」なんて冗談も冗談でなくなりかけた頃、ようやく暗闇の中に小屋を発見した。

山小屋としてはあまりにも立派すぎる暖炉に火を入れ、ずぶ濡れの体を乾かす。遅い夕食はカップ麺だけだが、いつもは大食らいのアスカが疲れすぎて食欲がないらしい。せっかく担いできたビールで乾杯してから眠りにつく。どうやら明日以降も荒れ気味の天気らしい。

2013年03月09日(土) 原始ヶ原から見える物は雪と樹と

ニングルの森管理棟[image/jpeg:120kB]
快適なニングルの森管理棟を後にする。

アスカはまだ疲れがとれていないらしく、出発直前に胸焼けがするとか言っている。少しだけ横になって、大丈夫だというので出発する。

予報通り朝から雪。林道を進むと、地形図には記載されていない分岐が二度ほど出てきたので、両方下を行く。下山後にウォッちずで確認した最新の地形図には沿いを行く道が記載されているが、それともまた違うようである。

途中からは道沿いらしき中にもダケカンバが生い茂り、歩きにくい。20年前はこんなことはなかったような気がするが、もしかしたら上に向かう林道に切り替わっているのだろうか。


三ノ沢右岸[image/jpeg:126kB]
布部川三ノ沢右岸付近を行く。

不動の付近で現在地を確認すると、ササオは二ノを越えた付近を指す。いつの間に沢を越えたんだ。三ノ沢出会いのヘアピンカーブを過ぎたところで再び現在地を確認すると、今度は右岸にいるはずなのに左岸を指す。ササオはもうちょっと地形図の読み込みと読図の訓練が必要なようだ。一方アスカはセンスの良さを見せ、ほぼ正解の位置を示す。


しっかりと読図をしよう[image/jpeg:230kB]
原始ヶ原の第一湿原で読図をする二人。

ここからピンクテープが点々と打たれていた。三ノ源頭を抜けて原始ヶ原入り口湿原に出た。ここから Co1083 コルまでコンパスを120度に切って進む。雪の原始ヶ原で見える物はひたすら雪原とエゾマツ林のみだ。


原始ヶ原[image/jpeg:112kB]
真っ平らな原始ヶ原を進む。
シーソラプチ川を渡る[image/jpeg:100kB]
シーソラプチ川を渡る。

渡渉は五反沼まで問題なし。五反沼から流れ出るは水が流れていたが、北側に回り込んで通過した。コルからコンパスを105度に切り替えてシーソラプチ川を目指す。シーソラプチ川は大きなブリッヂがあり、問題なく通過した。

台地に上がり、エゾマツの樹林内にブロックを積んで幕とする。今夜の食事は、例の練り物や白菜を使った鍋。っていうか、この練り物は実はおでんのセットで、おでんの出汁がついているのだが、わざわざ他に固形の鍋の素を持ってきている。ただでさえ荷物が重いというのに、こういうところで軽量化の工夫もしないとは全く意味不明だ。しかも不経済だろう。


テントに入る[image/jpeg:133kB]
天場設営を終えてテントに入る。

天気図を見ると、明日は大荒れの予感。天気予報も外出を控えるなどの脅しをかけている。明日は大いに停滞の予感がする。夜は晴れ渡り、星空となっていた。低気圧がくるのが遅れれば良いのだが。

2013年03月10日(日) 何でそんなに寝てられるのか

起床予定の4時になっても、現役二人はぴくりともしない。正直、この一年、自分より先に現役が起きた記憶がほとんど無い。もういい加減、寝起きが悪いなどと言う言い訳をしている場合でも無かろう。自分が起きなくても誰かが起こしてくれるみたいな甘えはきっと別の部分にも現れる。この件についてはちょっとむかついているので、今日は放っておくことにした。外は風もなく静かだ。

6時半を過ぎて、ようやくササオが目を覚ました。この頃には風が強く吹き、雪も降っている。「リーダー」ササオにどうするのか確認する。「停滞」するらしい。まあ、昨日あれだけ天気予報に脅されたしな。

天気図をとる[image/jpeg:207kB]
停滞のテントの中で天気図をとる。

トランプなどの暇をつぶす道具は何も持ってきておらず、酒の量も少なかったので、この日はひたすら寝ることとなった。ササオは暇だ暇だと言いながら、飯を食うとき以外はほぼ寝ていた。しかし、暇ならば、それまでの記録を書いたり、反省をメモしたり、明日のプランを練ったりとやることはいくらでもあるはずなんだけど、よくもそんなにも寝ていられるものだ。

2013年03月11日(月) リーダーの決断は

今日も朝から吹雪だ。ササオは下ホロに行くことはあきらめたらしい。午後からシーソラプチ川の二股に天場を移動するなんて悠長なことを言っているが、アスカが9時の天気図を書いている間も、シュラフにくるまったまま動こうともしない。結局、行動を開始したのは、私がどうするのかと決断を促してからだった。

天場を撤収[image/jpeg:180kB]
二晩お世話になって天場に別れを告げる。
シーソラプチ川左岸斜面[image/jpeg:172kB]
シーソラプチ川左岸斜面を進む。

そんなわけで、シーソラプチ川の左岸斜面をひたすらトラバースして、二股を目指す。 P1575 から西に延びる尾根筋に出て、二股に降りる。そこから中間尾根の斜面にとりついたつもりだったが、登ってみたら右岸尾根状だった。オレとしたことがうっかり方角の確認を怠った。


シーソラプチ川右岸尾根[image/jpeg:72kB]
シーソラプチ川右岸尾根を進む。
シーソラプチ川左股[image/jpeg:155kB]
シーソラプチ川左股の谷を渡る。

まあ、たいした支障は無いので、このまま尾根を Co1350 付近まで進み、いったんに降りて中間尾根に登り返す。場所によっては少々雪崩の危険を感じる。

今日の天場はテントにするのか、雪洞にするのかササオに確認すると、じゃあ雪洞にしますかみたいな返事が帰ってきた。計画段階ではそんな話はしなかったので、ちょっと意地悪な質問ではあったのだけれど、リーダーであるならばそのくらいプランはあってしかるべきなのだ。もっとも、この山行はあくまで私の計画で、ササオのリーダーというのも現役の活動ですよという外部へのポーズという側面が強く、彼にはおそらくリーダーとしての自覚はあまりなのだろうけど。


雪洞[image/jpeg:117kB]
雪洞に入る。

Co1380 付近の窪地に横穴を掘り、雪洞を作る。私がちょっとお遊びで入り口をブロック式イグルーにしようとしたがうまくいかず、余計な時間を食ってしまった。もうちょっと行動開始の決断が早ければ、余裕を持って遊べたんだけどねえ。

2013年03月12日(火) ドジッ子リーダーはやっぱりドジだった

今日の予定起床時間に雪洞の外に出ると、ものすごい風で行動できる感じではない。入り口の隙間から風が吹き込み、みんなの足下にはうっすらと雪が積もっている。ササオの寝床には風がけっこう吹き付け、一晩中寒かったらしい。だから入り口は雪ブロックでふさげば良いのに。

ひとまず、1時間おきに外を確認することにして待機する。6時半ころにようやく活動できそうになったので、アタック装備で境山を目指すことにする。

雪洞入り口[image/jpeg:81kB]
雪洞の出入り口。
境山を目指す[image/jpeg:132kB]
出発時はまだ穏やかだったのだが・・・。
ホワイトアウト[image/jpeg:57kB]
すぐにホワイトアウトし始める・・・。

シュラフなどの装備はそのまま雪洞に残置し、入り口を見失わないようにデポを打って出発する。標高差20mおきにピンクテープを打っていく。出発時は割と穏やかだったが、すぐに風が吹き始め、ホワイトアウトしはじめる。 Co1450 を過ぎると樹木が無くなるので、笹デポにするが、雪面が堅くてなかなか刺さらない。多少重くてもすべて金デポにすべきだっただろうか。最近流行のグラスファイバーのデポはこういう雪面でも刺さるのだろうか。


アイゼン装着[image/jpeg:103kB]
アイゼン装着を装着するものの・・・。

Co1500 を過ぎると、スキーではきつくなってきたので E.P に変えることにした。ササオがアイゼンをつけるのに手間取っていたので、見てみると、彼の持ってきたアイゼンは樽井の大きな靴に合わせてあるはずのアイゼンで、ササオの靴にはサイズがあっていない物だった。ちゃんと合わせたんですけどみたいな言い訳をしているが、事実合っていないので、間違えて持ってきたことは明白だ。

この愛すべきドジッ子は肝心なところでほんとにやってくれるワイ。心の大きな人間ならば、笑い話で済ますのだろうが、ずっと悪天続きでフラストレーションもたまっており、ついつい語気を荒げてしまう。

とは言え、サイズの合っていないアイゼンが外れて滑落でもされたらコトだ。風もますます強くなり、この先ピークまでたどり着ける気もしないので、1ピッチも進んでいないがここで撤退することにした。もしも天気が良くても今回はアイゼンピッケルの必要な場所には行けなかったよベイベー・・・。


雪洞に戻る[image/jpeg:112kB]
雪洞に戻って撤収する。

そんな訳なので、今回はアイゼンの必要の無いトウヤウスベ山にアタックして帰ることにした。雪洞を撤収して、五反沼を目指す。昨日渡った谷を渡り、少し西へトラバースして二人に現在地を確認すると、アスカは相変わらずほぼ正解の位置を指すが、ササオは期待通り見当違いの場所を指す。まあ、リーダーが読図を苦手でも、後輩がしっかりしていれば何とかなるさ。私の先輩のコ●●●●さんやイ●●さんのように。122点と珊内川を間違えたって、無事に下山する根性さえあれば良いのさ。


五反沼へ[image/jpeg:93kB]
五反沼への緩斜面をだらだらと進む。

ここからシールを外して五反沼めがけてだらだらと下る。シールを外しているので、登りかえしがありそうなところで、高度を下げないで同じコンタラインで進めよと指示している矢先から、ササオは低い方へと進もうとする。まあ、そんなことで別に死にやしないので良いのだけれど、出来るだけ余計な体力を使いたくない苛ちな OB は、ついつい後ろからあーでもないこーでもないと言ってしまうのです。


五反沼[image/jpeg:134kB]
五反沼のほとりに到着した。

最後の斜面でちょっとだけスキーを楽しみ、五反沼のほとりにテントを張る。明日はトウヤウスベ山にアタックして、管理棟に泊まり、翌日下山することと決まったので、急に食料が余裕が出来た。こんな事なら、停滞の時にもっと食べておくんだった。しかし、相変わらず酒は足りず、ついにちびちび飲んでいた酒も底をついた。どうやら明日も明後日も雪らしい。

2013年03月13日(水) 登頂の既成事実を作り快適な小屋へ

撤収[image/jpeg:96kB]
天場を撤収する。
トウヤウスベ山を目指す[image/jpeg:58kB]
トウヤウスベ山を目指す。
ホワイトアウト[image/jpeg:30kB]
上部はホワイトアウト状態だ。
トウヤウスベ山[image/jpeg:61kB]
トウヤウスベ山に到着。

今日はどんな天気でもとりあえずトウヤウスベにアタックすることにしていた。五反沼の天場を後にして、トウヤウスベに向かう。上に行くほど雪が強まり、 Co1300 を過ぎるとほぼホワイトアウト。 Co1390 の頂稜からはほぼ真っ平らで、どこがピークかわからないが、適当にピークと決めて、記念写真を撮る。


北斜面[image/jpeg:92kB]
トウヤウスベ山北斜面を滑る。

風の中、羊蹄山から持ち越しだった P-Can を食べ、シールを外して、北尾根を滑る。表面の雪質は良いが、入山日の物と思われる固い層に時々足が取られてしまう。滑るだけで、 5cm ほどのところに弱層を感じられる。この日は上ホロで雪崩事故があったらしいが、それもうなずける雪質だ。


アスカ[image/jpeg:130kB]
颯爽と滑るアスカ。

ちょっと固い層に翻弄されたが、そこそこスキーを楽しんで原始ヶ原に降りた。心配したササオも、当然遅いけれど、足手まといと言うほどもなく、そこそこ安定して降りてきた。この斜面は雪質さえ良ければなかなか良い斜面だ。アプローチは長いが・・・。原始ヶ原を横断するために、シールをつけ直すが、アスカのシールの付きが相変わらず悪い。これではシールを何度も付け外しするような山行では全く役に立たないだろう。


五反沼からの沢[image/jpeg:127kB]
ササオはここが沢だと言うことに気づいていなかった・・・

一端、真北へ向かい、布部川の表示のある筋の左岸を目指す。そこで、現在地確認をすると、アスカはまあまあ惜しい位置だったが、ササオは五反沼から流れる沢の左岸を指す。さっき出発してスグに川を渡ったことに気づいていなかった・・・。どうやら彼はまだまだついてくることに精一杯で、自分の足下しか見えていないらしい。


湿原[image/jpeg:57kB]
湿原を行く。

正直、この辺は平らすぎて、私も正確な現在地は把握できないが、とりあえず当たりをつけて三ノを目指す。往路では何度か大きな湿原を通ったが、ひたすらエゾマツ林の中を進む。往路とは少しずれていることは間違いないようだ。見当が違っただろうかと思い始めた頃、大きな湿原に出た。ほぼ南北に延びる大湿原の北の外れ近くで、湿原の規模や形から、おそらく Co1066 の表示のある地点付近で間違いないだろう。

ここで現在地を確認してみると、さすがのアスカも見当違いの場所を指した。私が正解と、その根拠を教えると、地形図がそんなに正確な物なのかと、半信半疑だったようだが、答えはすぐに出た。コンパスを切り直して、三ノ源頭を目指すと目論見通り、谷筋が現れ、そこを越えると、目印のピンクテープが現れた。


三ノ沢右岸[image/jpeg:142kB]
三ノ沢右岸に出た。

少し進んで、私は一人シールを外し、往路と同じルートをトラバースして下る。アスカは一度外したらもう二度とつけられないだろうからと、ササオはシールをつけたままの方が早いからとそのまま進む。二ノで一端シールをつけ直し、登りであった二つ目の分岐までトラバースして再びシールを外す。一つ目の分岐に出ると、上の方の道へ向かう真新しいトレースがあった。どうやら、今日アタックした人がいるらしい。トレースのおかげで急加速して小屋に着いた。


小屋[image/jpeg:166kB]
小屋で装備を乾かす。
暖炉[image/jpeg:230kB]
立派すぎる暖炉。

なんだかんだで、結局今回は食料も燃料もかなり余ってしまった。濡れた衣類を暖炉の周りで干しながら、余った行動食を食いまくる。しかし、酒がないのが残念すぎる。ササオはマヨネーズを使ってポップコーンを作り始め、マヨポップと言って一人はしゃいでいる。しかし、その試みはいつか見た光景。私は結果を知っている。案の定出来上がったポップコーンは炭となった卵成分にまみれていた。まあ、食えないことはない。

それにしても、これだけ焦げたのに、お湯を少しわかしただけで焦げ付きはほとんどとれてしまった。このエバニューのアルマイト製コッヘルは非常に優秀だ。チタンのヤツはちょっとした熱ですぐに焦げ付いてダメだが・・・

ところで、コッヘルと言えば、私の愛用している個人用コッヘルがよれてきたので、そろそろ買い換えたいと思っていたのだが、当のモリタコッヘルはすでに倒産しており、同じ物が見つからないと思っていたら、どうやらユニフレームという会社がモリタコッヘルの一部を引き継いで復刻しているらしい。「山クッカーS」と言うのがどうやらそれらしいので、今度買ってみようと思う。このコッヘルは一人ないし二人で山に行くのに非常に使い勝手良くて手放せない。他社の、ガスカートリッジが入るみたいなヤツのコンセプトはわかるんだけど・・・うーんいまいち使いづらいんだよね。

2013年03月14日(木) 最後の最後まで吹雪だった

小屋を片付ける[image/jpeg:227kB]
小屋を片付ける。

今日はバス停までの林道を下るだけだが、往路で少々手間取ったので、9時台のバスに間に合うべく、早めに起きて小屋を後にする。幸いなことに、昨日からの降雪は少なく、前日のトレースが残っていたので思ったよりも順調に進む。


林道を歩く[image/jpeg:142kB]
林道を歩く

しかし、やはり雪が激しく降り始め、林道の除雪終点地点付近では今回一番の降り方になった。除雪終点から本線への曲がり道は、松林の樹幹が少し広くなった程度で、夜間でなくとも見つけるのは難しそうだ。


バス停[image/jpeg:124kB]
布礼別のバス停でバスを待つ。

布礼別のバス停に着くと、上空は晴れてきたが、十勝連峰は相変わらず雲の中だ。荷物を整理しながら1時間半ほどバスを待つ。時刻表通りにやってきたバスに乗り、アスカの iPhone で JR の時刻を調べながら富良野へ向かう。

富良野で、銭湯や食事の出来るところを調べるが、どちらも11時を過ぎないとあかないと言うことなので、すぐに富良野に向かう列車に飛び乗り、先のことは列車の中で考えることにした。しかし、その前にフラノマルシェに小屋の鍵を返しに行かないといけなかったのだが、すっかり忘れていた。オーミステイク。

そんなことは家に着いてから思い出す物で、のんきに列車の中で下山の祝杯を挙げる。川で列車を乗り換え、アスカの実家によってアスカの荷物を置いて、飯を食いに砂川の町をさまよい歩く。本当は1000円で食べ放題の銀座園という焼き肉屋に行くつもりだったが、どうやら休みやすく、近所のとんかつ屋に行く。ササオは値段の高さに目を丸くしていた。

アスカに銭湯を案内してもらいそこで別れ、ササオと二人一番風呂に入り、再び列車に飛び乗って帰路についた。

雑感

なんだか今回は始めから終わりまでずっとササオに小言ばかり言っていたように思う。そういえば、以前おやぶんに後ろから黙って見守って、本当にやばいときだけ何か言えば良いと言われた気がするが、苛ちな性格がつい口を滑らせる。そもそもササオは4年目とは言え、冬山は今シーズンから始めたばかりで、いわば経験は一年ボウズと同じなのだ。それも、俺たちの時代の一年生なんかよりずっと経験が浅いのだ。それでも、突然増えた一年生と部のために今年一年部長としてがんばってきたササオは立派だと思うし感謝している。

はっきり言って、今回のようなパーティ構成は危険だ。リーダーよりも目上の人間がメンバーにいると指揮系統がはっきりせずに、問題が発生することがあることを賢明な山屋ならよく知っているはずだ。本来、リーダーはパーティの全権限を掌握し、メンバーの安全を確保する義務があると思っている。だが正直、ササオにそこまで担わせる経験も知識も無い。だから、ササオに対する叱咤は早く独り立ちしてほしいとの一心と勘弁してほしい。

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