2020年07月24日空沼岳札幌岳縦走中の高校生救助の勝手な考察 2020年07月26日(日)

ふ~ちゃん

空沼岳での高校生パーティ救助の件でいろいろ言われてる事に少しうーんって思うところがあるので、自分の考えをまとめてみた。

報道情報

報道から得られる事実は以下の通り。(あくまで報道ベースなので誤りがあるかも)

  • 札幌工業高校ワンダーフォーゲル部引率教員2名生徒6名計8名パーティ
  • 23日(木)入山24日(金)夕刻下山予定
  • 空沼登山口~万計山荘(泊)~空沼岳札幌岳~冷水登山口
  • 小屋1泊装備
  • 24日16時頃縦走路途中で救助要請
  • GPSで現在地を特定し日没前に全員無事救助完了
  • 健康状態に問題なし

現場の概要

救助要請された現場は空沼岳札幌岳の縦走路のどこかで概要は以下の通り。

  • 距離は約7キロ程度
  • 整備された状態で健脚であれば2時間から3時間で歩ける距離
  • ルート上に水場はない
  • 標高は1000m~1200m
  • 植生の回復が早く数年で笹薮に覆われる
  • 確認できる直近の笹刈りは2013年
  • 現状は笹に覆われ全体的に藪漕ぎ状態である
  • コース分岐から札幌岳までは道がはっきりしている
  • 2014年頃の縦走記録では2~3時間程度
  • 最近の記録では5~6時間ほどかかっている

想像される救助要請までの行動

以上の状況から想像される当該パーティの当日の行動は以下のものであろう。

当該パーティは(行程を考えればできれば5時には出発したいものではあるが)遅くとも朝7時には万計山荘を出発しているはずである。最近の山行記録を鵜呑みにして参考にしていたとすれば、出発から冷水登山口までは9時間程度、遅くとも16時には下山できると見積もっていたはずである。笹刈り直後の記録であれば、6時間、13時には下山するはずである。

にもかかわらず、当該パーティは16時の時点でも空沼岳札幌岳縦走路の中途にいた。出発から既に9時間以上を経過している。

最近の記録でも空沼岳札幌岳間は6時間程度であるが、それらのほとんどは単独行か少人数での記録である。当該パーティは8人もの大パーティである。人数の多いパーティが藪漕ぎのような視界の効かない状況で最も遅い人のペースに合わせ、かつ前後がはぐれないように気を付けながら歩けば単独行の2倍3倍の時間がかかってしまうものである。よって当該パーティがこれほど時間がかかったことも不思議ではない。

この時点で、引き返す場合は当然これまでと同等の時間がかかるので日没までの下山は不可能であり、先に進む場合はどこまで藪が続くか不明であるが、これまで来た距離と残りの距離からかかる時間を計算して日没までの下山が不可能であると結論付け救助要請したのであろう。

救助要請の是非

安易に救助要請せずにビバークすべきだったとの声もあるが、計画は小屋泊1泊で十分なビバーク装備があったとは思えない。既に行動予定時間を過ぎていることから食料も希薄であろうし、ルート上に水場はないので水も尽きていた可能性もある。仮にビバークしても翌日無事に下山できるだけの十分な体力が残されていたか疑問である。

また、十分なビバーク装備なしに夜間に降雨にでもあえばそれだけで低体温死の可能性があった。(実際翌日、太平洋側では1日降雨であった。山中で降雨があったかは不明であるが、雲は厚くかかっていた。)

登山における行動はすべて自己の判断によって決定されるべきである。しかし、件のパーティは経験も知識も浅いすなわち子供である高校生と引率者のパーティである。そのような子供に、大学生や社会人パーティと同じ責任を負わせるのは酷であろう。ゆえに高校部活動登山は基本的には引率者の判断責任の下で行動が決定される。仮に計画行動の主体が生徒たちであっても、危機回避の最終的判断は引率者にゆだねられるべきである。自己で判断できない子供たちを引率者のミスのために命の危険にさらすべきではない。

よって、日没前にヘリでピックアップできるタイミング(ギリギリではあったが)での救助要請は適切であったものと考える。

事態を招いた考えられる要因と問題点

とはいえ、救助要請に至るまでの計画そのものと行動判断には問題点も多い。ここに至るまでに考えられる要因と問題点を列挙しておく。

  • 事前の情報収集不足
    • インターネットで直近のルートの状態を確認できる情報は出ているのになぜ確認しなかったのか?
      • 引率者がインターネットも出来ない?
      • 引率者はルートが整備されていたころに経験があって調べることを怠った可能性
    • 情報を確認したのに甘く見た可能性
      • 5~6時間の記録を見て十分行動可能と見積もった可能性
        • 記録の多くは単独または少人数の日帰りである
        • 当該パーティは経験の浅い高校生の大人数パーティであるためそれらの記録より大幅に時間を食うことを想定できなかったのか?
    • 引率者が登山素人で情報を正しく判断できなかった可能性

      高校のクラブ活動を教員に任せることの是非。

  • 注意喚起を無視

    登山口には縦走路の危険を知らせる看板があるらしいが、なぜそれを無視して決行したのか?

  • ビバークの準備、想定そのものがなかった
  • 引き返しの判断遅れ
    • 縦走路でヤブに入ったところですぐに時間の見積もりをできなかったのか
    • 藪は部分的なもので抜ければ距離的には十分下山できると考えていた
    • ガイドブック等のコースタイムを鵜呑みにした
    • 引率者の経験不足

言いたい事

  • 計画する時ネット見ろ
  • 高校部活の教員引率反対→プロを雇え
  • 計画、行動判断に問題があったことは確かだけど、救助要請したこと自体を(ましてや山をやる人間が)非難するのはなんか違うくね?

参照

https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/chiiki/sangaku/005-mountains_patrol_information/h31-pdf/12_0613_soranuma.pdf

Usertime : 0.07 / Systemtime : 0.05