空沼岳での高校生パーティ救助の件でいろいろ言われてる事に少しうーんって思うところがあるので、自分の考えをまとめてみた。
報道情報
報道から得られる事実は以下の通り。(あくまで報道ベースなので誤りがあるかも)
現場の概要
想像される救助要請までの行動
以上の状況から想像される当該パーティの当日の行動は以下のものであろう。
当該パーティは(行程を考えればできれば5時には出発したいものではあるが)遅くとも朝7時には万計山荘を出発しているはずである。最近の山行記録を鵜呑みにして参考にしていたとすれば、出発から冷水登山口までは9時間程度、遅くとも16時には下山できると見積もっていたはずである。笹刈り直後の記録であれば、6時間、13時には下山するはずである。
にもかかわらず、当該パーティは16時の時点でも空沼岳札幌岳縦走路の中途にいた。出発から既に9時間以上を経過している。
最近の記録でも空沼岳札幌岳間は6時間程度であるが、それらのほとんどは単独行か少人数での記録である。当該パーティは8人もの大パーティである。人数の多いパーティが藪漕ぎのような視界の効かない状況で最も遅い人のペースに合わせ、かつ前後がはぐれないように気を付けながら歩けば単独行の2倍3倍の時間がかかってしまうものである。よって当該パーティがこれほど時間がかかったことも不思議ではない。
この時点で、引き返す場合は当然これまでと同等の時間がかかるので日没までの下山は不可能であり、先に進む場合はどこまで藪が続くか不明であるが、これまで来た距離と残りの距離からかかる時間を計算して日没までの下山が不可能であると結論付け救助要請したのであろう。
救助要請の是非
安易に救助要請せずにビバークすべきだったとの声もあるが、計画は小屋泊1泊で十分なビバーク装備があったとは思えない。既に行動予定時間を過ぎていることから食料も希薄であろうし、ルート上に水場はないので水も尽きていた可能性もある。仮にビバークしても翌日無事に下山できるだけの十分な体力が残されていたか疑問である。
また、十分なビバーク装備なしに夜間に降雨にでもあえばそれだけで低体温死の可能性があった。(実際翌日、太平洋側では1日降雨であった。山中で降雨があったかは不明であるが、雲は厚くかかっていた。)
登山における行動はすべて自己の判断によって決定されるべきである。しかし、件のパーティは経験も知識も浅いすなわち子供である高校生と引率者のパーティである。そのような子供に、大学生や社会人パーティと同じ責任を負わせるのは酷であろう。ゆえに高校部活動登山は基本的には引率者の判断責任の下で行動が決定される。仮に計画行動の主体が生徒たちであっても、危機回避の最終的判断は引率者にゆだねられるべきである。自己で判断できない子供たちを引率者のミスのために命の危険にさらすべきではない。
よって、日没前にヘリでピックアップできるタイミング(ギリギリではあったが)での救助要請は適切であったものと考える。
事態を招いた考えられる要因と問題点
とはいえ、救助要請に至るまでの計画そのものと行動判断には問題点も多い。ここに至るまでに考えられる要因と問題点を列挙しておく。
- 事前の情報収集不足
- 注意喚起を無視
登山口には縦走路の危険を知らせる看板があるらしいが、なぜそれを無視して決行したのか?
- ビバークの準備、想定そのものがなかった
- 引き返しの判断遅れ
- 縦走路でヤブに入ったところですぐに時間の見積もりをできなかったのか
- 藪は部分的なもので抜ければ距離的には十分下山できると考えていた
- ガイドブック等のコースタイムを鵜呑みにした
- 引率者の経験不足