この時期は、本来現役のみんなを連れて十勝連峰を縦走する予定だった。だが、みんな膝が痛いだの年寄りみたいなことを言ったり、寮生は明徳祭祭実になって身動きがとれなくなったりして誰一人として都合が付かず、中止になってしまった。仕方が無いので、最近例の幻の湖が出現したという情報が流れていた、白雲岳へと一人出かけることにした。
大雪山で春スキーを堪能してきた。初日は風に吹かれてどうなることかと思ったが、二日目は必要以上のスカ天で、後半は雪が腐ってしまった。
空はすっきりと晴れ渡り、朝日が燦々と車内まで降り注ぎ5時過ぎには既に目が覚めていた。 6:30 に起床し、髪をとかしていると、タイミング良くかんちゃんがやってきた。とりあえず、愛山渓温泉への道を遡ると、ゲート前には既に2台の車が並んでいた。待つ事しばし、開発局の車は7時きっかりに上から降りてきた。
愛山渓温泉に私の車を残置し、かんちゃんの車に乗り換えて層雲峡温泉を目指す。上川のセブンイレブンで朝飯を買って、ロープウェイ下の駐車場に到着。荷台からザックを抱えおろしたときに、右腰に嫌な痛みが走る。まずい。
バンダナを忘れたため、ロープウェイの売店でバンダナを購入し、ロープウェイの片道切符を購入してロープウェイに乗り込むが、ザックを持つと、腰に激痛が走る。これはどうもこうもヤバいかもしれない。ごまかしながらリフトに乗って7合目まで到着するが、売店への階段を上るだけでも一苦労だ。これはとても縦走どころではない。
売店でしばし、話し合いの結果、かんちゃんとあめで黒岳凌雲にアタックして来てもらう事になる。私は売店で2人の帰りを待つ。待っているあいだ、なにやら店員のじいさんとおばさんが口げんかを始める。勘弁して欲しい。2人は3時間ほどで割と速く帰還。山頂付近の風が強く、凌雲岳は断念したらしい。
下りのために、スパッツとスキーを履こうとするが、腰を曲げようとすると激痛が走り自分でする事が出来ず、あめにつけてもらう。団装のいくつかをあめに持ってもらい、何とかロープウェイの駅までスキーで滑り降りる。なにからなにまで迷惑のかけどおしで申し訳ない。
車を回収するために、愛山渓温泉に直行。温泉には駐車場に入りきらないほどの車が止まっている。小さな温泉ももちろんぎゅう詰め。温泉を出て、愛山渓入口のドライブインで荷物を載せ替え、旭川のラーメン村の「天金」というラーメン屋で醤油野菜ラーメンを食す。あめの友人情報で、ラーメン村で一番美味しいと言う事だったが、そうでもなかった。まずくはないが、別に2度と食わなくても良い。
深川の道の駅でかんちゃんと別れ、雨を家まで送り届けて、そこで泊めてもらう。
A | B | |
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C.L | いぐ | こばP |
S.L | ふ~ちゃん | しみず |
M | ごとー | よねP |
M | おやぶん | とーの |
M | のぶ | だっしゅ |
時刻 | 場所 | 行動 |
---|---|---|
室蘭 | 出発 | |
上川 | C0 |
2つのミラと、電車に分乗して上川駅をめざす。小さなボディーに人と荷物がすし詰め状態はキツい。当時はまだ携帯電話など普及していない時代、無線機を使い、2台で交信する。例によって上川駅の横にテントを張る。
時刻 | 場所 | 行動 |
---|---|---|
09:15 | ロープウェイ終点 | |
09:55 | リフト終点 | 出発 |
11:00 | 黒岳 | |
11:50 | 黒岳石室 | |
13:25 | 北海岳 | |
15:10 | 白雲岳 | |
16:30 | 白雲小屋 | C1 |
こんなに早起きをする必要はなかったが、なにせ、田舎とはいえ、駅前なので、ちらほらと人の気配などもしはじめたので、いつまでも公共の場所でテントの中にいるわけにも行かない。天気もいいのでバスが来るまで外でうだうだと過ごすことにしよう。大雪山系が美しくそびえている。
層雲峡からは軟弱にも、ロープウェイとリフトを利用する。ロープウェイ終点ではシマリスと戯れたりして、完璧観光気分だ。ま、いっか。
程なく、雪渓が現われ、ぬるい雪面を交代でキックを刻んでいく。我々の刻んだキックを利用して、スキーヤーやら、当時はまだ珍しかったボーダーやらが追い抜いていく。すいませんとか、一言あれよ(▼▼メ)。
今年も好天に恵まれ、大雪の大展望に見とれながら白雲を目指す。白雲の外輪に着くと、そこには年に1週間見られるかどうかの、幻の湖があった。当時は、それほど幸運なこととは思わずに、「ああ、水がたまってら」ぐらいの、罰当たりな感想を漏らす。ここまで、あんまりのんびり歩いてきたもんだから、ピークで時間切れとなり、天気図の時間となってしまう。皆が白雲小屋を目指す中、私とリーダーだけ取り残され、幻の湖のほとりで天気図をとらされる羽目になる。
天気図の仕上げはほどほどに、大急ぎで既に誰も居なくなった白雲の斜面をグリセードで滑り降りる。初の白雲小屋で快適な一晩を過ごす。
時刻 | 場所 | 行動 |
---|---|---|
04:30 | 出発 | |
07:05 | 忠別岳 | |
10:00 | 五色岳 | |
15:20 | 北沼 | 装備デポ |
16:00 | トムラウシ山 | |
16:30 | 北沼 | C2 |
朝からちんたらやってるBパーティをほっとき、先に出発する。だって、今日は長いんだもん。どこまでも見渡せる快晴の高根ヶ原を揚々と歩く。この世の苦しみなど何もないかのごとく、静かな世界が広がる。ああ、自分はなんて幸せなんだろう。少々、もったいないくらいにサクサクとすすみ、忠別岳。
あまりの気持ちよさに、ここを去りがたいので、とりあえず後発パーティがおいくつまでは、昼寝と紅茶でうだうだと過ごすことにする。お願いだから、のんびり来てね。とは言っても、今日はトムラウシ登頂が目標。ここまで来ても、その目標はあまりに遠くに見える。Bパーティが追いついても、まだまだ居たい気持ちを振り切り、楽しみは先にあることを期待して出発する。それにしても、こっちのメンバーはごとーさん、おやぶん、わたし。メンバーの性格が、行動に反映されるんだなぁ。
五色岳のハイマツのトンネルを抜け、高根ヶ原の気持ちよさには及ばずも、美しい五色ヶ原を通過。トムラ・ヒサゴ分岐のコルで休憩していると、岩場からナキウサギが出現する。みな、珍客(いや、こっちが客か)の出現に歓声を上げ、近づいて写真を撮ったり、餌をやろうと試みたりと、大騒ぎ。思わず大休止となる。
北沼で荷物を残置し、大急ぎでトムラをアタック。Bパーティが追いつくまで最高の大展望を堪能する。明日は下山するだけなので、天気図をとることもなく、のんびりとすごす。
時刻 | 場所 | 行動 |
---|---|---|
03:45 | 出発 | |
04:50 | 天沼 | |
05:50 | 化雲岳 | |
08:30 | Co1330 | |
12:00 | 滝見台 | |
12:50 | 天人峡温泉 | 下山 |
2時起きで雉撃ちに出かける。東向きの斜面で、事を済ませながらご来光を拝む。パンパン。
あまりにも気持ちの良い季候が続いている。今日も快晴。化雲の岩にへばりついたりしながらのんびりと進む。しかし、化雲から先は例年通り雪渓でルートがとぎれとぎれ、あそこだ、ここだと、10m単位で侃々諤々と足を進める。結果的には、わたしの読図が正しかったわけだが。
皆ここから去りがたく、台地の最後で2時間ほど昼寝をかますことにする。紅茶を沸かしたり、雪合戦をしたりと、みな思い思いの時間を過ごす。
しっかりと体力を回復させた後、一気に下山ダッシュモードにはいる。滝見台からはノンストップで天人峡を目指す。当然のように、33曲りを数えるヤツ、猛然と走る続けるバカ、何度来ても、ここでやることは皆一緒だ(爆)。
結局誰が優勝したかは定かではないが、はらだっしゅのかかとが靴擦れでボロボロになって泣きそうだったことだけは覚えている。
紅葉谷の駐車場に車を残置して出発。すぐに紅葉滝への遊歩道になる。
紅葉滝は高い柱状節理に囲まれた水量の多い滝で足を踏み入れたらすっ飛ばされそう。セオリー通り遊歩道を少し戻って左岸の壁際を巻いていく。
明瞭な踏跡はなく、岩稜沿いの高い所を歩かされるので、どの辺りから下降して良いのか分かりにくい。一度沢に降りて少し行ってみたら、樋状の滝が出てきて進めず、やはり戻って同じ所からまき直す。
結局沢に降りられたのは Co960 付近。それでも大高巻きの割には意外と距離は進んでいない。
少し行くと、釜を持ったチョックストンの滝が出てくる。左岸のカンテを攀じった跡があったので取付いてみると、古い残置もある。しかし、これをつかんだが最後、壁はズルズルでホールドはなく身動きが取れなくなってしまう。その先の岩に張り付いていた苔はことごとく引っぺがされ、あらわになった岩にはほとんどホールドはなく、土被りでフリクションは効かない。どうする事も出来ず冷や汗をかきながらジリジリとクライムダウンで引き返す。ちなみにこの痕跡は先日遡行したogino さんご一行様(笑。
少し戻って左岸から小さく巻く。ここの残置シュリンゲは完全にトラップなので始めから巻きましょう。
少し行くと、高い函状は続くながらも巨岩の転がる幅の広い渓相になり、ヤスヤスの滝が出てくるまでは単調になる。
ヤスヤスの滝は6段と言われているけど、前衛1段、本体3段、後衛2段の構成となっている。前衛の小滝1段を登り、淵をへつって曲がると本体三段が見える。
水量は多いが、滝そのものは登れなくもなさそうに見える。とりあえず右岸のルンゼから一段目の上に上がってみると、二段目は渦巻く釜を泳いで取付かねばならず、1人で飛び込むにはあまりにハイリスクなので引き返す。二段目の滝自体はホールドはありそうな気がするが、氷水の釜を泳いでピンを取りつつシャワークライミングという極寒登攀に耐えられるかどうか。
前衛の滝まで下り、そこから右岸のルンゼを詰めてトラバースして行く。沢が鍵型に屈曲する部分から派生する小尾根を下り、後衛二段目の上に降りる。
さらに釜持ちのチョックストンが続くので、左岸から小さく巻く。
その先は傾斜が少し増した巨岩帯に時々簡単な滝が現れる。この川は流入する支流がほとんど無いので、下流からずっと水量は変わらない。
だいぶ色づき始めた木々を眺めつつ進んでいくと今にも落ちそうなスノーブリッジの先に飛龍の滝が見える。右岸から巻くが、壁はかなり脆いので岩場を行くと今にも崩れそうでちょっと恐い。
この辺りから登山道から流れてきた構造物の残骸が目立つようになる。登山道に出る前に衣類を登山道仕様に着替え、ラバーソールに変える。
大きく開け真っ平らになった河原を進んで登山道に出ると、ハイカーの皆さんがいっぱい居る。
帰りはロープウェイ利用。