北ノ又川大ビラヤス沢~荒沢岳

ふ~ちゃん
目的
大ビラヤス沢遡行
日程
2002年08月15日(木) - 17日(土)
山域
越後山地

今回は実は、胎内川本流を遡行するはずであった。しかし、未明からの大雨では増水、濁流し、本日の遡行は不可能である。今夜以降、明日にかけても雨の予報であり、本流の遡行は困難であると考えられる。この際、胎内川はあきらめ、前線の影響の少なそうな、南部の沢へ行くことにする。

行程

2002-08-15
C0~北ノ又川~大ビラヤス F2上部 C1
2002-08-16
C1~上部ゴルジュ帯~源頭付近 C2
2002-08-17
C2~荒岳~銀山平 下山
只見川北ノ又川下流域遡行図[image/jpeg:111kB]
只見川北ノ又川下流域遡行図

メンバー

C.L
おやぶん
S.L
ふ~ちゃん

地形

  • 奥只見湖(おくただみこ)
  • 八海山(はっかいさん)

装備

参考ページ

2002年08月14日(水) 右往左往

いったんおやぶんの家により、地形図を確保。A山岳会会長さんのところにより、相談する。荒岳周辺の地形図で、北ノ又川大ビラヤス沢というところが、地形が見られ、面白そうなので、そこに行くことに決定する。ところが、現地に向かうにつれ、雨模様となり、沢も増水している。明日は遡行出来るのだろうか・・・

2002年08月15日(木) 銀山平~大ビラヤス

タイムレコード
時刻天候場所行動
05:00起床
06:45出発
08:00岩魚出合手前 Co840入渓
09:15Co860
10:25Co890
11:25Co900
12:35F1手前
13:10F1高巻き上部
14:20Co1010C1

北ノ又川へ

雨は昨夜のうちに止んだようである。を見ると、やや白んでいるものの、昨日ほどの濁流ではない。とりあえず、いけるところまで行ってみることにする。監視小屋の隣の駐車スペースに車を置き、準備を整出発する。

渡渉は増水で困難を極めそうなので、出来る限り左岸沿いの踏み跡を行く。白沢に降りて少し下流へ戻り、踏み跡がいったん途切れる。薄いところを選びながら、少々ヤブを漕いで尾根を越えると、すぐに踏み跡が復活し、延々と岩魚沢出合手前の左曲点まで続いている。

左曲点は低い状で広いとなっている。瀞には鴨が一羽優雅に泳いでいた。渡渉し、右岸を巻く。広い河原となり、岩魚出合う。沢中の岩を見ると、こぶしひとつほど増水しているようである。突き当たりを右に向くと、深いの両岸に垂直の壁がたち、門となっている。

北ノ又川本流のゴルジュ

北ノ又川の門[image/jpeg:190kB]
北ノ又川の門
続くゴルジュ[image/jpeg:161kB]
続くゴルジュ
長い淵[image/jpeg:166kB]
長い淵

は薄暗く、奥が見えず、水圧も強い。この増水では突破は難しいだろう。(我々にとっては)未知ので、先に何があるかわからないので、ここは我慢して高巻くことにする。右岸の草付きを一気に上がり、尾根上の平らなところまで上がり、枝沢から降りる。更に函状の地形が続いている。一度右岸を高巻く。ハナ沢出合を過ぎても、延々とゴルジュである。さほど深さはないので、中を歩いたり、へつったりして内部を突破していく。距離は稼げないが、出来るだけ巻かずに進む。なぜなら、その方が楽しいから。比較的岸は低いので、高巻こうと思えば、それほど困難ではないだろう。一度、長いへつりで足を滑らせ、「振り出しにもどって」しまう(笑)。


芝沢出合[image/jpeg:192kB]
芝沢出合

出合手前でゴルジュは細くなり、左右両岸中間尾根が切り立った岩壁となった猛烈な出合に到達する。一見険悪な雰囲気を漂わせ、突破は不可能そうだが、よく見ていくと、ルートを見いだせる。ジャンプやスクラムで渡渉を繰り返し先へ進む。をひとつ左岸から巻いたあと、強い水流の中の岩をジャンプして渡渉するが、おやぶんがびびって、ザックにお助け紐を結び、空身で超えてから、ザックを引いたが、しくじって水流の中に投入してしまい、増量してしまった。なおも狭いゴルジュの中を進むと、やがて小さなとなった大ビラヤス沢が合流する。

大ビラヤス

只見川北ノ又川大ビラヤス沢遡行図[image/jpeg:430kB]
只見川北ノ又川大ビラヤス沢遡行図
大ビラヤス沢出合[image/jpeg:179kB]
大ビラヤス沢出合
おやぶんを引き上げる[image/jpeg:162kB]
おやぶんを引き上げる

出合は、一見簡単そうだが、下部にスタンスが少なく、体が上がらない。ロープを付け、空身で上がってから、ザックを引き上げる。おやぶんもザックを別にして欲しかったようだが、面倒くさいので、まとめて引き上げる。


F1[image/jpeg:188kB]
F1

すぐに F1 が現われる。休憩しながら、偵察をするが、1段目が急なS字のスロープになって、本体の全容が見える位置まで到達出来ない。できれば内部に突破口を見いだしたいが、ダメだったときに戻ってくるのが辛い。やむを得ず、高巻くことにする。右岸ルンゼより草付きを登り、 F1 の上部に至る。下を覗くも、全体像は見えない。更に、奥には悪そうな F2 が見える。おそらくこれも高巻くことになりそうなので、そのまま降りずに草付きをトラバースしていく。 F2 奥のルンゼより、身に降りようとする。


水路[image/jpeg:191kB]
水路

見ると、幅 2m もなさそうな水路が続いている。中を突破出来なくもなさそうだが、背後には F2 が控えており、水流の中に足を踏み入れる気にはなれない。右岸の草付きのテラスをそのままトラバースしていく。ここを終えると、右岸から広い尾根が合流し、一息つく。その先には大きめのがひとつ架かり、地形図も険悪そうな雰囲気を漂わせている。今日のところはここで天張ることにする。

雷と濁流

濁流する滝[image/jpeg:137kB]
濁流する滝

河原にビールを置いて、冷やし、薪を集めていると、雷と共に雨が降り出す。

一段高いところに上がり、ピンチシートをかぶる。初めは、ちょっとした夕立程度に考えていたが、みるみる雨足は強まる。やや増水し始めたようである。

「ビールそろそろ回収しようか。」「うむ。」

そのほんの2~3分後であった。は見る見るうちに濁り、川底は見えなくなり、薪は濁流に呑まれ、寝床にしようと思っていた川原もなくなってしまった。「今夜はこのままビバークか・・・」途方に暮れ、左岸の灌木の枝をたたく濁流を見つめていた。

左岸の岩壁の一部はくずれ、あらたな枝沢が出現。の中は大きな流木やら、岩やらがごろごろ転がっていく。奥のは絶望的な爆音を立てている。

雨が一段落したところで、尾根の上の方を偵察し、落ち着いて寝られそうなところを見つける。明日の好天を祈って眠りにつく。

2002年08月16日(金) 大ビラヤス上部

タイムレコード
時刻場所行動
05:00起床
06:50出発
07:55奥の廊下入口
10:55F3 1段目上
12:05Co1430
13:10Co1670
14:00Co1720C1

快適なゴルジュ

はじめの滝を直登[image/jpeg:130kB]
はじめの滝を直登
Co1120付近[image/jpeg:131kB]
Co1120付近

はすっかり減水し、昨日の濁流を全く感じさせない。しかし、河原の様子はすっかり変わり、新しい砂浜が出来ていたりする。直登不能と思われた初めのはさっくりと右岸を直登する。その後に続くゴルジュもおおむね快適に中を通過する。当初の予想通り、「ああ、やっぱりこの程度か。」と思う。地形頭上の記号が切れても、なお函状ではあるが、とてもかわいい。このままさっくりピークに・・・と思ったそのとき、真っ黒な垂直な壁が両岸にそそり立ち、奥が見えない廊下が出現する。

廊下

廊下[image/jpeg:132kB]
廊下
突き当たりの滝[image/jpeg:164kB]
突き当たりの滝

地形図上では、の抜け口に F3 が架かっている。おそらく左岸を大高巻きではあると思われるが、ここは中を見ないわけには行かない。一度、ホールドが抜け、どぼんと落ちたりもしつつ、へつりを楽しみながら一つ、二つと小滝を越えたそのとき、正面に 10m ほどのが行く手を阻んでいた。戻るしかないか・・・と思われたが、左岸をなんとか草付きまで到達出来そうである。

今回はおやぶんが先に行く。垂直に近い階段状を行くが、なかなかよいピンを取れず、手間取っているようである。ビレイーの私は、ずっと水流の中で、日もあたらないので寒い。震えを抑えながらビレイをする。ようやく笛の合図で後に続き上に行く。余り信用ならないアンカーを見て2ピッチ目を行く。ブッシュ混じりの階段登りで、浮き石が五月蠅い。ひとつ大きな岩を放り投げてから、落石させないように慎重に行く。3ピッチ目は灌木帯のトラバース。トップの姿は見えず、声もほとんど届かない。ロープのこり 2m のところで、「ザイルねぇー!!」と叫ぶ。はっきりとは聞こえなかったようだが、なんとか意は汲んでくれたようだ。4ピッチ目を更に上がり、 F3 を巻こうとするが、下方を見ると、の内部に降りられそうである。はそれほど難しそうには見えない。 F3 の1段目(ゴルジュ側壁の滝)の上に降り立つ。

F1 一段目[image/jpeg:195kB]
F1 一段目
ゴルジュ右岸の絶壁[image/jpeg:205kB]
ゴルジュ右岸の絶壁
F3 二段目[image/jpeg:178kB]
F3 二段目
F3 を登る[image/jpeg:166kB]
F3 を登る

うしろを振り返ると、右岸の壁の上にはスラブ状の枝沢が2本続き、上部はハング岩場になっている。強烈な印象の光景だ。F3 の1段目はハングしているようで、覗いても下は見えない。2段目以降は数段の滑滝となっている。つるりとして微妙なところもあるが、快適に登り切る。

燃えない薪

F4[image/jpeg:171kB]
F4
続く滑[image/jpeg:185kB]
続く滑

すぐに F4 が現われるが、数段の小滝と、長い滑の組み合わせで簡単だ。

その後も断続的に滑が現われるが、の規模は急激に小さくなり、天場適地がないまま、沢はブッシュにおおわれ、やがて Co1500 からヤブの中に沢は伏流する。

Co1600 で最後の小滝群を登ったところで、このまま行ってもこの先にも良い天場は見つかりそうもないので、少々湿っぽいが、 Co1720 で無理矢理天張る。焚き火をしようと、枯れ木を集めてくるが、何れも湿気っている。

新聞紙を大量に使い、着火を試みるが、まるでダメ。水を含んだスポンジに火を付けようとしているようなものだ。悪戦苦闘し、挙げ句の果てにはメタ2本を使い、無理矢理着火する。

なんとか火はついた物の、勢いがない。薪が渇く様子がない。

2002年08月16日(金)

タイムレコード
時刻場所行動
05:00起床
07:00出発
08:00小ピーク
10:30前嵓
12:40銀山平下山

夜中に一度目をさまし、消えた焚き火にメタを投入し、着火する。しかし、持続しそうにない。あさ、もう一度メタで着火する。これでメタ半箱を消費。まだまだ修行が足りない。少し組み直すと、ようやく安定して燃焼し始める。今さら燃えてもねぇ・・・

天場から先のは、ブッシュのかぶったトンネル状の沢形を詰める。沢形がなくなり、ミックスのヤブを少々漕ぐと小ピークに到達する。小ピークから荒沢岳までは、気持ち程度の踏み跡がある。

山の上はガスで、周囲は見えない。寒いので、ピンチシートをかぶり、天気待ちをしていると、登山道から人が上がってくる。

晴れる様子もないので、あきらめて下り始める。左右に見えるなどを眺めながら降りていく。

前嵓からの下りは急な岩場で、ずっと鎖がついている。よくこんな所に道を造ったもんだ。ここを降りきると、未知はぐっと緩やかになるが、何度か上り下りを繰り返す。いっそに降りてしまった方がらくちんな気がする。

下山し、車のところで片づけをしていると、監視小屋の人が話しかけてくる。大雨で、が増水し、心配していたとのこと。今日帰ってこなければ、騒ぎ始めていたかもしれないとのこと。ぉぃぉぃ、やめてくれ(苦笑)。

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