日高の全山縦走をするなら、前からこの季節だと思っていた。この季節なら硬く締まった雪稜の日高を駆け抜ける事が出来る。支稜にはいっさい目もくれず、夜明け前から行動を開始し、できる限り距離を稼ぎ、とにかく進める所まで進もうというマラソン山行であった。
行程
- 2003-03-29
- 御影~芽室小屋 C1
- 2003-03-30
- C1~芽室岳~Co1480 コル~P1633~Co1530コル C2
- 2003-03-31
- C2~チロロ分岐~ピパイロ岳-一九六七峰間 Co1793 コル C3
- 2003-04-01
- C3~一九六七峰~北戸蔦別岳~戸蔦別岳~カムイ岳~カムイ岳北東尾根 C4
- 2003-04-02
- C4~エサオマントッタベツ岳~シュンベツ岳~P1917~Co1732 コル C5
- 2003-04-03
- C5~カムイエクウチカウシ山~ピラミッド峰~一八二三峰~Co1560 コル C6
- 2003-04-04
- C6~コイカクシュサツナイ岳~ヤオロマップ岳~一五九九峰~P1688南東尾根頭 C7
- 2003-04-05
- C7~ルベツネ山~ペテガリ岳~中ノ岳~P1372~Co1250 C8
- 2003-04-06
- 停滞 C9
- 2003-04-07
- C9~ニシュオマナイ岳~神威岳~Co1300コル~Co1410 C10
- 2003-04-08
- C10~ソエマツ岳~ピリカヌプリ~トヨニ岳~ポン三ノ沢中間尾根頭 Co1100 C11
- 2003-04-09
- C11~野塚岳~オムシャヌプリ~Co1310 C12
- 2003-04-10
- C12~P1343~十勝岳~楽古岳~楽古山荘 C13
- 2003-04-11
- C13~国道236号線(天馬街道)ヒッチハイク 下山
食料・燃料等は必要最小限とし、日程が足りなくなった場合は即座にエスケープする計画。
装備
食糧計画
- 14泊(夕、朝)
夕食はジフィーズ中心、朝食はコーンフロスト(70g)+ココア
- 15日(行動食)
- 一口羊羹
- ベビーチーズ
- 一口チョコ×10粒
- 魚肉ソーセージ
- 吉備団子 or スニッカーズ or オレオ一袋
- 一口寒天ゼリー
- キャンディー
- 2停滞
- 1非常食
- その他
2003年03月29日(土) 苫小牧~芽室小屋
時刻 | 場所 | 行動 |
---|---|---|
17:00 | 御影駅 | 出発(タクシー) |
17:20 | 牧場(5.5km手前) | |
19:10 | 芽室小屋 | C1 |
鈍行移動
朝からあわただしくパッキングし、9:52の汽車に飛び乗った。前日からきちんとパッキングしておけばいいのに、近頃こういうのが多い。シャープペンシルの芯と、イアーバンドを忘れる。芯はともかく、イアーバンドはちょっとイタいかもしれない。
春休みだけに、さすがに乗客は少ない。外を見ると、雪がすっかり解けている。稜線でもブッシュの出ちゃっているところとかあるだろうか。
例によって、新夕張で2時間の待ち時間。セブンイレブンへ行ってしばし立ち読み、弁当を買って昼飯とする。新得でシャープペンシルの芯と、ライター、C1用の食料を購入する。ガスの量が少々不安だったので、駅前のスポーツショップへ立ち寄ってみるが、ノーマルタイプしかないのでやめる。ま、これ以上荷物が重くなるのもなんだし、たぶん足りるだろう。
セイコーマートの帰り道、なにやら人が集っている。何かと思ったら北海道知事候補の「高○はるみ」とやらの街頭演説が始まった。選挙までには下山して帰らねば・・・駅で立ち食いそばを食って御影へ向かう。
始点・芽室小屋へ
御影からはタクシー。先日の剣山の時とはえらく違って愛想のない運ちゃんだ。雪が出てきて早々に降ろされる。牧場から小屋まで約5.5kmの道のり。ワカンを履き小屋を目指す。程なく暗くなり始め、ヘッドランプを着用する。LEDのヘッドランプは思った以上に明るく快調だ。小屋までずっとスノーモービルのトレースが残っている。小屋までは3時間以上の道のりかと思われたが、2時間強で到着する。
芽室小屋は相変わらず快適であった。小さいが、使いやすいし暖かい。ストーブを焚いて就寝。ストーブの吸気口をあけすぎて空気を取り入れすぎ、煙が逆流し、煤が室内に充満してしまう。窓を全開にし、室内の空気を入れ換え、吸気口を閉め再就寝。小さな小屋なのですぐに暖まる。
今回、軽量化のためにイヤホンタイプのラジオを用意してきたが、これは聞いている時に外部の音が遮断されてしまうので、ちょっと困りものだ。
2003年03月30日(日) 芽室岳
- 距離
- 7.750km
- 標高差
- 911m
- 登り
- 1311m
- 下り
- 400m
- 平均速度
- 1.0km/h
時間 | 気温 | 天候 | |
---|---|---|---|
03:00 | 起床 | ||
04:05 | 出発 | ||
04:45 | -05 | 曇 | Co800 |
05:50 | -07 | 晴 | Co103 |
06:50 | -08 | Co1250 | |
07:50 | -09 | Co1400 | |
08:50 | -06 | Co1600 | |
09:35 | 芽室岳 1753.7 | ||
09:55 | -03 | Co1530 | |
10:45 | 曇 | Co1520 | |
12:00 | -06 | 雪 | Co1520コル(P1622南東) C2 |
霧氷並木を越えて
風の音が強い。ストーブの火は完全に燃え尽きているが、寒くはない。最後のトイレだというのに、ブツが出てこない。突然生活リズムを変えて、体が適応しないのは当然か。
まだ暗いうちにヘドラをつけて、ワカンを履いて出発。暗くてルートがいまいちよく分からない。手入れされていない人口針葉樹林を通り抜けていく。順調に高度を上げる。天気はよいが、少々風が強い。
Co1500を越えると、広い尾根に立ち並ぶダケカンバに真っ白な霧氷がつき、そこに太陽の光が反射し、まるで満開の桜並木のようで美しい。しばらくして主稜線に立つ。ピーク付近は更に風が強い。芽室岳は2週間前にも立っているので、これと言った感慨もなくそそくさと下降し、予定天場へ。
予定天場は広く、風もなく非常に気持ちの良いところであったが、時間にまだ余裕があったので、明日以降のために少しでも進めておこうと、2ピッチほど先へ進む。上空にケアシノスリらしきものを見る。
山中第1泊目
軽くブロックを積み上げ、テント内へ。時折風にあおられる。天気図をとるも、あまりかんばしくない感じがする。外では雪がちらついている。気圧の谷が通っているのだろうか。
それにしても、腹が減った。食料は十分に持ってきたつもりだったが、足りなかっただろうか。最後まで持つか少々不安だ。明日はどれくらい歩けるだろうか。出来れば一九六七峰を越えておきたいが、ちょっと無理だろうか。
ラジオでは関東地方で本物の桜が満開であると話している。こちらは氷点下で眠りにつく。
2003年03月31日(月) チロロ分岐~ピパイロ岳
- 距離
- 11.149km
- 標高差
- 271m
- 登り
- 1083m
- 下り
- 812m
- 平均速度
- 1.2km/h
時刻 | 気温 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|---|
02:30 | 快晴 | 起床 | ||
04:05 | -08 | 出発 ワカン着用 | ||
04:55 | Co1600(P1604西) | |||
05:55 | P1520 | |||
06:55 | -04 | Co1560 | ||
07:40 | P1644 | |||
08:30 | -02 | Co1484 コル | ||
09:25 | +-0 | アイゼン着用 | ||
10:50 | P1707 | |||
11:45 | 晴 | P1590 北コル | ワカン着用 | |
13:00 | +-0 | Co1670 | ||
13:00 | Co1770 | アイゼン・ピッケル着用 | ||
13:30 | +-0 | 晴 | ピパイロ岳-一九六七峰間 Co1793 コル | C3 |
何もない移動日
少し早起きをする。昨日の憂慮も何のその、快晴で満天の星空。昨夜は ULSSDH#2 だけで寝たが、それほど寒く感じなかった。星がやけに綺麗だ。今日一日この調子でいてくれると助かる。本日はメジャーピークがない、ひたすら尾根歩きだ。つまらん移動日だ。
ピパイロ、エサオマン、勝幌など北日高の山々がよく見える。稜線はまだまだ雪が深く、ちょっとスキーが恋しくなる。時々ハイマツのブッシュに足を取られる。昨日の疲労が抜けていないらしく、足取りが重い。歩き始めてすぐに、ワカンの金具がはずれる。何かで補強するなりしないと、すぐに緩んでしまうようだ。この安物め!
途中どこかで、髪留めのゴムを落としてしまったようだ。換えのゴムを持ってきていない。まいったな。 P1696 にあがると、1967峰がぐんと近くに見える。このころから風と少々の雲が出始める。やはり明日まで天気は持たないのだろうか?遠くから、 P1707 ピークにに何か看板らしき物があると思っていた物は、近づいてみると、折れたストックだった。
両足バリバリの筋肉痛でズキズキする。日差しはますます強くなり、気温がぐんぐんと上がる。今日は天気図をとらないと決めて、歩けるところまで歩くことにする。少々気合いを入れて、ピパイロの肩にあがってしまう。一日行程を終えた後でこの上りは結構キツい。ピパイロ西峰はサクッとトラバースでカットする。学生時代のGWにも天張ったピパイロ-一九六七峰コルで幕営する。
夕暮れの山脈
さすがにこれだけ歩くと非常に疲労する。微風が気持ちよい。雲は少しずつ増えているが、明日の天気は如何に?
高所での吹きさらしの天場ということで、ブロックをそこそこ積み上げて幕営。しかし、意外と風が吹かずなかなか快適だ。
それにしても、やけに背中が痛い。少々歩きすぎたか・・・明日は不遇な山、一九六七峰。日高第三峰で、容姿もなかなか良いのに、なぜこの山に名前が付かなかったのだろう。解せぬ。この天場から見える夕暮れの日高山脈が美しい。
2003年04月01日(火) 一九六七峰~カムイ岳
- 距離
- 11.727km
- 標高差
- -133m
- 登り
- 1097m
- 下り
- 1230m
- 平均速度
- 1.2km/h
時刻 | 気温 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|---|
03:00 | 起床 | |||
04:35 | 晴 | 出発 アイゼン・ピッケル着用 | ||
05:10 | 一九六七峰 | |||
05:25 | -11 | Co1880コル | ||
06:20 | -07 | Co1770コル | ||
07:15 | 快 | 北戸蔦別岳 | ||
07:20 | Co1790 コル | |||
08:35 | 戸蔦別岳 | |||
09:10 | Co1730 | |||
09:30 | ワカン着用 | |||
10:35 | P1790(P1803東) | |||
11:35 | Co1670 コル(P1764南) | |||
12:35 | Co1670 コル(神威岳西) | |||
14:00 | カムイ岳北東尾根 | C4 |
高速の北日高
#2のシュラフだけではさすがにちょっと寒かった。ちょっと寝足りない。数字的には問題ないはずなんだが・・・今夜からはダブルで寝よう。
歩き始めていきなり左のふくらはぎが痛い。一九六七峰の途中でご来光を拝む。少し出発が遅れてしまったため、ピークでのご来光は逃してしまう。マゼンタ色の朝日が山脈を紅く染め上げる。ピークで一瞬、幌尻、戸蔦別が燃えるように真っ赤になり息を呑む。アルペングリューエン。岩峰群を降り、アイゼンをカツカツと効かせて快調に北戸蔦別をあっという間に通過する。
P1881 の岩塔群は西側を巻いていく。危うく岩場を直登し、ハマるところだった。戸蔦別岳から、一八三九峰などの中部日高を南望。それにしても、シュンベツ岳はどれなんだろう。日高を代表する良峰が無名峰だったりするのに、全く目立たないポコになぜか名前が付いていたりする日高山名の謎・・・
戸蔦別を一気に駆け下り、急激に気温が上がり始める。涼しい格好にし、ワカンへ変える。唇がヒリヒリする。早くも雪焼けが始まったようだ。この稜線は10年前にも一度歩いているが、全く印象に残っていない。 P1764 から Co1670 までは意外と細い岩稜が続き、歩きにくい。が、やはりこれといった印象も残らず、カムイ岳西のコルの予定天場へ。
しかし、いまいち天場適地とは言い難いので、カムイ岳を越えて北東尾根まで行くことにする。気温の上昇でワカンに雪がベトベトとつき歩きにくい。カムイ岳周辺の北側には大きめの雪庇が出始める。
意外と良くない北東尾根
北東尾根の頭でブロックを掘り出していると、いかにも雪崩質なザラメ層がものすごい厚みで出現する。とてもじゃないけど、この辺の斜面でスキーは出来ないな(笑)。尾根の陰の天場だが、意外と風が通る。しかも、人通りが多いせいか、周囲の雪が白くない。綺麗な水を作るのに一苦労だ。
ガスのキャップをあけるときに爪がはがれる。イテェ!スパッツを見ると、早くも裂き穴が。どうしてこうもアイゼンを引っかけてしまうのだろう。
ここまでで、予定宿泊数が一泊浮いたので、その分の食料を他の日に分配する。下山予定日の関係もあって、あまりやるべきではないが、そこはまぁ、後々また調整すればいい(爆)。今夜は2食分を一気に平らげる。予想以上に量があった。
天気予報では明日も好天とのこと。ほどほどにして欲しいものだが・・・
2003年04月02日(水) カムイ岳北東尾根~プリマモンテ
- 距離
- 10.537
- 標高差
- 56m
- 登り
- 1192m
- 下り
- 1136
- 平均速度
- 1.3km/h
時刻 | 気温 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|---|
02:30 | 起床 | |||
04:00 | 出発 ワカン・ピッケル着用 | |||
04:45 | 雪庇踏み抜き | |||
04:55 | -06 | 晴 | Co1490コル | |
05:20 | 雪庇踏み抜き(2回目) | |||
05:55 | Co1630 | アイゼン着用 | ||
06:55 | エサオマントッタベツ岳 | |||
07:45 | Co1700コル | |||
08:45 | -04 | ナメワッカ分岐 | ||
09:35 | 春別岳 | |||
09:50 | Co1760 | |||
10:45 | 曇 | Co1840 | ||
12:00 | Co1732コル | C5 |
核心突入の前に
シュラフを二重にするとさすがに寒くない。時折テントをあおる横風が鬱陶しい。
ところで、今回長期山行ということで、結構の量のロウソクを持ってきたが、 LED のヘドラがあれば、ロウソクはほとんど使わない。というか、このヘドラにはクリプトン球(普通の電球)も付いているが、こいつの使い道もほとんどない。遠方を照らすにはクリプトン球ということらしいが、反射板が円形ではないため、照射の焦点が定まらず、照らしたいところをうまく照らせないのだ。 LED は全体をぼんやりと照らすため、反射板はあまり関係ないようなのだが・・・それはさておき、ロウソクの量を減らそうと意味もなくロウソクを点灯していると、タッパの上でロウソクが燃え尽き、油断している隙にタッパが溶け始めていた。もう少しで火事になるところだった。危ない。
山行に入ってから、さすがに主稜線上だけあって、 FM ラジオが良く入る。時には青森からまで電波が届き、混線してちょっとやっかいだ。帯広には地方コミュニティ局が2局ほど入り、天気情報などはそこで聞くのがよいようだ。
昨夜からやけに咳とタンが出る。鼻をかんでみると、黒いススが出てくる。芽室小屋で不完全燃焼させたススだ(苦笑)。
危険!雪庇尾根の恐怖
いよいよ、恐怖の雪庇尾根へ。まだ暗いだけに余計緊張する。このエサオマンへ続く稜線では、10年前に雪庇の亀裂に墜落をしてイヤな思いをしている。慎重に行かなくては。
などと思っている矢先、いきなりやっちまう。「ミシ」っと足下でイヤな音がしたと思ったら、ドドンと崩れ落ちていった。すかさず尾根に飛びつく。この辺はダケカンバが風上側から細い稜線の上部に枝を発達させている。その枝をよけるのに、ついつい雪庇の発達している風下側へ逃げてしまうのだ。出来るだけ風上側の斜面を行きたいが、斜面は雪が緩く、トラップが多く参ってしまう。
最低コルも細く、天場適地はない。最低コルから登り初めてすぐにまた2度目の踏み抜きをやってしまう。こうも簡単に落ちてしまうとなると、そう易々と風下側は歩けない。多少消耗してでも風上側を歩かねばなるまいか。この後すっかり「雪庇怖い病」にかかってしまい、少しでも雪庇が見えると慎重に成りすぎてしまい、ペースを落とすこととなる。 P1604 まではひたすら雪庇帯だ。
日が昇り、北日高の山々が美しく見える。エサオマントッタベツ岳では看板のある位置から、 3m 位先に雪稜の縁が見える。こいつを踏み抜いたらさすがにしゃれに成らんな・・・(冷汗)札内分岐へ続くカール壁にも巨大な雪庇が発達している。 JP にはこれと行った思い入れもないので、サクッと西側をトラバースして中日高に突入する。
札内分岐からナメワッカ分岐までアイゼンを効かせて一気に移動。斜面に表層雪崩や雪庇崩落の後があちらこちらに見える。気象情報では雪崩注意報が出てるし、稜線上とはいえ、多少は注意せねば。ナメワッカ分岐からは稜線が一気に細くなり、岩稜帯となる。特にシュンベツ岳周辺はすばらしく、精神的にも体力的にも消耗する。今回、初登頂ということで第1目的のシュンベツ岳に立っても、これといった感慨もなく、先を急ぐ。
これまた、他所からもよく目立つのになぜか無名峰となった不遇な山、 P1917 を登っている頃、左脚太股がつりそうになる。カムエク直前のコルまで行くつもりだったが、仕方なく Co1732 のコルに天張る。
2003年04月03日(木) カムイエクウチカウシ山~一八二三峰
- 距離
- 7.868km
- 標高差
- -185m
- 登り
- 918m
- 下り
- 1103
- 平均速度
- 1.1km/h
時刻 | 気温 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|---|
02:50 | 快 | 起床 | ||
04:15 | 出発 アイゼン・ピッケル着用 | |||
04:45 | 晴 | P1903肩 | ||
05:45 | カムイエクウチカウシ山 | |||
06:50 | ピラミッド峰西Co1830 | |||
07:05 | ピラミッド峰 | |||
07:50 | 快 | Co1750 | ||
08:45 | +03 | Co1640 | ワカン着用 | |
10:00 | Co1770 | |||
10:30 | 一八二三峰 | |||
11:15 | Co1560コル | C6 |
山脈核心部を抜けて
やばい。のどが痛い。本格的に風邪をひいてしまったか。
アイゼンを快適に効かせ、主稜線最高峰カムイエクウチカウシ山に登頂。南方はややカスミがかっているが、最高のパノラマ。この景色に勝る物はない。下りから歩きにくい岩稜が始まる。八ノ沢カールへの降り口に巨大な雪庇がかかり、割れ目が走っている。ザイルが欲しくなるほどの細い稜線が続く。
今日は完全に無風で、休憩して静かにしていると、何の音も聞こえない。もちろん、気温もぐんぐんと上がり暑い。ものすごく気持ちが良く、このままここでうだうだとして行きたいところだ。鼻がヒリヒリする。雪焼けがかなり進行してきたようだ。ジャケットを腰に巻いて歩いていると、アイゼンの爪を裾に引っかけてこけてる。あぶない。スパッツはますますボロボロに引き裂かれた状態になってきた。右側は既にスパッツとしての機能をほとんど果たしていない。
P1807 から一八二三峰間はずっと大きな雪庇が続く。コル付近を歩いている時、足下から 20cm ほど左側が突然崩れ落ちる。雪の固まりが轟音とともに粉々に崩れながら、急峻な斜面を転げ落ちてゆく。
一八二三峰からほっと一息と思いきや、今度は上昇した気温のため、アイゼンに雪団子がつき、滑落の危険に見舞われる。本当は最低コルまで進むつもりだったが、時間を繰り上げて七ノ沢カールのコルで終了とする。明日は少し早めに出発しよう。
それにしても、なんだか熱っぽいような気がしてきた。くしゃみも出るし・・・あと半分、持つのだろうか。
2003年04月04日(金) コイカクシュサツナイ岳~ヤオロマップ岳
- 距離
- 10.880km
- 標高差
- 106m
- 登り
- 1129m
- 下り
- 1023m
- 平均速度
- 1.2km/h
時刻 | 気温 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|---|
01:30 | 快 | 起床 | ||
02:50 | 出発 | |||
03:40 | -07 | Co1444コル | ||
05:15 | コイカクシュサツナイ岳 | |||
05:30 | -06 | Co1560コル | ||
06:30 | Co1720(P1752南) | |||
07:00 | ヤオロマップ岳 | |||
08:00 | P1569 | |||
09:10 | 一五九九峰 | |||
10:05 | Co1496コル | |||
11:00 | Co1600 | |||
11:45 | P1688南東尾根頭 | C7 |
地獄の始まり
バリッと気合いで早起き。って、予定より30分寝坊してんじゃん。ま、いっか。本日も完璧な星空。どうも昨夜から左の尻が痛い。酷い筋肉痛だ。体調も最悪だ。どうやら完全に風邪をひいてしまったようだ。
P1643 の登りは意外と急斜面が続く。巨大な雪庇も付いて消耗する。コイカクの背は急斜面過ぎてあまり雪が付いていない。このあたりから、稜線上の踏み跡が出ているところも増え始める。それにしても、どうも調子があがらない。何となく熱っぽいような気もする。
一八二三峰からコイカク、ヤオロマップとお馴染みの稜線をアイゼンで進むが、戸蔦別周辺やカムエクのようにサクサクというわけには行かない。コイカクのピークから、コルの向こうに良さそうな広場があるなと思いながら進んでいくと、そこはいわゆる「ヤオロの窓」に雪でふたがされた状態であった。ヤオロマップを下りきると、雪が深くなりワカンに変える。一五九九峰から先はこれまでで最大級の雪庇が発達している。風下側はダケカンバが混み合い、雪質もグズグズで激しく歩きにくい。
今日は体調が悪いので、天場適地があれば適当に天張ろうと思っていたが、なかなか良い天場が現れない。ルベツネ-ペテガリのコルまで天場ポイントがないような気がする。頭がもうろうとしてくる。
今日も一日天気はよいが、一度も服装を軽装にしていない。ぼんやりした太陽光と心地よい微風のせいだろうか?それとも熱のせい? P1688 に上がり、ルベツネ山を目指そうとした時、左手にちょうど一張り分に良さそうな台地が見える。
意外にも快適な天場
稜線の岩塔の陰で、周囲がダケカンバに囲まれている。東には急峻な尾根が延びている。風もほとんどあたらず、非常に快適だ。ブロックを積む必要もなさそうだ。
テントを張り、ザックの中身をあける。酒ポリを取り出すと、液体がぽろぽろとこぼれ落ちる。亀裂が入り、中身がほとんど流れ出していた。ここまで、山行最後まで持たそうとちびちびと飲み続けていただけにショックがデカい。幸い、ザック内の荷物にはそれほどの実害はなさそうだ。
ダケカンバにシュラフをかけて干す。暖かな日差しで、あっという間にふっくらとなる。靴下や靴もサックリと乾く。風邪で熱っぽいが、酒を無駄にしまいと、ぬくぬくしながら飲み続ける。いい気分になってきた。
2003年04月05日(土) ルベツネ山~中ノ岳
- 距離
- 9.721km
- 標高差
- -460
- 登り
- 967m
- 下り
- 1427m
- 平均速度
- 0.9km/h
時刻 | 気温 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|---|
02:00 | 快 | 起床 | ||
03:25 | 出発 | |||
03:50 | ルベツネ山 | |||
04:45 | -08 | 雲 | Co1535コル | |
05:45 | Co1647 | |||
06:35 | ペテガリ岳 | |||
07:45 | Co1500 | |||
08:45 | P1469 | ワカン着用 | ||
09:25 | 快 | Co1170コル | ||
10:25 | Co1270 | |||
11:20 | +05 | Co1330 | ||
12:10 | Co1450 | |||
12:40 | 中ノ岳 | |||
13:50 | Co1250(P1372南) | C8 |
鬼の中ノ越え
ダケカンバに白く霧氷ができあがっている。風邪の調子はますます悪い。どんどん鼻水が出てくる。この先本当にだいじょうぶだろうか。
快適な天場を後にし、ルベツネ山を目指す。アイゼンが快適に効く。春別岳と並び、今回もう一つの目的である日高最後のメジャーピークは夜明け前の暗闇の中。当然展望はなく、見えるのは星空と彼方に見えるわずかな街の灯りだけ。ま、いいか。ルベツネの登りからずっと、右足首の前が痛い。靴の当たり所が悪いような感覚があるのだが、何度履き替えても解消されない。この足の痛みは風邪の体調不良よりずっと厳しい。靴の履き替えのため、ペテガリのピークまで予定よりずっと時間がかかってしまう。ペテガリのピークでテーピングを施すがいまいち効果はあがらない。
ペテガリから P1496 まで雪庇に悩まされる。気温も上がり、雪が緩み始める。 P1496 からワカンに変える。コル付近では気温も最高潮に上がり、グズグズの雪に足が取られ、酷く消耗する。さらに、 Co1170 からの登りはいかにも雪崩そうな斜面である。ぬかる斜面を出来るだけ早く登る。が、思うように足が進まない。これまでで最悪の稜線が続き、熱も上がってくるようだ。
本当は適当なところで天張りたいのだが、明日は雨であるという予報もあり、出来るだけ進めておきたい。やっとの思いで中ノ岳に到達し、肩のあたりに天張ろうと思ったが、P1372の岩峰が見える。アレを夜明け前の行動で越えるのはちょっとイヤである。気合いを入れ直して、びびりながらその細い嶺を越える。西側はほぼ垂直なガケで、東側斜面にしがみつくように移動する。どうせなら最低コルまでと思ったが、1372を越えてコルを見ると、なんだかものすごく遙か彼方に見えて、歩く気力を失い、適当なところで天張ってしまう。
2003年04月06日(日) 中日停滞
目覚ましの音が鳴ってもなんだか動く気力が沸いてこない。それほどの猛烈な風というわけではないが、時折雪のぱらつく音もする。風邪の状態もあまり良くない。思えば出発してちょうど1週間。ここいらで休養をとるのも良いだろう。ということで、そのまま再び眠りにつく。明日は激しいアップダウンが続く・・・
2003年04月07日(月) ニシュオマナイ岳~神威岳
- 距離
- 7.128km
- 標高差
- 216m
- 登り
- 1020m
- 下り
- 804m
- 平均速度
- 0.8km/h
時刻 | 気温 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|---|
00:00 | 快 | 起床 | ||
01:10 | 出発 | |||
01:55 | Co1230 | |||
02:55 | ニシュオマナイ岳 | |||
03:55 | Co1210 | |||
04:55 | Co1360 | アイゼン・ピッケル着用 | ||
06:05 | 神威岳 | |||
ワカン着用 | ||||
06:55 | Co1340コル | |||
07:45 | Co1430 | |||
08:30 | Co1300コル | |||
10:00 | Co1410 | C10 |
1日休養をとったが、風邪は悪くなる一方だ。咳が止まらなくなってきた。このまま神威山荘へエスケープという考えが頭をよぎる。
マイナーピークであるにもかかわらず、標高差 330m もあるニシュオマナイ岳を暗いうちに登る。再び一気に高度を下げる。ニシュオマナイの下りの斜面にはあまり雪が付いておらず、ハイマツが露出している。そして標高差 390m を誇る神威岳へ挑む。スタートしてからずっと、アイゼンの効きが悪く、うんざりする登りが続く。山荘へエスケープしたいという気持ちを振り払い、神威岳を越えても悪い稜線は続く。
最低コルを越えてから天場を探しながらゆくが、稜線が細く、なかなか良いところが見つからない。いっそ、今日中にソエマツ岳を越えてしまいたいところだが、体力的にそんな気力も出てこない。目前の Co1410 の稜線上の雪庇の切れ目で天張ることにする。しかし、ここは風の吹き抜け位置で、一晩中強い風に悩まされることとなってしまった。
2003年04月08日(火) ソエマツ岳~トヨニ岳
- 距離
- 13.047km
- 標高差
- -315m
- 登り
- 1158m
- 下り
- 1473m
- 平均速度
- 1.1km/h
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
00:00 | 晴 | 起床 | |
01:00 | 出発 | ||
01:55 | Co1570 | ||
02:30 | ソエマツ岳 | ||
03:00 | 曇 | ヘッドライトの電池交換 | |
04:00 | Co1500(P1529南) | ||
05:00 | Co1420 | ||
06:10 | ピリカヌプリ | ||
07:00 | 晴 | Co1380(P1386北) | |
08:00 | P1500(P1512北) | ||
09:00 | Co1420コル | ||
09:45 | トヨニ岳 北峰 | ||
10:15 | ツボ足 | ||
11:00 | Co1400 | ||
12:40 | ポン三ノ沢中間尾根頭 | C11 |
南日高三山を越えて
一晩中横風に悩まされ続けた。そそくさとテントを片づけて出発する。その後もずっと強い風が吹き続ける。
ソエマツ岳で休憩している時、雨蓋に入れていた巻きちりを、水ポリを出した拍子に落としてしまい、ころころと転がって行ってしまう。雪の急斜面で止まるわけもなく、あっという間にヌビナイの谷底に消えていった。しばし呆然とする。
ソエマツ-ピリカヌプリ間の稜線は一見細くて悪そうだが、意外と広く、雪質もそこそこで岩稜はいくつか東側をトラバースしてカットしていく。
地形図を見るためにヘドラの明かりを何度か切り替えていると、クリプトン球から切り替わらなくなってしまう。故障かと思い、仕方なくそのまま使っていると、30分弱で消えてしまった。どうやら電池切れだとスイッチの切り替えが出来なくなってしまう仕様のようだ。しかし、LEDならまだまだ十分使えたような気がするのだが・・・風の中、岩陰でロウソクをつけ、ロウソクの明かりを頼りに電池を取り替える。
コルからピリカヌプリへの登りで風がますます強くなる。横風にあおられ、立っていることもままならず、体が風下へと流される。はうように斜面をよじ登り、ピークの陰でようやく一息つく。
ピリカヌプリを過ぎると、急激なアップダウンは少なくなり、雪質も締まって歩きやすくなる。トヨニ岳まで小さな起伏を越えて一気に距離を伸ばす。トヨニ岳ピークで、今山行中初めて他人の天場跡を確認する。トヨニ岳を過ぎると、急に暖かくなり、雪も緩んでくる。眼下には天馬街道が見え、核心部を抜けたことを実感する。と同時に里恋しさがわき出してくる。「だれが決めたの楽古岳♪いつの頃から楽古岳♪どうしてキミが最南端♪だれかがトヨニ岳が日高の南端だよと言ってくれればいいのに~♪」などと訳の分からんことを呟きながら、まだまだ彼方に見える楽古岳を目指す。
P1251 付近の岩稜は完全に地面が露出し、なんだかそこだけ春の様相だ。天馬街道へと直結する最低コルのポン三の沢中間尾根頭まで距離を伸ばす。ここにも小さな天場跡があった。
天馬街道を眺めつつ
尾根陰と言うことで、ブロックも積まずに天張る。ずぶぬれの靴や靴下を乾かす。が、風が冷たく乾きはイマイチだ。
ゴミ袋にたまっていた鼻紙を広げ、乾かしてキジ紙を再生する(苦笑)。壊れたワカンにビニールテープを巻いて補強をする。ビニールテープの量が少なく、すべてなくなってしまう。やむを得ず一部布テープを使う。山行の最後まで持つだろうか。
札幌方面では雨が降っているらしい。なにやら発達した低気圧が接近中とのことと。明日は悪天のようだ。下山を目前にしての停滞だけはさけたいのだが・・・
2003年04月09日(水) 野塚岳~オムシャヌプリ
- 距離
- 6.650km
- 標高差
- 216m
- 登り
- 762m
- 下り
- 546m
- 平均速度
- 1.2km/h
時刻 | 気温 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|---|
03:00 | 雪 | 除雪 | ||
08:00 | 起床 | |||
09:00 | 除雪 | |||
10:20 | 曇 | 出発 | ||
11:05 | -03 | Co1240 | ||
12:10 | 雪 | 野塚岳西峰 | ||
13:05 | 野塚岳 | |||
13:10 | Co1150 | |||
14:00 | オムシャヌプリ | |||
16:00 | Co1310 | C12 |
最悪の天場
夜半から風を伴って雪が降り出す。尾根陰に泊まったはずなのにものすごい横風にあおられる。どうやら、発達した低気圧の接近で、逆風、つまり南東風が谷から吹き上げているようだ。山側には吹き上げられた雪が吹きだまり、テントが埋まり、谷側からはすごい風であおられ、テント内の空間がなくなってくる。やむを得ず、3時に除雪をする。
10日で期限の切れる青春18切符が1回分余っているので、出来れば今日中に楽古山荘へ近づいておきたいのだが、ちょっと難しいだろうか。
ずっと強い風の状態のまま、8時に朝食をとる。山側は既に埋まり始め、谷側は風で相変わらず落ち着かない。9時に再び除雪をする。こんな事なら少しはブロックを積むのだった。しばらくすると少し風が弱まってきたようだ。
初の悪天行動
このまま停滞かと思っていたが、ここで停滞すれば、山中あと2泊という事にもなりかねない。気を取り直して少しでも進めるために出発する。
スタートしてからしばらくは穏やかで、視界もある。しかし、野塚岳のピークが近づくにつれて少し風が吹いてくる。昨日は風のせいで寝不足で、ペースもイマイチあがらない。コルからニオベツ川をのぞき込むと、すっぱりと切れ落ちている。野塚岳からはすっかり視界が悪くなってしまう。今山行では珍しくコンパスを取り出して方向を確認しながら進む。 P1232 付近で一瞬、方角を失いそうになる。オムシャヌプリに近づくにつれてますます風が強くなってくる。稜線沿いの岩場で風をよけながら進む。オムシャヌプリでは完全に地吹雪になってしまう。体が冷えてきたので、フリースを着ようと風の弱いところを探すが、オムシャ西峰-東峰間は吹きさらしでなかなか陰になるところがない。東峰の登りでなんとか岩陰に隠れ、フリースを着る。
目標は十勝岳直前のコルだったが、P1343手前の稜線上で何となく風が穏やかなところがあり、そこに泊まってしまうことにする。もろ、稜線上だったので、出来ればブロックを積みたかったのだが、全くそんな気力は出てこず、ほとんどやけくそでそのままテントを張ってしまう。少しずつ天気は回復しているようだ。
2003年04月10日(木) 十勝岳~楽古岳~楽古山荘
- 距離
- 10.838km
- 標高差
- -937m
- 登り
- 804m
- 下り
- 1741m
- 平均速度
- 1.6km/h
時刻 | 気温 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|---|
03:30 | 起床 | |||
04:55 | 快晴 | 出発 | ||
05:25 | -05 | Co1190コル | ||
06:30 | -03 | 十勝岳 | ||
07:10 | +04 | Co1080コル | ||
08:15 | Co1220 | |||
09:20 | 楽古岳 | |||
10:00 | Co950 ワカン着用 | |||
10:45 | 尾根取付き | |||
11:45 | 楽古山荘 | C13 |
ついに南端楽古岳へ
最終日にふさわしい最高の天気。泣いても笑っても今日で最後だ(たぶん)。
雪が締まり、アイゼンが効いて快調に進む。ピッケルは使わず、ストックを利用する。風も弱く、予想以上のペースで進む。十勝岳ピークからこれまで歩いてきた稜線を望む。北・中日高の山々が遙か彼方に見える。反対側には、最後の山楽古岳と眼下には楽古山荘が見える。左を見ると、すぐ近くに太平洋が広がっている。終わりは近い。
最低コルから気温が上昇してくるが、同時に風も徐々に強くなってくる。横風に耐えながら 390m の標高差を一気に駆け上がる。お馴染みの看板が目に入り、両手を上げる。
ピークに付くと、あいにく十勝岳付近に雲がかかってきてしまう。楽古岳のピークからこれまでの道のりを写真に撮りたかったのだが・・・。感慨に浸りながら、もう少しぼんやりと過ごしていきたかったが、風の強いピークに長居は無用である。少しずつではあるが、雲も増えてきているようだ。ピーク写真を撮って下山を開始する。
下降ルートの下調べをしてこなかったので、夏道を行くか、尾根上をそのまま行くか迷うが、トレースが夏道方向へ向かっているようなので、夏道を行くことにする。標高1000m付近までは滑るようにして一気に下ってゆく。下がるにつれて、雪がどんどん緩み、ぬかるみのトラップが出てくる。ワカンに変えても膝までぬかる部分が出てあまり効果を感じられない。それでも、ワカンを脱ぐと1歩ずつズボズボと埋まり、ほとんどまともに歩くことは不可能なので、それなりの効果はあるようである。
最後の急斜面は日当たりが良く、中途半端に地面が露出している。ズルズルと滑りながら沢に出る。沢に出てからはルートの選別に苦労する。堅そうな所を選んで足を運ぶが、突然陥没したりしてうんざりする。左岸の斜面に沿って歩けるところはデブリと日陰で、何とかまともに歩くことが出来る。しかし、大部分は雪がすっかり腐って、まともに歩けるところは少ない。何度も歩いているルートだが、いつもの2倍以上の距離に感じる。最後の最後で消耗させられる。
林道に出て、今山行で一番足取りを重く感じながら、なんとか楽古山荘にたどり着く。
楽古山荘にて
本当は、青春18切符を使うために今日中に下山してしまおうと思っていたのだが、尾根取付き点からここまでの腐った雪のため、楽古山荘にたどり着いて力つきてしまう。誰か居てくれないかという淡い期待もあったが、平日ということもあってやはり誰もいない。
外の天気はいいのだが、小屋の中は意外と寒い。窓は大きいのだが日当たりが悪く、日差しが小屋の中に入ってこないのだ。ストーブを焚こうとストーブのふたを開けると、中には大量のカスがつまっていた。中身をゴミ袋に移し替えて、横にあった直径10cm長さ40cmほどのボール紙の筒(何かの軸らしい)を入れ、焚き付けを使い火をつける。しばらくしてから中をのぞくと、燃えかすが多く出ている。どうやら、先ほどのカスは安易にこの筒だけを燃やしたために、大量の燃えカスが残ってしまったためのようだ。この筒は簡単に燃やすことが出来るが、火力も弱く、あまり暖まらない。
何もする気が起こらないところをなんとか気力を振り絞り、何本か薪をのこで切り、ストーブにくめる。広い山荘に小さなストーブがひとつのため、なかなか暖まらない。大きな薪をそのまま投入したいが、ストーブが小さなため、ストーブに入る薪を選別するのが大変だ。せめて斧でもあればいいのだが、ここにはのこぎりしか置いていない。
火力が安定してから、すべての荷物を小屋中に広げて干す。ストーブの横で山荘ノートを見ていると、ギョウジャニンニクの文字があるので、一瞬探しに行こうかと思うが、あまりにも疲れ果ててその気力さえ出てこない。
2003年04月11日(金) 楽古山荘~浦河駅
時刻 | 天候 | 場所 | 行動 |
---|---|---|---|
02:40 | 起床 | ||
05:15 | 快 | 出発 | |
07:35 | 国道235号線(天馬街道) | ||
07:50 | ヒッチハイク | 下山 |
掃除
暗いうちに起きて飯を食う。夜明けまでの間、1階の掃き掃除と、ストーブの横の焚き付け置き場を整理する。焚き付け置き場は半ばゴミ置き場と化していた。燃えるゴミはストーブで処理し、燃えないゴミはゴミ袋にまとめる。からになった壊れた段ボールは裁断して、焚き付けとする。
山荘から天馬街道
重い足を動かしてなんとか里を目指す。楽古山荘から先、林道上にはもう全く雪はない。週末なら登山客の車を期待するところだが、今日は平日なのであきらめてのんびりと歩いていく。ルリビタキやコルリがさえずっている。すっかり春の様相だ。2時間強で国道に出た。この辺はバスは走っていないようだ。少し国道を歩いてから、ヒッチハイクをすることにする。
ヒッチハイク
走ってきた白いセダンに右手を挙げる。おばさんドライバーか。通り過ぎたのであきらめて次の車が来るまで歩こうと前を向くと、その車がスウッと止まる。やった。ラッキーにも一発目でヒッチハイク成功。
親切なおばさんは浦河の駅まで送ってくれた。駅に着くと、急に両足のふくらはぎが痛くなり、つってしまう。両足とも限界に来ていた。それにしても腹が減った。帰ったらしこたま喰おう。